80話 このチートめっ!!
暖かい? あのすさまじい炎に全身を焼かれて、たったそれだけ……?
しかも……
「これは誇ってもいい、称賛に値しますよ」
「ふふっ、言ってくれるわね。
貴方こそ私の炎に焼かれて無傷だなんて、流石は魔王といったところかしら?」
お母様のいう通り、あの炎に身を包まれて無傷。
謁見の間はところどころ炭化してたり、地面が溶けて真っ赤になってたりと惨状と化してるのに。
身体どころか衣類にすら一切の焦げ目もないなんて……
「クックック、この程度で驚かれては困ります。
それとも……まさか、本気で今ので私に傷を負わせる事ができるとでも?」
これが八魔王が一角、不死の呪王と恐れられる魔王ナルダバート!
このバケモノめ……!!
「まぁ、いいでしょう。
私に暖かいという感覚を感じさせた褒美として、私が直接生み出した者達の相手をする権利を差しあげましょう」
魔王ナルダバートが直接生み出した者達?
「クックック……」
「っ!?」
軽く手を前に翳した魔王ナルダバートから吹き荒れ、空気を巻き込みながら渦巻く膨大な魔力の奔流!!
これはヤバイ! 下手をすればこの魔王城もろとも消し飛びかねない!!
「不死者創造」
「なっ!」
あの膨大な魔力の奔流が完璧にコントロールされて、一気に凝縮された!?
不死者創造っていってたし、まさかこれがガルスさんがいってた……
「創造主様、何なりと御命じください」
魔王ナルダバートに恭しく跪く5人の騎士。
これが、自身の魔素を媒体にして無限に不死者の軍勢を生み出せる魔王ナルダバートの能力……
「お前達、あの人間共の相手をしてやりなさい」
「「「「「御意」」」」」
「っ!」
5人の騎士の姿が一瞬にして掻き消え……
「お母様! お兄様っ!」
「邪魔よ、そこをどきなさい」
「いきなり斬り掛かって来るなんて無粋だね」
「へぇ、コレが俺達の相手ね」
瞬時にお母様達に肉迫した騎士達が振り下ろした剣をお母様は鉄扇で、お兄様達は剣で受け止めた……のは、まぁお母様にお兄様達だしあの程度のスピードに対応できるのは当然だけど!
それはともかく! 鉄扇っ!?
お母様……以前笑っていってた鉄扇は社交界での女の武器よって言葉、ただの冗談だと思ってたけど……まさか本当だったとは。
「あらソフィー、私とついでにこの変態の心配はしてくれないの?」
「誰が変態だ!?」
「ルミエ様……」
だって、あの騎士達がルミエ様に敵うはずがないもん。
現にルミエ様に襲い掛かったはずの騎士がルミエ様に踏みつけられて地面にめり込んでるし。
ルミエ様と対等に渡り合えるガルスさんもいわずもがな。
「とはいえ……」
魔王ナルダバート、このチートめっ!!
魔素の続く限り無限に好きなだけ不死者の軍勢を作り出せるってだけでチートなのに……今ナルダバートに創造されたあの5人の騎士、コイツらの魔力だけでいうと最高幹部である〝五死〟と同格じゃん!!
「バケモノめ……」
「クックック、お褒めに与り光栄です。
ソフィア・ルスキューレ公爵令嬢」
「ふん、せっかくの騎士達もルミエ様とガルスさんにはもう倒されてしまっているようですけどね」
「別に構いませんよ。
最初からあの2人の相手があの程度の者に務まるとは思っていませんので、一瞬だけ2人の気を逸らせたら十分です」
「む?」
いったいなにを……
「コレで、貴女と2人っきりです」
「っ!?」
隔離結界っ!? いつのまに……!
「さて、これで邪魔は入りません。
さぁ! 我々も始めましょうか……特異点たる愛子よ、貴女の力を見せてください」
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