バターライス
「さて、今日は何かなー?」
入ってきて一言目にそんな事を言われながら、がーさん達が今日も来ます。
「今日は、ハッシュドビーフにしました。ゆっくり楽しんでください」
「それはまた美味しそうだ。勿論おかわりは出来るね?」
「ええ。量はしっかりと作りましたから」
そんな話をしながら、お客さんが入ってくるのでいつもの準備。
お水におしぼりを出して、厨房に戻ったら作っておいたサラダを先に御盆にのせて、フォークと共に出しに行きます。
客席から戻ったら、ハッシュドビーフを作ってお客さんに。
「んー、いい香りだ。じゃあ」
「「「「いただきます」」」」
皆さんが食べ始めて、少し静かに。
ちょっと珍しいなと思いますが、ここのところ結構パーティーのような感じで楽しい食事が続いていたので、それが基準になって今日が静かに感じますが普通に考えれば今日の方が普通なわけで。
「静かな食事も悪くないけど、なんか不思議な気分」
ついポツリと、口に出ます。
「やっぱりそう思います?」
独り言のつもりでしたが、精霊が居たようで反応してくれました。
「んー、わいわいした場所での食事が多かったから、あまり静かな食事って記憶にも無くてね。不思議な感じなんだよ」
「ご家族での食事がわいわいだったのです?」
「えーっと、まぁそんな感じかな。逆に、一人でご飯って言うのに憧れる位な感じだったけど、実際は結構違って」
「違う?というのは?」
「一人だと静かすぎてそわそわしちゃうって言うのかな?一人で静かに食べるのに憧れていたからやっとできたと思ったら、それが思っていたよりも楽しくなくて。慣れもあるかもしれないけど、僕は大人数での食事の方が好きみたいだよ」
ファストフード店に一人で食べた時はそれほど何かを感じる事は無かったのですが、いつも家族でいくお店に一度一人で行ってみた時は凄く不思議で。
家の近くの中華屋さんなのですが、ランチ時だったのでランチを頼んで食べているのですが、いつも家族だとみんなで食べるおかずを頼んでみたり、スープを頼んでみたり、足りないときには追加でラーメンを家族で分けてみたり。
セットはラーメンに炒めものと餃子のいつも通りで凄く美味しいランチなのに、何か少し物足りなく感じました。多分、一人が僕にはそれほど合わないのを感じたのかなと。
「まあ、逆に一人が好きな人も居るから僕は僕。人は人だからね。因みに精霊は、そんなにまだ機会が無いからわからない感じ?」
「私もそうですね。人と一緒の方がいいですね。雅やがーさん、皆さんとの方が楽しいです。まだ、あまり皆さんと一緒に食べてはいないので、今の所の気持ちの話ですけどね?」
精霊も人との方がいいと今のところ行ってくれるのは嬉しい所。
少し静かなご飯でこんな事を思うとは思っていませんでしたが、その静寂はそろそろ破られるようで、客席から声が。
「はーい」
返事をしていくと、皆さんがおかわりを所望の様子。
「これはあれと一緒だよ、えーっと、そう、カニ!!」
こともなげに、ガーさんが言います。
「カニですか?」
いきなりで何の話か分からなくて聞いてみると、
「そう。色々と食べているけど、結構多いのはカニの時によくあるんだ。こっちも静かだったから、君たちの話が少し聞こえてね?」
ニヤリと笑いながら、がーさんはつづけます。
「お店で食事が始まって、皆わいわいがやがや喋っていても、カニが出て来るとみんなピタっと喋るのを止めることってあるじゃない?あれと一緒。喋るよりも食べたい気持ちの方が先に出て来るわけさ」
「うんうん、その通り」
火の精霊付きの人が頷きます。
「そのぐらい美味しいのよ。今日のランチも」
光の精霊付きの人が同じく褒めてくれました。
「あぁ、ありがとうございます。すぐにおかわり用意しますね」
ちょっとだけ呆けるように、こんなに直接褒められるとも思っていなかったので、顔にも嬉しさが出てしまっていた様な気はしますが、思わずにやけているのは自分でも分かります。その顔で厨房に戻ってしまったので、
「行くときよりも笑顔ですが、何かありました?」
精霊に聞かれるほどにはニコニコなのでしょう。
「うん、今日のランチも褒められてね」
「それはそうでしょう?いつも雅の料理は美味しいのですから。私もこの後の特別なものが楽しみですよ」
「うん。もう少し後でね」
先程までは自分の失言で作ることになってしまったという気分だったのですが、ここまで褒められると嬉しさの方が上回って、まあいいかなという気分。
おかわりを出して皆さんの食事が終ったら、自分たちの番。
オムライスの様に具材を入れるのも悪くありませんが、それも少し手間。
ですがそのままのライスを包むのも味気ないので、一手間加えることに。
使う材料はシンプルにバターとニンニク。
ニンニクは皮を剥いてみじん切りにしてあげるだけ。
「よし、ぱぱっとやるか」
フライパンを少し温めてからバターを落としてそこへにんにくのみじん切りを入れて火を弱めで少し香りがたつまで炒めます。
そこにご飯を入れて、全体を混ぜ合わせていきます。
全体が混ざってきたら、香り付け程度の醤油を全体に回しかけて出来上がり。
「何やらいい香りがしますー」
精霊もこの香りには逆らえない様で、ふよふよと近づいてくるので、
「一口どうぞ」
スプーンで出来立てをそのまま一口分。
「んー、バターと醤油のいい香りと味です」
出来上がったばかりのコレを二枚のお皿に分けたら、次は卵。
同じフライパンでちょっと横着をして、半熟のスクランブルエッグを作ってそのままご飯の上に乗せて、あとはハッシュドビーフをかけるだけ。
お客さんに出したモノとそこまでの違いはないのですが、それでもちょっと贅沢な一品に。
「コレが雅の言っていたモノですね?」
「そそ。というか、このバターライスだけでも十分に美味しいのだけど、今日は簡単なに作ったからねぇ」
今日はニンニクだけを入れたのですが、タマネギを入れて少し甘味も追加する美味しいバターライスもあるのですが、ちょっと今日は気分が乗らなかったのでしませんでした。
「私達だけの特権ですね」
「まぁね。さ、お昼を済ませよう」
「ですね。いただきます」
「いただきます」
二人でゆっくりと食べるランチ。
ちょっと静かで、でもそこで一緒に食べる仲間がいるという安心感。
今日のランチはいつもよりも笑顔で食べていた気がします。
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