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製作依頼

 さて、なぜ俺がこの世界に来たのか、覚えているだろうか。俺は忘れてた。


 そう、勇者召喚である。


 では、勇者と対になる存在と言えば?


 それはもちろん魔王だろう。


 おそらく勇者召喚は魔王に対抗するために行われたものだ。


 つまり、魔王とは勇者を呼ばないとどうしようもないほどの脅威ということで。


 つまり。


「いや話を―――」

「結構ですっ」


 めちゃくちゃ面倒くさい相手だってことだよっ!

 しかも一般には公表されてないとか言ってたしっ!


 ダッシュ!


 一刻も早くこの話題から逃げねばっ!(物理的に)

 魔王なんて知らんっ!

 さらばだゴリラっ!貴様の話など聞かんわっ!


「あれ、ユウカちゃんどうし―――」


 リンベルを回収っ!


「―――たのぉぉぉぉおおお!?」

「おい!なんで逃げ―――」


 ふははは、さらばだギルドよっ!



「ちょっ、速―――」






 ◆







 side:ガルトン(ギルマス)







 蒼銀の髪がなびかせ、走り去っていく少女。


 追いつけないんだが。


「嬢ちゃん、速すぎだろ……」


 俺、これでも元Sランクなんだがな……。


「ついこの間、新人講習受けてたよな?」


 成長速度が尋常じゃない。アレはすぐにSランクまで行くな。


「天才か、どこにでもいるもんだな」


 改めて彼女が持ってきた死体を見る。


 残存魔力からしてSランク上位クラス。その魔物をここまでぐちゃぐちゃにするとは……。“私の能力”と言っていたが、どういう能力だ……?特異(ユニーク)スキルなのは確実だろう。


 そしてあの老化、というよりは成長か、あれは急激なレベルアップの作用だろう。前に一度聞いたことがある。つまり大きくレベルアップするほど魔物を倒しているということ……。


「Aランク、って言ってたか」


 なんでもないことのようにAランクを倒したと言った。もう実力的にはAランク上位を軽く超えてるな。


「またランク昇格の申請をしないといけないか」


 思わず苦笑する。登録して1週間と経たないうちにC……いや、Bランクまで上がり詰める者がいるとは。


「上に掛け合わないとな」


 早くランクを上げてあげよう。それも彼女のためになるはずだ。


 だがそれも魔物氾濫を収束させてからだ。


「忙しくなるぞ」


 迷宮の管理もこれから仕事に組み込まれるだろう。冒険者共には働いともらわないとな。




「そういえば、嬢ちゃんは何で逃げたんだ?」


 魔王の話をしようとしたら逃げたよな?

 なぜだ?


 そもそも魔王はまだ民衆には知られていない。各国の上層部とAランク以上の冒険者にしか伝えられていないはずでは……。


 だがあの反応はおそらく魔王のことを知っている……。


「そうなると、記憶喪失、ってのも怪しいな」


 何者だ?


 まあ、深くは探らないが。

 冒険者やってる奴なんて、多くが訳ありだ。いちいち気にしていられない。問題さえ起こさなければいいさ。



「さーて、久しぶりに魔物倒しに行くかー」



 敵にはなってくれるなよ、嬢ちゃん。







 ◇







「おらあく刀作れやごら」

「急にガラ悪いっ!?」


 刀くれ。




 ギルドから逃走した現在。

 リンベルに詰め寄ってます。


「何でもするって言ってましたよね?」

「う、うん、言った」


 壁どぉん!


「きゃっ!」

「刀はタダで作るって言ってましたよね?」

「い、言ったね」


 股どぉん!


「ひゃっ!」

「作って、くれますね?」

「う、うん作ってあげるからっ…ちょっと近いっ…」

「ふふっ」


 言質は取った。やったぜ。マイ刀ゲットだ。


「……ぅぅ」


 しかし、改めて見ると綺麗な顔だなー。

 しかも今はその顔を真っ赤に染めて恥ずかしがってる。俺の完璧な顔が目の前にあるからかね?


 ……そそるね。


「照れてるんですか……?」


 なんか楽しいから壁ドン続行。


「ユ、ユウカちゃ」

「顔赤くして……可愛いですね……」

「ふぇ、あ、あの」


 耳元に顔を近づける。男時代にやったら警察呼ばれてるよね。


「ねえ、リンベル……?」

「ひゃ、ひゃい!」

「……ふ、可愛らしい……」

「あ、うぅ」


 何これホントに可愛い。

 このまま食べてやろうか?


「あうう」


 ……いやいや。そんな男子中学生みたいな。


「……冗談です。いいから早く刀作ってもらいますよ」

「……えっ?」

「何でそんなに照れてるんですか。私が何かするとでも?」

「……も〜っ!ユウカちゃん雰囲気がエロかったから本気にしちゃったじゃん!」

「エロいって何ですか、全く」


 失礼だね。


「早く鍛冶ギルド行きますよ。このためにまだ鍛冶ギルドが迷宮を秘匿していたとは報告してないんですから」

「え……悪だねユウカちゃん……」

「私の刀の方が大事ですので」


 鍛冶ギルドが潰れたら困るからね。




 リンベルはこの街の鍛冶ギルドを拠点に活動しているらしい。

 鍛冶ギルドでは鍛冶工房(炉とか?)が貸し出されていたり、金属も売買する事ができるそう。便利だね。まあこれから潰れるんだけどねっ!



