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72話

 コスプレ喫茶は開店直後から長蛇の列ができた。事前に七海がうちのクラスには超かわいい女学生とイケメン書生がいます、とSNSで告知していたことが効を奏したようだ。

 おかげ様で、俺は午前中、大量のフルーツポンチを作るはめになっていた。


「桂君、そろそろ交代の時間よ~」

 調理用スペースに七海がやってくる。

 わかった、と返事をすると、俺は交代でやってきた男子生徒に引継ぎをした。

 引継ぎを終えると、エプロンを脱ぎ、教室の外に出ようとする。

 すると七海から、「待って」と声をかけられた。

「ん、どうかした?」

「今から綾女も交代なのよね。どうせなら、ライブまで彼女と学園を回ってきてくれない?」

「えっ、なんで……」

「ほら、桂君と綾女って仲がいいし、綾女、一人だと寂しいだろうから」


 さて、どうしようか……


 ま、せっかくだし一緒に回ろうかな。

「うん、わかった。志藤さんと回ってくるよ」

 俺は七海の提案に頷いた。

 七海が志藤さんに「交代の時間だよ」と伝えると、彼女はふうっと息をつきながらこちらにやってきた。

「じゃ、綾女、桂君とゆっくりと楽しんできて」

「えっ、ちょっ、どういうこと?」

 突然のことに志藤さんは戸惑っている様子だ。どうやら七海は、彼女に俺と星華祭を回ることを伝えていないらしい。

「どうもこうもないわ。綾女は桂君と星華祭を回ってくればいいの~」

「えっ、だから意味がわかんな……」

「いいから、いいから。ほら、いつまでもここにいると仕事の邪魔になるから、早く行って、行って~」

 狼狽する志藤さんの背中を七海が押し、彼女を教室の外に追いやる。

 そして、彼女を教室の外に追いやると七海は、


「じゃ、ごゆっくり~」


 そう言って、教室のドアを閉めた。

 俺は、隣で教室のドアを恨めしそうに睨む志藤さんに目を向ける。

「えーっと、あれだったら別々に回る?」

 無理に一緒に回る必要はない、そう思っての提案だった。

 しかし、志藤さんは首を横に振る。

「いえ、いいわ。こうなったら一緒に回りましょう?」

「志藤さんがいいなら……。それじゃあ、行こうか」

「ええ」

 そうして俺たちは各クラスの出し物を巡るべく、歩き出す。


「そういえば志藤さん、交代したのにまだコスプレをしてるんだね」

 そう、志藤さんは今制服ではなく、朝と同じく大正時代の女学生の恰好をしていた。そのため、歩いている時も多くの視線が彼女に注がれている。

「ええ、今日は一日、この格好で喫茶店のことを宣伝してほしいそうよ」

 なるほど、志藤さんがコスプレして文化祭を回っていれば、否が応でも大衆の関心を集める。とてもいい広告塔になるだろう。

「それよりもどこから回る?」

 志藤さんは、俺に文化祭用パンフレットを見せながら尋ねてきた。

 そのとき、俺のおなかがきゅるる~と鳴る。

「ふふ、桂くんのおなかは飲食店がいいって訴えているようね」

「あはは、ごめん。そうしてもらえると嬉しい」

「それじゃ、飲食店が集まっているのは体育館前だから、そこまで行きましょうか」

「うん、ありがとう」

 そうして、俺たちは飲食店の出し物が集まる体育館前までやってきた。


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