キノコのソテー&マッシュポテト
これは、夢だ。
すぐにそれが分かった理由は単純。
「本日の料理は、こちら」
そう言って、右手で美味しそうな赤身のお肉を紹介しているのは多分、精霊。
だって、声が一緒だもの。見たことのない人の形をしているけれど、多分精霊で間違い無くて、そのまま説明を続けています。
「この料理のポイントは?」
都合のいい夢なので、いきなり精霊に話を振られても、
「そうですねぇ、やっぱり下準備じゃないでしょうか?」
「料理の下準備はやはり大事なのですねぇ」
キョロキョロと喋りながらも見回してみると、何度か見たことのあるようなカメラがこっちを撮っています。
「では、こちらの具材から」
それは調理番組のようで、おいしそうな肉の隣には新鮮な野菜とそれを刻んだものが。
「この様な感じで大丈夫でしょうか?」
精霊っぽい人が、聞いてくるので、
「ええ。良いと思いますよ」
返事をすると、
「みじん切りにしたものがこちらに。では次の作業へ」
普通は料理の先生が番組的にも進める気がしますが、ちょくちょく精霊が前にでて番組を進めてくれる感じ。
「これは美味しそうですね」
少し別の事を考えていたら、一気に場面が飛んでそこには美味しそうな料理が出来あがっています。
「え、ええ」
いきなり振られたので微妙な生返事を返してしまったのですが、
「では、次回もお楽しみにー」
手を振って、少し時間が経つと少し離れた辺りから“オッケーでーす”という声。
いやいや、グダグダで全然オッケーじゃないと思うのですが……と、言える空気は無く、視界の端っこの方から証明がバチンバチンと落ちていき、自分の上の大きな照明だけに。
「今日のお昼はお肉で」
隣の精霊っぽい人がいきなりこちらを向いて言ってきます。
「いや、まだ何も決まっていないし……」
否定するように言ったのですが、
「いえ、今日のお昼はお肉で」
僕の言葉を否定するように、精霊っぽい人が言います。
そのやり取りを数回。
映像がループしているような気がしてきたので、
「わかったよ。今日の昼は肉ね」
返事を変えてみると、
「流石です、雅。お肉の準備はできていますから」
ループは解除されたようで、綺麗な赤身肉をドドンと目の前に置かれます。
「これは?」
「今日のお昼用のお肉です」
「美味しそうだけど、あまり柔らかくはなさそうだからどうしようかねぇ」
「ええぇ?そうなのですか?」
精霊っぽい人はちょっとだけ肩を下げて、聞いてきます。
「まぁ、これも美味しく出来ない事は無いと思うけど、少し硬めだという事は覚悟してほしいかなぁ」
「では、何とかなりそうですね?」
その声は一気に明るく。
「まぁ、多分」
「よかったー。では、そろそろお時間ですので」
「お時間?」
聞き返す様に言うと、
「ええ、もう朝ですから。起きないといけないのでは?」
「あー、そうだね。コレは夢だものね」
「え?違いますよ?」
え?いやいや、夢でしょ?