「ユウカちゃんはどんな刀がいいの?」

「長いので」

「ざっくりしてるね……」


 今回の戦いで分かったんだ。


「リーチって大事だと思いませんか」

「あ、うん……うん?」

「今回、私は素手で殺ったわけですが、圧倒的にリーチが足りませんでした」


 おかげで魔法と銃と毒しか主な攻撃手段として使えなかった。一回しか殴れてないし。


「そこで出来るだけ長い刀を作って、出来るだけリーチを伸ばしたいなと」

「う〜ん、長いのかあ……」


 幸い腕力なら有り余ってる。重さは全く考慮しなくていいからね?


「二刀流もアリですけど……刀×銃も捨てがたい……」

「ユウカちゃん……2本も作らせる気だったの……?」

「え?だって何でもするんですよね?」

「そうだけど……そうだけど……っ!」


 うーん。


「……まあ、リンベルにも悪いですし、1本で大丈夫ですよ」

「そう……?」


 銃も使いたいしね。


 そんな会話をしている間に鍛冶ギルドに到着。

 うーん、冒険者ギルドよりは小さいけど、思ったよりデカイな。工房が広いのかね。


「まずはユウカちゃんに合う刀探すから、中にある刀で試してみてっ。いっぱいあるから!」

「分かりました」


 楽しみだね。


 ギルドへ入―――


「あっ、リンベル様、お疲れ様ですっ!!」

「「「「「「お疲れ様ですっ!!」」」」」」

「お〜う、出迎えごくろ〜」


 ……なんじゃこりゃ。


「……リンベル?」

「ふふ〜ん、言ったでしょユウカちゃん!私、すごい鍛冶師なんだよっ!」


 胸を張ってリンベルが言う。


 胸を張るとぶるんぶるん揺れてる。

 ぶるんぶるん。


「……確かに、すごいですね……(胸を見ながら)」

「でっしょ〜っ!」


 ごめん、ちょっと食い違ってる気がする。


「あ、もう下がっていいよ〜」

「「「「「「「うっす!!」」」」」」」


 おっふ……暑苦しい……体育会系の匂いだ……。


「じゃあ奥行くよっ、ユウカちゃんっ」

「ああ、はい……」







「ほい」

「はい」


 手渡されたのは刀。



 ヒュンヒュン



「うーん……」


 普通?


「もっと長めのないですか?」

「長めだと……ほい」

「はい」



 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン



「うーん」


 物足りない?


「もっと」

「もっとだと……これかな、ほい」

「はい」



 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン



「いや剣筋見えないからっ!速すぎるよユウカちゃんっ!」

「えぇ……」


 動体視力貧弱ゥ!


「ていうかユウカちゃんすごいね……私こんなに剣上手い人久しぶりに見たかも……」

「あはは……才能ですかね」


 謙遜はしない、事実だし。


「で?その刀はどう?」

「うーん……もう少し、ですかね?」

「え、これ以上?1m超えるよ?そこまでいくと刀っていうか……細い大剣だよ?」

「いいじゃないですか、強そうな武器作っていきましょう」

「まあ、楽しそうだけどさ……」


 この世界ではメートル法が使われてる。転生者とか勇者が伝えでもしたのかね?


「超長い刀、カッコいいじゃないですか」

「ユウカちゃんカッコいいの好きだよね……」


 そりゃオトコノコですから。


「じゃあもう思い切って私の身長くらいにの長さにする?」

「お、いいですね。思い切っちゃいましょう」


 ちなみにリンベルは140後半くらいかな?よく分からん。まあまあちっさい。ちなみに俺は150後半くらい、だと思う。


「なら130cmくらいにしよっか」

「いいですね」


 ゲームかマンガでしか見ないような長さだよ。浪漫だね。


「じゃあ私設計する道具取ってくるねっ!後でユウカちゃんの身体測定するから帰んないでよ!」

「はいはい、分かってますよ」



 リンベルはルンルンで去っていく。ルンベルだ。



 その後ろ姿は、何だか面白くて。




「ふふっ」




 ああ、楽しみだなあ。








 ■






 解説置き場



 ○主人公の成長(老化)について

 この成長(老化)はガルトンの予想通り、レベルアップの影響である。

 レベルアップをすると魔力保有量が増大し、魔力が細胞に浸透、細胞が活性化することで、身体を最盛期に保つ効果がある。

 人族の場合20歳付近が最盛期となるので、年齢がそれより下の場合は老化が早まり、身体年齢が20近くなると、そこで老化がしばらく止まる。また上の場合は若返り、もしくは老化が遅くなる。つまり寿命が伸びるため、この世界では150歳のジジイがピンピンしていることが多々ある。ただし、主人公ほどの年齢の子供が大幅なレベルアップをすることは稀であるため、若者の老化促進効果はあまり知られていない。

 主人公の場合、元々魔力を身体に浸透させていたことと、急激なレベルアップの影響で、突然2歳ほど老化する結果となった。

 余談だが、この効果を利用する業界も存在し、老人をパワーレベリングすることで老化を遅らせる『健康と長寿の魔物狩りの旅』というツアーが、巷で人気を博している、らしい。

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[良い点] おおおぉ!百合百合イチャイチャは本当最高に素晴らしいです〜
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