76話 魔王の国
あとは、どうやって魔王ナルダバートのところに乗り込むかだけど……
「ソフィー!!」
「わっ!?」
び、びっくりした……
「むっ、お父様……」
もう! こんなときに、いきなり抱きつかないでほしいんですけど……また私が感知できない敵の攻撃かと思って、びっくりしちゃったじゃないですか!
「本当に行くのかい?」
「反対しても無駄ですよ」
たとえお父様に反対されようとも……お兄様達にお母様、この場にいる全員に反対されようとも意見を変えるつもりはありません!
なにせ! いずれ最強になる私の名声を高めるいいチャンスですし、なにより魔王ナルダバートが御所望なのは私。
なんで魔王ナルダバートが、私を生贄にご指名したのかは知らないけど……指名されたからには、今回の魔王襲来に私は無関係でなはなく当事者の1人!
それなのに、国家存亡の危機に……みんなが私を生贄にしない代わりに、王都を国を守るために戦っているそのときに!
当事者である私が安全な家の奥でジッとしているわけにはいかないのです!!
「……はぁ、これは反対しても無駄なようだね」
「その通りです!」
だって魔王ナルダバートは国が助かるための生贄として私を差し出せっていってきたのだ。
そんなナメたマネをしてくれた魔王は私が直々にぶっ飛ばして、お灸を据えてやるのが道理っ!!
「まったく、ソフィーの一度言い出したら聞かない所は誰に似たのやら……わかった。
けど、無理をしない……と言っても絶対に無理をするよね?」
「さすがはお父様!」
よくわかっていらっしゃる!!
そりゃあ、魔王と戦うんだもん! 無理をしないわけがないっ!!
「はぁ……とにかく! 必ず無事に帰ってくる事、約束できるね?」
むむっ、お父様が珍しくキリッとした真剣なお顔をしてる。
これはマジな質問だ……
「はい、約束します」
「本当なら絶対にダメだって言いたいんだけど……仕方ない、うん、これは仕方ない事なんだ。
ソフィーが可愛らしく最強になる! って言い出した時に止めなかったのは私達だし……でも! あんなに可愛く宣言されたら止める事なんてできないじゃないかっ!!」
「あの……お父様?」
心の声がダダ漏れなんですけど……せっかくのキリッとした雰囲気の台無し感がハンパない。
まぁ、それでこそアマアマで残念で、ちょっとウザいほどに過保護なお父様だけど。
「ソフィー! やっぱりお父様から離れないで……」
「まったく、あなたは何をしているのですか? みっともない」
おおぅ、私を抱きしめるお父様の後頭部にスパーンっ! って見事にお母様の一撃が入った!!
「ユ、ユリアナ……」
「そんな事ではソフィーちゃんに嫌われてしまうわよ」
「っ!? だ、だが……」
「一度は覚悟を決めたのでしょう? ならば、もっと堂々と娘を送り出す事もできないのですか?」
さ、さすがはお母様! めっちゃくちゃカッコいいっ!!
「わ、わかった。
ソフィー、王都の事はお父様に任せて行ってきなさい」
「はい!」
「ふふ、じゃあ転移させるわよ」
「お願いします」
さぁ! これで本当に、いよいよ行動開始!
魔王ナルダバート! 首を洗って待っていろっ!!
「無事を願っているわ」
「マリア先生達もご武運を!」
パチンっ!
マリア先生が指を打ち鳴らすと同時に、私達の足元に魔法陣が展開されて……
「ここは……」
「そりゃあ、嬢ちゃん達はここに来るのは初めてだよな。
ここが魔王ナルダバートが治める国、死者の王国セカンデス。
そして……目の前に聳え立つ、あの城が魔王ナルダバートの城だ」
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