表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/114

21話★

「―――――で、意識を取り戻したら、いつの間にかその不良たちはいなくなっていたってわけ。あとで、そのとき一緒にいた友達に一体何が起こったのかを聞いてみたら、今日のように私の周囲に幽霊がたくさん現れていたそうよ。その友達はすごく青ざめた顔で私に話してくれたわ」

 そう話す彼女の顔には影が差していた。おそらく、七海が言っていた通り、それからその友達とは距離を置くようになったのだろう。


「これが昔あったことの全て。満足かしら?」

 彼女は話し終えると窓から外を見た。

「だから魔女か……」

「そうね。こんな奇怪な力を持っていれば、そんな風に呼ばれるようにもなるわ」

 噂については志藤さんも把握しているらしい。彼女は自嘲気味に呟いた。


「えーっと、志藤さんの両親はその力を使えたりする?」

「使えるわけないでしょ。私だけよ」

「えっ」

「ん? なによ、当たり前じゃない?」

 彼女は俺が何に驚いているのかさっぱりわからないといった感じの表情を浮かべた。

「あ、ごめん。……なんでもない」

「そ」

 俺は顎に手を置いて考える。

 

 魔導師の素質は完全に遺伝だ。両親のうち、どちらか一方が魔導師でなければ魔力を持って生まれることはない。

 それに、今まで後天的に魔力が宿ったという話を聞いたこともない。


「いったい、どういう……」

 そのとき、彼女が心配そうにこちらを窺っているのに気が付いた。

「あ、ごめん、ごめん。その、ちょっと考え事をしてて……」

 彼女はまだ不審そうにしていたが、すぐに関心が薄れたのか、窓の外を眺め始めた。

 俺も一息ついて、心を落ち着かせた。

 そうだ、今はなぜ志藤さんが魔導を使えるようになったのかというよりも、解決しなければならないことがある。

 両親が魔導師でないこともあり、彼女は今まで魔導を誰かに教えてもらったことがないのだろう。だからか、彼女はおそらく魔力の使い方を全く分かっていない。今回のように魔導を暴走させてしまったのがいい証左だ。

 そして彼女自身、これらのことをおそらく理解できていない。このまま放っておくと、また魔導を暴走させて、今度は被害者を出しかねないように思えた。

 だから、彼女には自身の魔導を制御できるようになってもらわなければならない。


 ちらりとベッドに座る志藤さんを見た。

 彼女はその自慢の髪をいじっている。

 魔導を制御できるようになるためには、誰かの指導が不可欠だ。それに、魔導が暴走した場合にも備えて、ある程度の堅牢性を備えた施設で練習をしなければならない。

 しかしもちろん、魔導師ではない彼女の両親に指導を頼むことはできないし、彼女の家で練習をすることもできないだろう。


 ……そうなると、これを頼めるのは俺の周りに一人しかいない。

 ただ、彼女にどう切り出したらいいのか思い悩んでいた。この提案を年頃の女の子にするのは正直どうかと思う。それも恋人でもなんでもない人に向かって。


「なに、またどうかしたの?」

 うんうん唸っていると、志藤さんが再び心配そうにこちらを見た。

 その綺麗な瞳には自分のうなる様子が移っている。

 どうせこのまま思い悩んでも何事も解決しないのだ。

 それならもうなるようになれ……


「志藤さん、一つ提案があるんだけど……」

「なによ?」

 彼女は首を傾げる。


「この後、俺の家に来ない?」


「――――――――――は?」


案の定、彼女は、まるでゴミを見るような目で俺を蔑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