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46話★

「そ、それじゃ、俺の部屋に向かおうか」

 俺はみんなにそう促す。


 部屋に入り、各自席に着くと、まず何の科目からやるかという話になった。

「うーん、一日目の科目ってなんだったかしら?」

「えーっと、数学と日本史、それと古典だね」

 牧原さんは、テストの日程表を見ながら言った。

 すると、七海がうなだれた。

「うわー、一日目から数学かぁ~。それは気が重くなるわ~」

「そんじゃ、数学からまずは片づけるか」

「そうだね」

 そうして俺たちは、数学の教科書や参考書、ノートを取り出す。


 俺は数学が特別苦手というわけでもない。そのため、参考書の最初の方で出てくる基本的な問題はサクサクと解いていけた。しかし、後半の方になると、難しい応用問題が現れ、シャーペンを持つ手が止まる。

「ん、どうかしたの?」

 俺が苦戦していることに気が付いた志藤さんが、小さく声をかけてくれた。

「あ、ごめん、ちょっとこの問題が分からなくて……」

「ちょっと見せて」

 志藤さんが問題を覗き込む。その時、自然と志藤さんの顔が近くなり、彼女の髪からミント系の爽やかなにおいが俺の鼻孔をくすぐった。

「あ、この問題はね、ここをxにして――――」

「ふんふん……、あ、なるほど」

 志藤さんが教えてくれる通りにしたら、あんなにてこずっていた問題が一瞬で解けた。

「すごいよ、志藤さん。教えるのが上手」

「そ、そんなことはないわ……」

 彼女はプイっとそっぽを向く。その耳をほんのりと色づかせながら。

「志藤さん、いつも上位の成績にいるもんな~」

「えっ、そうなのか⁈」

「あ、たしかに。いつも成績上位リストに入っていた気がする……」

「そ、そんなことないわ。ふ、ふつうよ。ふつう」

 そっぽを向いたまま志藤さんは返答する。

 いや、星華学園は一学年の人数も多いし、進学校であるため、そんな中で常に成績上位というのは普通じゃない気がする。


「そ、それに、それを言ったら櫻木さんとかの方が断然すごいから……」

 やっぱり、櫻木さんも勉強ができるのか。まあ、あの感じだと、勉強ができなさそうな感じは全くしない。

「いや、あれはもう別格だから。なんだよ、毎回一位って」


 バキッ


 驚きのあまり、シャーペンの芯が折れてしまった。

 えっ、櫻木さん、そんなにすごいの……


「そういう遼くんも、よく上位に入っているよね……」

 そういえばたしかに遼も勉強ができそうな気がする。てか、こいつの場合は、何事も器用にこなしそうだ。

「それじゃあさ、遼と志藤さんに勉強を教えてもらわない? ほら、その方がわたしたちも勉強が捗りそうだし」

 パンッと両手を叩いて、七海が提案する。

「まあいいぜ。人に教えると自分の復習になるし」

「わ、私もかまわないわ」

 遼と志藤さんも了承してくれる。

 こうして、遼は牧原さんを、志藤さんは俺と七海の勉強を見てくれることになった。


 そして、勉強を始めてから二時間後。ついにみんなの集中力が切れた。

「あー、疲れた~」

 七海が大きく伸びをする。志藤さんも自分の肩を揉んでいた。

「それじゃ、少し休憩すっか」

 遼の提案にみんなが首肯する。

「俺は飲み物とお菓子を持ってくるよ」

「あ、それなら私もいくわ」

 俺が部屋から出ようとすると、志藤さんも席を立ちあがった。

「ありがとう。それならお願いする」

「ええ」

 そうして、俺と志藤さんは飲み物とお菓子を取りに行くべく、下に降りて行った。


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