調査
一章が長くなったため分割しました
ここで一応の一章の終わりです
ふにゃりと。
「……ぅぁ?」
目を覚まして。
「……知らない天井だ」
なにがあったっけ。
……ああ、カレンさん達に助けてもらったんだっけ。また恩が増えちゃったよ。
「はあ……」
衝動的にぶっ殺したけど……ゴブリン程度にここまでやられるとは……不覚。
「……あれ、怪我は?」
身体に痛みはない。
千切れかけてた左腕もくっついてる。
なんじゃこりゃ。
身体は微妙に動かしにくいけど、致命的な程ではない。
……結構重傷だったと思うんだけど。
「ん?」
そういえばここどこ?
コンコン
む?
「あ、ユウカちゃん!」
「あれ、カレンさん?」
部屋の扉が開いて、入ってきたのはカレンさん。
「良かった、目が覚めたのね」
「ええっと……はい、あと、助けてありがとうございました」
状況がよく分かってないけど。
「いいのよ、たまたま通りかかっただけだから。でも助けられて良かったわ」
「本当にありがとうございます」
あのままだとまあまあ危なかった。
異世界来てゴブリンと戦って死ぬとかやだよ俺。
「まる一日も目を覚まさなくて心配だったのよ」
「えっ……」
そんなになってたの?
「腕、大丈夫?変だったりしない?」
「うーんっと……」
左腕を動かしてみる。
あ、キモい。なんか神経が通ってないって感じ。めっちゃぎこちない。
「少し違和感がありますね……」
「そう、よね……まあ、しばらくしたら治るそうだから、それまでは安静にしてなさい」
「分かりました」
たぶん。
「そのうちギルドの方から説明しろって言われるだろうから、今回の件、まとめておいてね」
「え、あ……はい」
「じゃあね、ユウカちゃん。私はギルドの方に行ってくるから、またすぐ来るからね」
「はい、ありがとうございました」
そう言って、急いで部屋から出ていくカレンさん。
忙しいのかね。
「……あ」
ここがどこだか聞いてない。
◇
診療所でした。
「はい、もう大丈夫ですよ」
「はい」
女医(美人)の診察なう。
傷の回復は回復魔法のおかげなようだ。魔法すげえ。
「ユウカさん、あと3日くらいは安静にしていてください。その間はここに留まって治療します。痛みは無いでしょうが、まだ傷の負担が身体に残っていますので。左腕については、使っていれば数日で感覚は戻るでしょう、そこまで心配はいりません」
「はい、分かりました」
暇になるなあ。
「それでは、失礼しますね」
「ありがとうございました」
何しようかなあ。
「あ、ステータス確認してない」
ちょっと見てみよう。
あれだけ殺したんだから、少しは上がってるだろ。
ステータスオープン。
名称:ユウカ=ロックエデン
種族:神族
称号:異界を彷徨う者、女∬の仔、虐殺者(new)
Lv:64(17up)
体力:1440(175up)
魔力:1550(185up)
スキル:
《毒≯作成Lv1》
《見切りLv1》(《見分け》から進化&new)
《痛覚遮断LvMax》(《激痛耐性》から進化&new)
《並列思考Lv8》(up)
《整理Lv1》
《火魔法Lv6》《水魔法Lv6》《風魔法Lv6》《土魔法Lv6》(up)
《魔力操作Lv6》(up)
《刀術Lv8》(up)
《体術Lv5》(new&up)
《魅了耐性Lv1》
《飛剣術Lv1 》(new)
《魔闘術Lv1》(new)
《魔纏Lv1》(new)
《魔刃Lv1》(new)
《集中Lv2》(new&up)
《軽業Lv2》(new&up)
《立体機動Lv2》(new&up)
《殺戮機械Lv1》(new)
……上がりすぎじゃね。
てか何かよくわからんのがある……。虐殺者ってなんぞ……。
さて、ここで前提の確認だ。
この世界において、スキルのレベルはその熟練度を表す。それぞれのレベルがどの程度かと言うと。
Lv1・Lv2:ある程度できるやつ。下級冒険者レベル。
Lv3・Lv4・Lv5:なかなかできるやつ。下級・中級冒険者レベル。
Lv6・Lv7・Lv8:かなりできるやつ。中級・上級冒険者レベル。
Lv9・Lv10:めっちゃできるやつ。上級・超上級冒険者レベル。
進化後スキル:頭おかしいやつ。超上級冒険者・人外レベル。
という感じである。
……あれー、おかしいなー、俺もう上級冒険者レベルになってるぞー?刀術とかもうLv8だぞー?
いや、上がりすぎじゃね?なんか理由でもあんのか?神族だから?……分からんな、全然分からん。考えても意味ないな。上がってるなら良しとしよう。
それに変なスキルも増えた……。
飛剣術に魔闘術に魔纏に魔刃ってなんだよ。強そうだけど、強そうだけども。
飛剣術は分かる。たぶん、斬撃を飛ばすやつだろ?うん、やったね、ゴブリンの時。
魔刃は……刀を延長したやつか?足からも生やしてゴブリン蹴り斬ったけど、あれもこれか?
魔闘術に魔纏は本格的に分からん。字面的に……魔力を纏うのか?やってみるか。
魔力操作で魔力を右腕に纏わせてみる。
「ん?お?おお?」
なんか、右腕が、敏感?触覚が鋭い。空気の流れも分かるほどに。
隣に置いてあった椅子の背もたれを掴んでみる。
メキョ
「あっ」
潰れちゃった。やべ。
握力上がりすぎだろ……。
うん、まあ、これは有用ってことで。
あとは……。
「《殺戮機械》って……」
すきっ!響きがすてきっ!
