帰路
「……ん」
目が覚める。
……ホントに寝てたのか。すげえな俺。
「あ゛あ゛、あ゛あ゛あ゛」
声は死んでる気がする、聞こえないから分からん。まあ、息が出来るだけ全然いいけど。
あれ、そういえばリンベルは?
かろうじて動く首を回して探せば。
「ズピーッ……ズピーッ……」
爆睡してる彼奴を発見。なんでお前が寝とんねん。
ぶん殴、殴ろうとしても動けないな、そもそも腕がない。先に回復しないと。
寝てる間に回復してた魔力を使って、毒薬を生み出す。
「《毒薬作成》『永劫なる悼み』『liquid、gas』」
まず顔、飲んで内臓を癒して吸って呼吸器を癒す。からの手足胴体、全身にぶっかける。
「ぐぎっ……」
え、なに、この痛みって加算されんの?しかも一生このまま?キッツ、なにそれ。
「ふう……」
呼吸が楽になる。無事に手足も生え揃った。毒効果すごすぎだろ。やっぱり急に手足が生えるとか気持ち悪いな。
「動けるな」
飛び跳ねたりしてみる。動ける、というか、動けすぎ?
「レベルでも上がったか?」
後で確認しよう。
「顔は……もとに戻ってるかな」
ぐちゃぐちゃの状態がデフォルト登録されてたら自殺モノなんだけど。
ペタペタ触ってみる。うーん、平気かな?肌はピチピチになってるし。うん、大丈夫だろ。
……さて。
「ぷげっっっ!?!?」
「起きてください、何で貴方が寝てるんですか」
足でぐりぐり。おら早く起きろ。
「う〜ん…?ユウカちゃん……?」
「おはようございます、リンベル」
「……んむ、おはようユウカちゃ……えっ!?ユウカちゃんっ!?」
なんじゃい。なんかワシに文句あるんか?
「えっ、あっ、えっ?」
「なんですか」
「いや、だって、あれ?」
落ちつかんかい。
「だ、だってユウカちゃん、さっきまでぐちゃぐちゃのボロボロで誰だかもよく分かんないような超ブサイク顔だったのに、しかも腕とか足とか無くて死にそうだったのに、なんで、なんでそんな」
「ぶん殴りますよ」
ブサイクって何じゃ。
「だって、ユウカちゃんが死んじゃうんじゃないかって、心配で、心配でぇぇええ」
その割に寝てたね?君。
「ひっぐ、うぇぇえ、良かったよぉぉおお」
「ああもう、大丈夫ですから」
涙もろいなあ、もう。
「大丈夫、大丈夫ですよ」
「ううぅぅうう」
子供かよ。お前アラサーだよな?
「そもそもなんで戻ってきてるんですか。逃げてって言いましたよね?」
「そんなのやだよぅ」
いや、やだって言ってもな……。
「うぅ、ぐすぐす、すんすん」
「ちょ、胸に顔こすりつけないで……」
今俺全裸なんだからさあ、くすぐったいんだけど。あ、服は腐りました、物理的に。
「ぐす……あれ、ユウカちゃん、胸、大きくなった?」
「は?」
急にセクハラかい?まあリンベルならいいけど。
「……ん?よく見たら、全体的に大人っぽくなってない?」
「え?」
なんだって?
「なんか……老けた?」
「ぶん殴りますよ」
失礼な。
「あ、マジだ」
鏡を作りました、土魔法で。……土魔法かな?なんか効果とかめちゃくちゃ上昇してたから、もしかしたら進化してるかも。
「うへえ……」
で、その鏡を見て。一言。
「さらに美少女になってる……」
前よりも長く、それでいて細いままの手足に。
少し女性らしい丸みが増した身体。特に胸がまあまあ育ってしまった。Cくらい?基準を知らん。
まさに女性の身体の理想形を体現するような、バランスが良く、とても美しい肉体だ。てか顔ちっさ。あかんわこれ。
さらに、だ。
極めつけは、15歳くらいになって、幼さが抜けてなんかもう、『大人な女性』な感じになってしまった顔。
しかしその造形は全く崩れず、むしろより洗練されてしまった。
結論。
なんかもう、ヤバい。(語彙力)
「……仮面とか着けたいな」
これを晒して歩きたくない。くそう、美少女に作りすぎた。まさかこんな弊害があるなんてっ。
「どうしたの?ユウカちゃん」
「いえ、ちょっと憂鬱になっただけです……」
認識阻害の魔法とかないかな。
「あ」
ていうか。
「服、どうしましょう」
全裸で街に帰還とか、嫌なんだけど。
「あっ、それなら私の服貸してあげるよっ!」
「え」
リンベル全裸になるってマジ?それはちょっとな。
「はいどうぞっ!」
「え」
どっから取り出した、その服。
「リンベル?これは?」
「ふっふふ〜ん、アイテムボックスに入ってたんだ〜っ!」
「へえ、ありがとうございます」
わお、マジであのポーチアイテムボックスだったのか。
てかそんなのあったのか。欲しいな。
「……あ、そういえばもしかして、ピッケルとか採掘した鉱物って」
「ふふふ、全部アイテムボックスの中なのだっ!」
