昔話とエルシィの話
しかし、思ったより私がルイスに与えた影響も大きかったようですね。
「もし、私が屈強な騎士がカッコいいとか言ったら、どうなったんですかね?」
「多分騎士になってるね」
お義父様は真顔でした。
「そうね。筋肉がつきにくいみたいだから、魔法騎士になるんじゃない?」
お義母様も真顔でした。
「だな。いや、筋肉ムキムキになる魔法を開発するんじゃないか?エルシィに好かれるためならルイスはどんな労力も厭わないからな」
「「それだ!」」
どれですかい。つまり、今の完璧主夫状態も私の迂闊な発言が関わっている可能性がある?
「まさか、ルルドさん?」
ルルドさんは奥さんが仕事で本人は家で内職と家事をしている。足が魔物にやられて悪く、本人は穏やかな気質だからか主夫になったらしい。家事をできる男の人って素敵だよねと言った覚えがある。
「当たり」
シルスが肯定した。
「まぁ、元から家事は嫌いじゃないみたいだけどね。小さい頃もよくお手伝いしてたし…昔はうっかりこのまま女の子として育てようかと魔がさしそうになったわ」
「…普通に育ててくれてありがとうございます」
ルイスはお義母様の本気を感じ取ったのか、真顔でした。
「しかし、エルシィちゃんは寛大だねぇ。下着を手作りする男とか、嫌じゃない?」
「え?普通じゃないですか?」
「…お前の周囲は変態だらけだったからなぁ…」
「…そうなの?変態というか、己の性癖に正直なだけじゃないの?」
シルスは頭が痛いのか、顔をしかめて頭をおさえている。
「普通はそういうのは隠すもんなんだよ!オープン過ぎる奴らがおかしいの!」
「おお…」
そうなのか。そういや、ルイスは隠してるね。シルスの性癖は…ちょっと知ってるけど。
「そもそも、私騎士の格好してた時男だと思われてたから…普通に猥談されまくってたからなぁ…女とわかってからも扱い変わらなかったし…あ、そういや彼女に下着を贈ってフラれた馬鹿がいたわ」
「誰?」
「ガルド。確か贈ったのは『夜の猫ちゃんセクシーランジェリーセット』だったかな。あんないかがわしいセットがあるなんて初めて知ったよ」
「………馬鹿だ。というか、なんでそこまで知ってんだよ」
ガルドは王城の騎士で、同じ年齢の脳みそ筋肉です。
「こないだ王城に行ったら、昼間から酒場に連れていかれて泣きながら現物を見せられた。ブツを顔面に叩きつけられたあげくフラれたらしく、箱がへこんでた」
「うおお…」
絞り出すような『うおお』いただきました。
「ちなみにエルシィのリアクションは?」
「まだ早かったか、彼女からの愛が足らなかったか、彼女の性格を見誤ったかじゃないかと言っといた。確か相手がいいとこのお嬢さんだったからもあると思う」
庶民とかはわりとその辺りに寛大だったりする。それでも個人差はあるけど。
お義父様が首をかしげた。
「その理論で行くと、エルシィちゃんはルイスから同じものをもらったら喜ぶの?」
「ちょっ!?」
「馬鹿親父!聞くな!」
「あらあら」
ルイス、シルス、お義母様…それぞれリアクションが違うね。
「そうですね…とりあえず夜の誘いだと判断し、着用して夜這い「きゃあああああ!」
ルイスが慌てて口を塞いだ。口を塞ぐ手を舐めて外させ、ルイスが慌てて離れようとするのを捕まえ…お誘い、待ってるね?と耳元で囁いてやった。部屋の隅でピルピルする子兎。可愛い。
「いっそ潔いな…」
「流石はエルシィちゃん」
「お義母様、正直応援しちゃう!」
何故か感心された。ルイスはお義母様に応援しないで!と反論してました。
「いや、最近は女豹というか…肉食女子を目指してるんですよ」
「にくしょくじょし?」
首をかしげたお義母様。
「男性に対して積極的な女子です。待ってるだけではダメなんです!積極的に攻めていかねばならぬのです!守りは性に合いません!そして、ルイスをあらゆる意味で骨抜きにしてやるのです!」
「お義母様、応援しちゃう!素晴らしいわ、エルシィちゃん!ルイスからストーカーできる余裕も気力も体力も奪い取ってやって!そして、早く孫を抱かせてちょうだい!!」
「お義母様…!」
手を取り合う私たち。
「ルイス、頑張れ。母さんは本気で孫が欲しいらしい。俺の平和のためにも頑張れ」
「ルイス…エルシィちゃんを逃したらお前は犯罪者になるしかないから頑張りなさい」
「兄さんはともかく、父さん達の信用のなさはなんなの!?そして、まだ孫…子供とか早いから!結婚してないから!」
ルイスが真っ赤になって泣きそうです。ご両親は目をそらしました。
「…あの、ルイスはストーカーでもないし、私ともし別れたとしても犯罪者にはならないと思いますよ?今回だってルイスは私がルイスの為に人生を犠牲にしたんじゃないかって…私のそばにいる資格がないんじゃないかって悩んで離れようとしたんです。ルイスは私の事をちゃんと考えてくれますし…ルイスにされて嫌なことなんか、何一つ無いです」
「…エルシィ…!」
愛しの子兎にぎゅーされました。幸せ~。
「ルイスの相手がエルシィで良かったよな…」
「そうね…これだけ全幅の信頼を寄せられたら裏切れないし…エルシィちゃんは本気でルイスが好きなのね…良かった…」
「そうだな。ルイスも幸せそうだし、本当に良かった…エルシィちゃんがルイスと二人暮らしを希望したとき…ルイスがエルシィちゃんに悪さをしないかとてつもなく不安だったけど、本当に良かった…」
「どういう意味!?」
「いや色々拗らせてるから、エルシィちゃんにセクハラとか覗きとかしないか不安で…」
「せくはら…」
そういや、該当があるにはある。よく剥かれてましたね。覗きとかは、多分ない。
「え!?まさかやらかしたの!?お義母様に言いなさい!」
えっと、血塗れで帰ると脱がされて怪我のチェックされてて…終いには全裸……
「い、言えません……あ、あんな恥ずかしいこと…」
流石の私にもあれは言えない。顔が赤いのが自分でもわかる。
「ルイス?」
「ルイス、正直に答えなさい!」
「ルイス、何をやらかした!?」
ルイスはご両親とシルスに問いつめられましたが、最後まで黙秘しました。
とりあえず、ルイスは何を言われようと悪さについて黙秘したに違いない(笑)
エルシィは他にも幼女愛好や血に興奮する変態にもアプローチされてますのでルイスのストーカーは実害もないし…ストーカーなの?ルイスはプレゼントくれだだけだよ?好きな人のこと知りたいって普通じゃない?という認識です。




