49話
放課後、志藤さんは母さんとの魔導の練習を終えると、俺の部屋でテスト勉強をしていた。
プルルル、プルルル……
互いに黙々とペンを動かしていく中、部屋にスマホの呼び出し音が鳴り響く。
「……ん?」
俺は自分のスマホを取って確認したが、この音は自分のものではなかった。
「わたしね」
志藤さんは、ごめん、と言って、通話をするべく部屋の外に出ていった。
俺は、また机に向き直り、再度勉強を開始する。
すると、
「えっ、断水⁈」
部屋の外から志藤さんの驚く声が聞こえてきた。
「うん……、うん……、わかった。ちょっと聞いてみる」
しばらくして志藤さんは通話を切り、部屋に戻ってくる。
「なにかあった?」
「えーっと、なんか今夜工事の関係で家が断水になるみたいだから、もし桂くんの家がいいならば泊めてもらいなさいって」
「……へっ?」
俺はなんとも間の抜けた返事をすることになった。
その後、志藤さんが事情を母さんに説明すると、母さんは志藤さんが今夜うちに泊まることを簡単に了承した(嬉々として了承していた)。
結果、志藤さんが急遽、うちに泊まることが決定した。
少しして、志藤さんのお母さんが制服やパジャマなどのお泊りセットを持ってくると、志藤さんはそれらの荷物を客間の方へ持って行く。
志藤さんは客間で寝泊まりすることになったからだ。
志藤さんを交えて晩御飯を食べた後、俺たちは部屋でテスト勉強をしていた。
「んん……」
志藤さんが座ったまま伸びをする。時計を見ると午後九時を指していた。そろそろ集中力が切れる頃合いだ。
「志藤さん、一回休憩しようか。ちょっと、飲み物を持ってくる」
俺はノートを閉じて立ち上がった。
「そうね。ありがとう」
志藤さんもノートを閉じる。俺は、ココアを注ぎに一回に降りて行った。