すご。どんだけ入るの、容量デカイな。
「それくれませんか」
「いやダメだよ!?」
チッ。
「それよりこれっ、着てみてよっ!」
「ああ、はい」
ありがてえ。
おい。
「スカートじゃないですか」
「え、ダメ?」
「足がスースーします」
「いやそういうもんだよ……?」
違うんだよ……男の精神が拒絶反応を起こすんだよ……。
「別のないですか」
「ないね」
「……そうですか」
……むむむ。
「まあ、全裸よりはマシ、か……」
やだなあ……。
おい。
「短くないですか」
「あ〜……ユウカちゃん背が伸びちゃったからな〜……」
実は、謎の身体の成長に伴って身長も伸びた。顔の大きさは変わんなかったけど。
そして前まではそれほどリンベルと背が変わらなかったのに、今では若干見下ろす感じに。
その結果、スカートがミニとも言える感じの長さになってしまったみたい。
「これはないでしょ」
「でも他にないよ?」
ぐぬぬぬ。
「……仕方ないですか」
無念。
「痴女くさい」
「そう?かわいいと思うけど」
出来上がったのはギャル風超絶美少女。
くっ、無駄におしゃれな服渡しやがって……。ただ胸と服の間に隙間があるのが若干ムカつく。どんだけデケえんだよてめえ。
「これで外出るんですか……?」
勇気あるなあ。
「も〜っ、他にないからねっ!」
「むう……」
でもこれは……。
「ほらっ、早く外行くよっ!まだどこが出口か分かってないんだからっ!早くしないとっ!」
「あ、それなら大丈夫です。道順思い出しましたので」
「えっ?なんで?どういうこと?」
「私にも分からないです」
戦闘後、今までのあったことの記憶が全部頭に戻ってきた。完全記憶ってやつ?たぶんこれもスキルのせい。
「そんなわけなので、慌てず急がず行きましょう」
「う、うん」
じゃあ、帰るか。
「この服で、か……」
「文句言わないのっ!」
街に帰ったらマシな服買おう。
「あ、リンベル、あそこの死体ってアイテムボックスに入りますか?」
「えっ……」
「冒険者ギルドに証拠として持って帰りたいんです。私はまだ魔力が切れてて自分じゃ持ち運べなくて」
「いや、入るだろうけど……」
「よし、なら入れましょう」
「……あのぐちゃぐちゃのやつ?」
「あれです」
「うええ……」
「入れましょう」
「いやでもこの中食材とか服とか入っててあんまり―――」
「入れます」
「えっ、ちょっ待っ―――」
「あああぁぁぁ!!!」
「私、汚されちゃった……」
「ただの腐った死体です、気にしないでください」
「いや気にするでしょっ!?」
「チッ、細かい人ですね」
「いや細かくはないよねっ!?」
「よし、もう行きましょう」
「えっスルー!?」
「わあっ!外だぁっ!」
「やっと出れましたか……」
空は暗い。
一日中洞窟迷宮の中にいたのか。
「ふう……少し疲れましたね」
「も〜へとへとだよ〜」
俺なんか一回死にかけてるからね。
「じゃあ、さっさと帰りましょうか」
「はいよ〜っ!」
外に出れたなら元気も出るってもんだ。
「長い一日でしたね」
今日が、終わる。
「あっ!日の出だ!」
あ、始まってたわ。
■
名称:ユウカ=ロックエデン
種族:神族
職業:Dランク冒険者
称号:異界を彷徨う者、女神の仔、虐殺者
Lv:148(84up)
体力:3300(1880up)
魔力:3430(1910up)
スキル:
《毒薬作成Lv2》(up)――『賛美の狂歌』『永劫なる悼み』(new)『夢幻の蝕手』(new)
《痛覚遮断LvMax》
《異形精神LvMax》(up&《並列思考》から特異進化)
《殺戮機械Lv1》
《見切りLv8》(up)
《体力回復Lv1》(new)
《魔力回復Lv1》(new)
《魅了耐性Lv1》
《腐食耐性Lv6》(new&up)
《魔法耐性Lv1》(new)
《物理耐性Lv1》(new)
《整理Lv1》
《獄炎魔法Lv1》《滅碧魔法Lv1》《絶空魔法Lv1》《壊地魔法Lv1》(up&《火魔法》《水魔法》《風魔法》《土魔法》から特異進化)
《魔力精密操作Lv2》(up&《魔力操作》から進化&up)
《多重詠唱Lv1》(new)
《無詠唱Lv1》(new)
《刀術Lv9》(up)
《体術Lv9》(up)
《銃術Lv8》(new&up)
《飛剣術Lv1 》
《魔闘術Lv7》(up)
《魔纏Lv1》
《魔刃Lv6》(up)
《魔拳Lv3》(new&up)
《魔脚Lv2》(new&up)
《魔遊剣Lv1》(new)
《集中Lv9》(up)
《軽業Lv8》(up)
《立体機動Lv7》(up)
《跳躍Lv6》(up)
《飛行Lv1》(new)
《縮地Lv2》(new&up)




