チャーハン
扉を開けると、いつもとはちょっと違う香り。
でも、私はこの香りを知っているので頬が緩みます。
「こんにちは、いらっしゃい」
雅君が変わらずお出迎え。いい香りについニヤリと笑いながら見ると、ニヤリと笑いながら返してきました。
「今日のランチも楽しみだ」
いつものメンバーがそう言うと、
「今日は自信作ですよ」
いつもであれば謙遜してくるのに、今日ばかりはそれもなく。
「何が出るのだろう?」
私一人は分かっているが、メンバーの皆は分かっていない故に余計にワクワクしたまま席に着くと、お水におしぼりが出てきてふぅと一息。
いつもと少し違う空気を感じ取ってか、静かにお昼を待つことに。
お客さんが来たので、ここからは流れ作業。
一気に作れる量は三つが限界なので、七人を三回に分けることに。
器に用意したモノを入れて、ガラスープを入れる前の状態まで作ってから麺を茹でてトッピングもすぐに乗せられるようにカットしたものをそろえてタイマーを準備したら麺を茹でます。
スープを完成させて、麺を湯切り、スープに落として馴染ませて。
トッピングを乗せたらすぐに配膳。
この作業でまず三人分。
戻ってきたら、同じ作業で後四人分を作ります。
「なんというか、作業風景もきれいなものですね」
精霊はポツリとこぼします。
ただ、僕は作業に集中しているので返事が出来る訳も無く。
七人前が作り終って、少しゆっくりする時間が出来たので、大きく一息。
「お疲れ様です。格好良かったですよ」
精霊が声を掛けてきました。
「ありがとう。一段落かな?」
「どうでしょう?とっても美味しかったのですが、スープまで飲んでももう少し食べたいなと思う程には美味しかったので……」
美味しすぎて、まだイケると思ってしまうアレかぁ。
「そろそろ最初に出した人たちは食べおわるから、確認してくるよ」
厨房から客席へ行くと、スープをレンゲで飲んでいるがーさんがこちらを向きます。
「前よりもグレードが上がったんじゃないかい?」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。まあ、自分も好きなものなので少しずつ進歩はしているつもりですよ」
ちょっと配合を変えるだけだったり、一品別の食材を増やしたり。複雑な味わいを作るスープはちょっと入るそれだけでもかなり味が変わってくるので繊細な作業。
それでも日々進化し続けるのも大事な使命だと思って、いつもあれやこれやと考えているのです。
「コレだけ美味しいと、飯物も欲しくなってしまったのだが、作れるかい?」
飯物。と言われたら作るのはアレで決まりでしょう。
「大丈夫だと思いますよ。一人一人前ずつですか?」
「私は欲しい」
「僕も」
「是非。食べたい」
「……(いつも通りに無言で頷く)」
「食べたいけれど、結構お腹も一杯なので少な目で」
「あ、私も少なめで」
「えーっと、少な目二つの普通に五つかな」
がーさんがまとめて返事を返してくれました。
「わかりました。すぐに作りますね」
厨房に戻って、早速チャーハンをつくりましょうか。
ラーメン同様にチャーハンも準備が大事。
ここの厨房はお店の火力があるので、ご飯は出来立ての温かいままで大丈夫ですが、家のコンロだとどうしても少し火力が足りないので、パラパラが食べたい場合はご飯をサッと洗ってぬめりを落として水気を切ったご飯だとパラパラになりやすかったりするのですが、そんな準備は必要なく。最初に数人前一気に作る量のご飯をまずは準備。
卵を溶いて、しっかりと混ぜて白身も切っておきます。
具材はシンプルにネギのみじん切りとチャーシューの角切り。チャーシューを作った時の端っこなどを今日は食べてしまったので、普通に角切りに。
色合いもかねてで、ちょっと贅沢に見えるのでなるとも同じく角切りに。
具材は最悪卵とネギだけでも問題はありません。
寧ろ人によっては黄金チャーハンといわれるシンプルイズベストな考えもあるので一概に何が正解とは言えず。
すべての具材の準備が整ったら、中華鍋やフライパンを火にかけてサラダ油をちょっと多いかなという程度温めます。
家のコンロで鍋から白い煙が出るほどと言われても、そこまで温かくなる前にアラートがなってしまうので、ある程度フライパンが温まったらそれで十分。
ここからは一気に。
鍋が温まり、油も温まったらまずは卵。
高温で卵がふわっとしてくるので、ちょっと油もパチパチと跳ね怖いかもしれませんがぐっと耐えて、スクランブルエッグを作る感じで箸や木べらで卵に空気を混ぜ合わせます。
卵に火を入れすぎるといけないので、半熟トロトロの卵の状態でご飯を投入。
ご飯と卵を混ぜ合わせて、全体的に炒めます。
ここで塩コショウの味付けをしてから、残りの具材を入れて、もう少し炒めます。
最後の仕上げにガラスープ、ネギ油、チャーシューの煮込み醤油で香りと味付け。
煮込み醤油が無ければ普通の醤油で問題なし。
醤油はご飯や具材ではなく鍋肌へ。香りが更に立つのでお勧めは鍋肌。なのですが、醤油味をしっかりと効かせたい時はかけてしまっても問題なし。
味に偏りが出やすいので、煽るなどで全体に回してください。
「出来た」
こんな感じで今日のラーメンの時の具材を使ったチャーハンの完成。
まずは三人分出来たので、よそって配膳。
戻って同じ作業を繰り返して、残りの四人分もつくると一段落……のハズだったのですが。
「また、後から、こんな、美味しそうな、モノが、出て来るのですか!?」
ズイ、ズイ、ズイと威圧感を伴って精霊が。
「いや、ラーメンに比べたらチャーハンはサイドメニューというか……」
「こんなにいい香りのモノがサイドメニュー?何を言っているのです?というか、私の分は?また、無いのですか?」
まくし立てるように精霊は近づいてきます。
「いや、まぁ、その……」
ちらりと客席側を見ると、まだ皆さん食事中。
「分かった。今すぐ作るからちょっと待っていて」
「え?本当ですか?」
声色?トーンが一つ上がった声で精霊が聞いてきます。
「うん。すぐ、作るから」
「ここで待っていますね」
目の前に凄い存在感を出しながら、精霊がふよふよと浮かんでいるのですが、ちょっとしたプレッシャーを感じるほど。
急いで一人前を作って、お皿で提供するまでそのプレッシャーをヒシヒシと感じました。
今回も読んでいただきありがとうございます
目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです
改めてありがとうございます
毎日投稿頑張ります