「まぁ、起きてください」
そう言われて、精霊っぽい人が結構な力強さでグイッと右手を引っ張ってきて、
ガバッ
パッと目を開いて、すぐに左右をキョロキョロと。
目の前はいつも寝ている布団から見える天井で、ここは自分の部屋。
少しばかりしっとりと背中には汗。不思議な夢を見たので目が覚めてもなんか普通な感じになりません。
「結構しっかりと覚えているタイプの夢、見たの久しぶりかな……」
結構面白く感じたのは、精霊が人の形をしていたからでしょうか。まあ、顔は無く顔の部分がいつもの精霊という不思議なキャラクターだったのですが。
目が覚めたら、いつもの行動。
顔を洗いに洗面所へ来たのですが、少し寝汗をかいていたのできょうは水浴びで。
時計も一応確認するといつも通りの早い時間なので、ゆっくりと全身を湯の玉にくぐらせたら、厨房へ。
「あ、雅。起きましたね。おはようございます」
珍しく精霊の方から先に挨拶が。
「うん。おはよう。朝食は?」
精霊も自分の都合で食べられるようになったのが分かっているので、確認するように聞くと、
「コレからです。一緒にお願いしますね」
寝起きなのでそれほど食欲も無いのですが、コレから調理の事を考えると何も食べない方が後で辛くなるので軽くシリアルを。ついでに栄養価も上げようと牛乳をヨーグルトに変更。
「同じのでいい?」
「ええ。構いません」
二人分を作って、静かに食べていると“ゴト”っと結構大きな音。
「ん?」
音に引かれて、視線を向けるとそこには大きな赤身のお肉。
「んん!?」
目をカッと開いて、右手はそのまま自分の頬へ。軽くつねる様に絞ると痛い。という事は、これは夢ではなさそうで。
「どういう事?」
精霊に確認をするように聞くと、
「え?今日のお昼はお肉と言っていたじゃないですか」
「……ごめん、何処までが夢だったのか、現実だったのか分かっていないかも」
僕はとりあえず言ってみたのですが、
「お肉はこの通り用意できていますので、お昼にどうぞ?」
どうぞと言われても……。まぁ、使うしかなさそうですね。
夢で見たのと同じ結構上質な赤身のお肉。
「確か、美味しく出来ない事は無いと言っていたと思いますが?」
精霊が被せるように言ってきます。
言ったけど、夢の中じゃなかったのか……。
何処からが現実で、何処までが夢だったのか。答えは精霊に聞くしかなさそうですが、何となく夢での会話も自分も覚えています。
「まぁ、今からなら間に合うかな。よし、とりあえずその仕込みを後で始めようか」
「今日のお昼も楽しみです」
とりあえずお昼の一品が決まったので、流石にそれだけだと寂しいので付け合わせになるものも作らないと。
と、その前に朝ごはんを食べましょう。
シリアルをヨーグルトで流し込むような感じで。パッと済ませて、付け合わせを考えたのですが、メインに負けないという意味ではこれ以上ない一品が思いつきます。
「よし、決まった」
決まってしまえば後は作るだけ。
メインに負けないけど、見た目もシンプルな二品を作るとしましょう。
一品目はちょっと時間がかかるので先に仕込み。
じゃがいもを綺麗に洗ったら、塩を入れた水に。お湯を沸かす様にジャガイモに火を通します。しっかりと中まで火を入れたいので、中火と弱火の間ぐらいでじっくり時間をかけて茹でます。
その間に二品目の準備。
こちらもシンプルに使うのはシイタケだけ。他のキノコ類を一緒にしてもいいのですが、今日はシンプルに。
石突を落として、大きさに合わせてスライス。
自分も入れると九人にもなるので、量は結構多めに。
スライスし終えたら、フライパンにサラダ油を少し敷いて炒めるだけ。
ただ、ここからが今日はポイントになりそうな部分。
シイタケを炒め始めて少し経つと水分が出てきます。その水分が一切で無くなるまで隣で茹でているジャガイモと同じような火加減でひたすら炒めます。
結構長い時間水分は出るのですが、水分が出きった時、キノコの本当の美味しさがしっかりわかる一品に変わるのです。
なので、かなりの量を炒めているのですが出来上がりはかなり少なくなってしまいます。水分が飛んで、旨味の塊になったシイタケ。これならば今日のメインに負けないでしょう。
ジャガイモは竹串をさしてもスッと入り、抜けるようになったら茹ではオッケー。
皮を綺麗に剥いて、芽の部分を綺麗に取り除いたらマッシャーやフォークの背等でしっかりと潰します。
つぶしたジャガイモを鍋に入れて、弱火で水分を少し飛ばしてそこにバターを。
焦がさないように、場合によっては火を落としてバターとジャガイモを馴染ませます。
しっかりと馴染んだら、牛乳を数回に分けてジャガイモと馴染ませて味の確認。
それが終ったら、裏漉し。
コレを通すだけで口触りがまるで別物に。
面倒な作業と思うかもしれませんが、このひと手間が大事な味の決め手。
「よし、こんなところかな」
メインに負けない付け合わせが出来あがったので、忘れずにご飯の準備。
先にやったメインの仕込みも上々のはずなので、あとは蓋を開けてのお楽しみ。
ちょっとゆっくり、お昼を待つとしましょうか。
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