………こほん。
うん、たぶんこれは称号にある虐殺者に付随するスキルなんだろう。効果は分からん、物騒なのは分かるけど。そのうち分かるだろ。
まあ、こんなもんか。
意外と成長……したよね?
「これなら、これからもやっていけそうかな……」
とりあえず、生き残れて良かったよ。
◆
side:調査隊隊長
なんだ、これは。
「おぇえっ…」
「これは……」
森の中。
そこには、数えるのも馬鹿らしくなる程のゴブリンの死体。
その殺され方は様々だ。
袈裟に切られた死体。
地面から生えた槍に貫かれた死体。
全身が傷だらけの死体。
足を切断され、頭を踏み抜かれた死体。
これらはまだ分かる。
だが。
上下左右に4等分された死体や。
完全に灰になった死体であっただろうもの。
木っ端微塵に血と骨と肉が散乱し、元がなにか分からないもの。
そして。
手足を斬られ、内臓が引き摺り出され、耳と鼻が削がれ、眼球をくり抜かれ、見るも無残な、この大きなゴブリンの死体は。
なんだ、これは。
「アレン様、本当にこれは、あの少女が、やったのですか?」
同行するAランク冒険者パーティーの竜の咆哮に問う。
「ああ、恐らくは。……俺も信じられないが」
そのリーダーでさえ目を疑う光景。
これをあの年若い少女が為したとしたら、異常だ。
「……とりあえず、確認作業に入ります」
「ああ、頼んだ」
いったい、なにが――――
◆
隊員に指示して、作業に取り掛かる。
私の担当は、誰も担当したがらなかった、あの解体されたゴブリンだ。
「……これは」
改めて見るとひどい。
だが、これは……。
「ゴブリンクイーン、か?」
男性器が見当たらないことから雌、さらにこの大きさなら、クイーンクラスか。
「……魔石が大きい」
通常のクイーンと比べても、かなりの大きさである。
……異常種か?
異常種とは、突然変異で新たな能力を獲得した個体のことである。この場合、体内に存在する魔石は通常種より大きくなる。
ゴブリンクイーンのランクはBランク下位。
その異常種となると……。
「Bランク上位から、Aランク下位か……」
これを、ついこの間新人講習を受けたという少女が?
「鬼才、か……」
それだけで片付けていい問題でもなさそうだが。
「よし、回収終わったな。帰還するぞ」
隊員に声をかける。
早く街に帰って、ギルドへ報告しなければ。
「………」
歩きながら考える。
この魔物は異常種。
さらに千を超える下位種を従えた。
偶然か?
この森はギルドの管理下だ。
初心者向けの狩場として、時々上位冒険者が巡回している。
その警戒をかいくぐって、この量が?
そんなことがありえるか?
これはもっと、人為的な――――
「……いや」
これは、俺が考えることじゃない。
早く、ギルドへ報告することを優先しよう。
「………」
そして、あの少女。
何があったのかは知らないが、クイーンの痛めつけられ方を見れば、彼女が闇を抱えているのは分かる。
あれだけ若いというのに……。嫌な世の中だ。
であれば。
これからは、彼女に不幸が起こらないことを願おう。
全く縁のない身ではあるが……。
願わくは、未来の彼女に幸せがあらんことを。
◆
「クソッ」
森の陰に、男が一人。
「これでは、計画が……私は……」
顔色は悪く。
ブツブツと。
「これでは……」
「調べなければ」
「何か、異分子がいる」
男は、闇に消えた。
――第一章 完――
ちょこっと解説置き場
ここでは本編ではしばらく触れない、もしくは触れる予定はないことをちょこっと解説する。主にスキルの解説。
○神族
種族:神の親族
備考:主人公は特に気にしていないが、この種族も一つのチートである。種族制限が無く、存在する全スキルが獲得可能で、さらに成長速度加速が種族特性である。つまり通常人族が獲得できない《水中呼吸》が獲得できたり、人族よりも1.3倍はレベルアップは早かったりする。まだまだ隠された能力があるかも……?
○見切り
モノを見切ることが出来るようになる
Lvが上がるほど、効果が上昇する
備考:このスキルはかなり特殊である。通常、《見分け》から進化するのは《見利き》で、その後に《鑑定》へ進化するが、主人公はゴブリン戦の時、敵の攻撃を見分けるという変わった使い方をしていたため、特殊進化、《見切り》へと変化した。このスキルの進化先は不明である。
○痛覚遮断
痛覚を遮断することが出来る
遮断率はスキル保有者が調整できる
備考:通常、人型生物は獲得できないスキルだが、そこは神族チート、主人公は獲得した。痛みは生物とは切っても切れないものだが、それを切り捨てた主人公はもはや人を辞めている。
○並列思考
思考が分裂する
Lvが上がるほど、分裂数が増える
備考:通常、このスキルは精神疾患を患う人などが獲得するものである。主人公のように、精神状態が健康でこのスキルを獲得することはとても稀である。
○殺戮機械
獲得条件:敵対勢力1500体以上を、一人で、休みなく殺し続け、全滅させること
備考:効果は後ほど……
ここまで読んで下さりありがとうございました
第二章もお楽しみください




