75話 行動開始ですっ!!
「うそ……」
やばい! お父様達の興味を私談義から魔王ナルダバートに移して、作戦会議を進めることに集中しすぎて気づかなかった!!
まさか、この短期間で王都を完全に包囲されてしまうとは……
しかも、この圧倒的な数!
魔力感知でザッと見たところ、数万もの大軍勢っ!!
この軍勢の出現に当然のように気づいてたマリア先生達はさすがだけど……
「これって……!」
「ソフィーちゃんも気付いたようね」
「はい、マリア先生」
王都を包囲しているのは、数万もの不死者の大軍勢。
とはいえ、数はすさまじいけど単体で見れば大したことのない有象無象が大半!
まぁ、それでも一般人にしてみれば十分に脅威だし。
王都を守るために、この不死者の大軍勢に立ち向かう騎士や冒険者からしても……たとえ英雄と呼ばれるような存在だとしても数の暴力は十分すぎる脅威といえる。
まっ! それでも、あの程度なら私の敵じゃないんだけど!!
イストワール王国が保有する戦力は全土から騎士団とかを総動員して軍をかき集めたとしても20万前後ってところかな?
そこに冒険者を含めても恐らく25万にも及ばない。
まぁ、国民を無理やり徴兵すればもっと多いだろうけど。
とにかく! 基本的には国中の戦力をかき集めても20万程度にしかならないのに、王都のみとなれば言わずもがな!
ぶっちゃけ私達がいなかったら、あの数だけで王都を攻め落とすことも十分に可能な大戦力っていえるだろうけど……問題はそこじゃない。
「王都の四方に感じる、他とは一線を画す強大な魔力」
この隠す気の一切ない力の波動。
皇帝陛下に瞬殺されたせいでイマイチそのすごさがわからなかったけど、本気になった幻殺のジンと同等かそれ以上。
「まず間違いなく、残りの〝五死〟の4人!」
これはまずい! 非常にまずいっ!!
これから私達だけの少数精鋭で魔王ナルダバートの本陣に乗り込んで魔王ナルダバート本人を直接叩くって話してたところだったのに!
「まっ、こうなっちまったら仕方ないな。
全員で籠城戦……と言いたいところだが、魔王ナルダバートは自身の魔素を用いて無限に配下の不死者を増やすことができる」
「無限に……」
まったく、これだから魔王って存在は……無限に不死者の軍勢を作り出せるとか、どんなチートっ!?
本当にラスボス魔王はチートすぎるわ……
いやまぁ、一概に魔王ナルダバートが乙女ゲームでのラスボス魔王だとはいえないけど。
確かに前世の記憶にある乙女ゲームでは前半部分のボスである悪役令嬢、つまりはこの私を前座扱いして魔王がラスボスだ。
だがしかしっ! この世界には現在、八柱の魔王が存在してるわけだけど……乙女ゲームでは魔王ってラスボス一柱しか存在してなかったし!!
乙女ゲームのラスボス魔王が、この世界に存在してる魔王と同一の存在だとはいえないんだよね〜。
「嬢ちゃん、どうかしたか?」
「はっ!」
そうだった、今はこんなことを考えてる場合じゃない!
「いえ、何でもありません!」
「あぁ! 張り切ってるソフィーも可愛いっ!!」
「抱きしめてあげたいっ!」
「ソフィーっ!!」
「ふふふ、これは早急に魔王を片付ける必要がありますね」
「そうね……今夜が楽しみだわ」
「もう! みんな、もうちょっと危機感というか、緊張感を持ってください!!」
まったく、魔王の軍勢に周囲360度を完全に包囲されてるって状況。
まさに王都陥落、国家存亡の危機なのに!
「あら、ソフィーちゃんに怒られちゃったわ」
「でもぷりぷりと怒ったソフィーも可愛らしいわよね」
「「「ソフィ〜っ!!」」」
あ、あれ? なんか、みんなちょっと嬉しそうなんですけど……い、いや! そんなハズはない!!
いつもは残念なお父様達をコントロールしてくれるお母様が今日はあの状態だし、ここはもっと私がしっかりと喝を入れてやらねば!!
「……とりあえずだ! 作戦通り魔王ナルダバートを直接叩く班と、王都防衛組との2組に分かれるぞ」
「っと、そうですね……王都防衛もですが、それよりも魔王本人に戦力を向ける必要がありますからね。
そうなると、攻撃組は師匠達にお任せして俺達は王都の守りに努めた方がいいですね」
さ、さっきまで残念モードだったエレンお兄様が正気に戻った!?
うぅ……私がビシッといいたかったのに、ガルスさんにいいところを持っていかれたっ!!
「けど……師匠達には王都の守りをお任せしたい」
「ほう……それはまた何で?
今お前自身が、俺達3人で魔王を叩くのが最善だと言ったばかりだろ」
「それはその通りですよ」
ふむふむ、確かにならどうしてガルスさん達に王都の守りを?
「でも……魔王ナルダバートは、ソフィーを狙った」
「つまり、ヤツは我らがルスキューレ公爵家の敵。
我々で潰すべき存在です」
「「「……」」」
「お、お兄様……」
カッコいいっ!! さすがは私のお兄様達! いつもは残念でもキメるところはしっかりとキメる!!
「ふふふ、エレン、アルト、よく言ったわ」
「それでこそ、ソフィーの兄だ! 王都の守りは私に任せて、お前達は魔王を潰せ。
我らが天使を狙った愚かさを徹底的に刻み込んでやりなさい」
「……はぁ、わかったよ」
「あとは……あの2人をどうするかですね」
あの2人……アルトお兄様の婚約者であるフィアナお姉様と、エレンお兄様の婚約者のディアお姉様ですね。
お姉様方は私の誕生日が終わったこともあって今は丁度、転移魔法でご実家に帰ってて王都どころかイストワール王国にいないけど……
「いくらお前達の婚約者とはいえ、まだルスキューレ公爵家の者でもない。
ましてや、他国の貴族である2人をこんな危険に巻き込むわけにはいかないだろう」
「そうはそうですが……」
「ディアはもちろん、フィアナ義姉さんもソフィーを溺愛してるからな……ここで呼ばなかったから後から何を言われるか……」
う〜ん、確かに……自分でいうのもなんだけど、私はお姉様達に愛されてると思うからな〜。
「話は纏まったな?
なら、とりあえず王都の守りはマリアと変態皇帝に任せる。
俺は念の為に攻撃班に入るとするわ」
「わかったわ」
「その変態皇帝ってのやめてもらえません?」
なるほど〜、お兄様達とガルスさんが魔王を叩く攻撃組。
お父様を筆頭としたルスキューレ家の勢力と、マリア先生に皇帝陛下が王都防衛組ってわけね。
「あとは、嬢ちゃんだが……」
「当然! 私も攻撃組に入りますっ!!」
「はぁ、そう言うと思ったぜ」
魔王ナルダバートの狙いは私なわけだし、私が直接ぶっ飛ばしてやるわっ!!
「では、行動開始ですっ!!」
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