★ダンジョンカード
お土産を渡して、皆さんも帰って。
「ふぅ。とりあえず今日も終わったし、明日からお休みだ」
一段落つくと、急にお腹も減ってきます。
「私のハンバーグを焼いてくれるのですね?」
何処からともなく現れるのは精霊。
「……別に焼いてもいいけど、夜の分が無くなるよ?」
皆さんに渡して、家の分は二人前。あれこれ動く事を考えると、自分の分を精霊にあげるのも少しためらうのは仕方のない事。
「そ、それは困りますね」
「じゃあ、我慢してね?」
「うぅ。ハンバーグゥゥ」
うーうーと言っていますが、精霊は放置。
自分の分のシャリアンピンステーキをパパッと焼いて、ソースを作ってご飯をよそって丼ぶりに。
勿論残っている、キノコのソテーもマッシュポテトも全部乗っけて、食べる形で。
「あ、美味しそうなものをまた自分だけ……」
「いやいや、これは僕の分だからね?」
とはいっても、横でそうじーっとみられると気にならない訳も無く。
自分の丼から数枚のお肉をお皿に。流石に丼ぶりの量はないので、お椀に七分程度の小盛りのご飯をよそって、お肉を乗せるとシャリアンピンソースを少し多めに。
自分の分が少し減るのはまあ、この後動くと思えば仕方ないとあきらめもつきます。
「ほら、食べるよ!」
自分の隣に小盛の丼ぶりを作って置くと、嬉しそうな気配。
「私の分!!」
「「いただきます」」
自分で言うのもなんですが、しっかりと漬け込みが出来ているのでお肉は凄く柔らかく、噛めばホロリと食べやすく。そしてソースもちょっと甘くて肉を引き立てるいい味。
丼ぶりとして食べるには贅沢すぎるといってもいい程の美味しい一品。
美味しい昼下がりをそんな感じで過ごして、遅くなりますが片付けを。
食器よりも厨房のボウル等の調理器具が今日は多めでしたが、何とかこちらも一段落。
「さて、ちょっと今日は遅い時間になったけど……」
「ダンジョンに入る予定でしたよね?」
すべて終わってのコーヒーブレイクをしていたのですが、精霊が声を掛けてきます。
「そうだね」
「それでしたら、ギルドへ一度顔を出しませんか?」
「あー、そうね。別に精霊を信用していないわけじゃないんだけど、ギルドでも話は聞いておきたいからね」
「いえ、それは構わないのですが入るには入場証が必要でして」
「入場証?」
「ええ。というかまあギルドカードですね」
「おー。なんというか、ゲームっぽいというかファンタジー感出てきた気がするかも」
魔法を使う生活に少しずつ慣れてきていた中、生活で使うモノではなく攻撃等の非日常へ一歩足を踏み入れる感じ。
かなりの期待と高揚感と一抹の不安が入り混じった不思議な気持ちです。
「ゲームではないので、死んだら終わりですけどね。まあ、とにかくギルドには一度顔を出さないといけないと思うので、この後は丁度いいのではないでしょうか?」
「じゃあ、行こうか」
ワクワクした気分のままコーヒーを一気に飲み干すと、家を出る準備。
今日はこのままダンジョンに入るつもりは全くないので、着の身着のまま。
「いってきます」「いってらっしゃい」
そんなやり取りをして、家を出て北のギルドへ。
お昼を過ぎて、夕方には早いので時刻としては微妙な時間だと思ったのですが人は沢山いて、かなりの量。何度か来ている時と変わりなく、今日も賑やかです。
「えーっと、何処かな?」
キョロキョロと見回して、何ヵ所かカウンターは見えますが、看板等が下がっているわけでもなく、場所が分からずにいると、
「今日はどうした?また干し肉がいるのか?」
いつぞやの職員さんが声を掛けてくれます。
「あ、この間はどうもです」
挨拶をすると、バシバシと背中を叩きながら、
「イイって事さ。それで今日はどうした?」
「今度ダンジョンに入ろうかと思っていまして」
「おー、そうか。まさかその装備でいくわけではないよな?」
全身をしっかりと見ながら、言われたので、
「ええ。そう言うのも含めて色々と教えて欲しいのですが」
「とりあえず、登録からだから、こっちのカウンターだな」
手を引かれながら、指さす先には数名の女性が忙しそうにしているカウンター。
言われるままに数名並んでいる所の後ろに並んで、少し経てば自分の番。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
定型文のような形の一言ですが、やっぱり頭の中ではゲームの空気感がヒシヒシと。
「ダンジョンに入りたいので、登録をしにきました」
「畏まりました。ではこちらの用紙にご記入をお願いします」
出された紙はいたってシンプル。というか、シンプル過ぎる程。何故かといえば、紙の大きさはA4程の大きさなのですが、書ける場所はそれほど大きくなく、書く事も一つだけ。
「これは、名前を書けばいいのでしょうか?」
「ええ。後はこの紙が色々としてくれますので。えーっと、代筆等は必要でしたか?」
「あ、いえ。そういう事は無いので大丈夫です。えっと、フルネームじゃないといけないとかあります?」
「いえ、それこそ偽名でも問題はないのでお好きな名前を」
「え?」
「カード作成にサインが必要程度の事なので」
「はぁ」
中々に最先端のような技術がこっちの世界にもある事を知りましたが、とりあえず名前を書くことに。
有名になるつもりは全然なく、なぜそんなことをと思われるかもしれませんが、学生の頃のまだ初期の英語の授業。授業では使わないといいならが、先生が面白半分に筆記体の話をしてくれて、それで自分の名前ぐらいはと何故かハマって覚えた記憶。
筆記体でMasaと紙に書きます。
「では、その紙を両手で持って下さい」
「両手で、持つ?」
両手で紙を持って持ち上げると、上と下の両端がクルリと丸まって、紙は円柱状に変化しました。
「え、え?」
「もう離しても大丈夫ですよ」
「あ、はい」
両手を離すと円柱状の紙はうねうねと不規則な動き。
その紙を受け付けの女性は掴むと、手慣れた様子で決まった位置へ置きます。
思わずそのまま視線でその不思議な光景をジーっと追っていると動きがピタリと止まって強くピカッと光り、その光が止むと一枚のカードが。
「はい、これで登録完了です」
そのカードを渡されて、とりあえずこれでギルドに登録されたようです。
「あ、はい。ありがとうございます」
僕の手元には一枚のカード。
どうやらこれがあればダンジョンに入れるようです。
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誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません
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