53話 ギフト
「あ、あの……その、先程は取り乱してしまい、申し訳ありませんでした……」
「うふふ、涙目で真っ赤になりながらしゃがみ込んでてちょっと可哀想だけど可愛かったわ」
『確かに、申し訳ありませんが微笑ましかったですね』
「まぁ、嬢ちゃんは正真正銘の公爵令嬢だからな。
それもイストワール王国の貴族だし、水着姿を見られて取り乱すのも仕方ないと思うぞ。
むしろ、自分が水着姿だって事を忘れてた事の方が驚きだよ」
「うぅ……だ、だって!」
ルミエ様とアクアさん、そして可愛い水の精霊さん達とちょっとしたバカンスを楽しんでた所にガルスさんがいきなり現れたんだもん!!
しかも、魔の森の最深部で初めて会った時のルミエ様と同等の圧倒的な気配を放ってたガルスさんが突然背後に出現したんだよ!?
そんなのビックリして、警戒するのは当然じゃん!!
さらには、ルミエ様、アクアさんとは知り合いっぽいし。
ルミエ様が小さい頃の話をしだして、怒ったルミエ様といきなり戦い始めるし……自分が水着だったことを忘れちゃってもおかしくはないと思う!!
おかしくはないと思うけど……この流れは非常にまずい!
あの残念なお兄様達やお父様の影響で私にはこのあとの流れが手に取るようにわかる。
このまだと、私の恥ずかしい黒歴史談義に突入しかねない!
なんとか話題を変えなければ!!
「そ、そんなことより! ガルスさん……カーナル様はどうしてこのダンジョンに?」
「別にガルスで構わないぞ」
「えっと、でも……」
確かにもう私の中ではガルスさんは、ガルスさんで固定されちゃってるけど。
ガルスさんは、伝説に語られる英雄の一人。
大賢者たるマリア先生や、現人神と称される皇帝陛下に並び立つ冒険王だし……
そうじゃなくても、本来Sランク冒険者は各国の伯爵位と同等の扱いをされる存在。
そんなガルスさんを敬称を付けずに面と向かって気安く呼ぶなんて……
「マリアの事も先生って呼んでるんだし、俺に様なんてつけなくても構わないって」
「う〜、わかりました。
ガルスさんがそういうなら」
「堅苦しいのは苦手なんだよ、悪いな。
それで、どうして俺がこのダンジョンに来たのかだったな」
「はい」
さっきエレンお兄様から、このダンジョンに行くなら私のことを手助けするように頼まれたっていってたし。
まだ家には迷宮調査の緊急依頼を受けたなんて連絡してないのにエレンお兄様がそのことを知ってた理由は想像できる。
なんたってエレンお兄様はSランク冒険者だし。
エレンお兄様にも緊急依頼の連絡をするついでにグレンさんか、ミレーネさんが気を回して私のことも伝えてくれたんだろうけど……
ガルスさんも私達と同じように冒険者ギルドの緊急依頼を受けて来たのかな?
「当然このダンジョン、魔法神の休息所を攻略するためだ」
「おぉ〜!」
さすがは伝説の冒険王!
当然のようにこのダンジョンの正式名称を知っているとは!! う〜ん、でもまぁ知ってて当然か。
ルミエ様の小さい頃を知ってたりすることから考えると、ルミエ様のお母様にしてこのダンジョンの創造者である魔法神様と知り合いでも一向に不思議じゃないし。
「じゃあガルスさんもギルドの緊急依頼で?」
「まぁ、ギルドの緊急依頼も受けてはいるが……そっちはついでだ。
違う人にこの迷宮を攻略してくれって頼まれたんだよ。
それでちょうど近くに住んでるエレンに手伝ってもらおうと連絡したら……」
「逆に私の手助けをするように頼まれたと」
「その通り」
もう! エレンお兄様ったら、冒険王の頼みを断るどころか逆にお願いまでするなんて!!
「それはなんといいますか……お兄様がご迷惑をおかけしました」
アルトお兄様もだけど、私のお兄様達は伝説の英雄たるマリア先生やガルスさんに対する対応が雑すぎる!
帰ったら私が一度ビシッと注意しないと!!
「いや、それは別に構わないんだが……アクアがここにいるって事は、ここから先は相当ヤバいって事だよな?」
『ふふふ、そうなりますね。
なにせこの迷宮はガルス殿達を退けるためにご主人様がお造りなられたダンジョンですから』
魔法神様がガルスさん達を退けるためにって……もしかしてガルスさんは魔法神様と敵対してるのかな?
でも、さっきまでの話とかルミエ様やアクアさんとの会話を聞く限りじゃあとても敵対してるようには見えないし……
「だよな……ったく、やっと見つけて辿り着いたってのに」
「あ、あの! どうして魔法神様がガルスさん達? を退けようとしているのですか?」
「ん? あぁ、実は……そんな理不尽な……」
「ガ、ガルスさん?」
「悪りぃな、これ以上は口止めされちまった」
「口止め、ですか?」
『ぴろん!
迷宮の創造者ーーーが冒険王ガルス・カーナルと白竜王ルミエの戯れ合いを防ぎ、湖を守った事を称賛しました』
『ぴろん!
迷宮の創造者ーーーより、個体名ソフィア・ルスキューレにギフトが贈られます』
『ぴろん!
ーーーのギフトが開花します……ユニークスキル・並列存在を獲得しました!』
「ほぇっ!?」
な、なに!?
「へぇ、並列存在ね」
「まぁ、なかなか良いスキルを獲得したんじゃねぇか?」
『おめでとうございます!』
「くっくっく、しかし公爵令嬢がほぇって……」
「わ、わわわわ忘れてくださいっ!!
それよりこれは……」
「まぁ、簡単に言ってしまえば、魔法神からのプレゼントってところだな」
「プレゼント……」
ユニークスキルをプレゼントできるなんて、さすがはルミエ様のお母様である魔法神様!!
規格外すぎますっ!!
「まっ、そういうわけで、新たなユニークスキルの確認もする必要があるだろうし。
今日のところはもうそろそろ帰りな」
「は、はい……」
「それで、貴方はどうするつもりなのかしら?」
「一応やれるだけやってみるさ。
まぁ、どうせ無理だろうけどな」
「そう、まぁせいぜい頑張りなさい。
じゃあソフィー、帰りましょうか」
「う、うん……」
ユニークスキル・並列存在。
どんなスキルなんだろ?
「はい、手を伸ばして」
「はい」
……ん? ちょっ、ルミエ様!?
なんで自然な流れて私のことを抱っこしてるんですかっ!?
「じゃあ、私達はこれで失礼するわ」
「あ、あの! アクアさん、ガルスさん、失礼します! また今度!!」
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