出汁巻卵
「言われてはいたけど、少し物足りない……かな」
それは食べ終ってすぐにがーさんがポツリと言った一言。
その言葉に周りの皆さんも小さく頷きます。
その割には、皆さん一回はご飯のお代わりをしていた様なのですが、それは気にしないという事でしょうか?
「そこでなのだが、一品お願いしても?」
僕は厨房から呼ばれて、その話を聞くことに。
「なんでしょう?」
「塩焼きも照り焼きもとっても美味しかった。でも、少し足りなくなってね」
追加の注文という事ですね。
「出来るものでしたら」
僕の言葉に、
「ちらっと厨房を見たけど、今日の御浸し用に出汁とったのでしょ?」
「ええ。まだありますよ」
「だったら、出汁巻卵をお願いしても?」
なるほど、ちらっと厨房を回し見ていたときに出汁がある事を確認したのでしょう。
ただ、アレは中々に難しい料理。
「出汁の量が多くなると失敗しやすいので、ある程度の量になってしまうかもしれませんけど、いいですか?」
先に確認を取ることに。
作る工程で卵と出汁を合わせるのですが、出汁の量が増えれば増えるほど難易度が上がります。出汁が増えるほど味は良くなるのですが、その分難しい。まあ裏技を使えば、それも何とかなるのですが、流石にそれを出すわけにもいきません。
「構わないよ。皆は?」
がーさんが周りに聞くと皆さん欲しいという事で。
七人前の追加。で、すむわけも無く……。
「何か作るのですか?」
厨房に戻れば、精霊が凄い勘をもって聞いてきます。
「追加の出汁巻卵を作ることになりそうでね」
「出汁巻卵ですかぁ。美味しそうですね」
その声は、私の分もと言っているようなもの。
「精霊のだけちょっと別でもいい?」
「美味しいのであれば、構いませんよ」
「分かった。同時進行だけど、すぐにやるよ」
追加の出汁巻卵を作っていきましょうか。
材料はシンプルに卵。調味料も色々という事は無く、出汁、薄口醤油、みりん、砂糖と基本的なモノだけ。もし、薄口醤油が無ければ醤油でも大丈夫。
卵を溶いて、白身をしっかりと切って。場合によっては泡立て器で卵を溶いても構いません。しっかりと卵を溶いたら、もう一つ別のボウルを準備して、出汁、醤油、みりん、砂糖を混ぜたものに卵を入れて一緒に混ぜます。
少しだけ手間にはなりますが、しっかり混ぜた卵液をいちどザルで濾してあげるとちょっと残っていたカラザなどがとれるのでさらに口当たりは滑らかに。
卵液が準備出来たら、卵焼き用の四角いフライパンの準備。
少し多めに油を敷いて、この後に何度も使うのでキッチンペーパーに油を染み込ませたものも用意。
これで後は焼くだけ。
この後の焼きは度胸が大事。あまり早すぎて半熟ではなく生というのも良くないのですが、もう少し大丈夫かな?の時点で火は結構通ってしまっているので、イケると思った時に躊躇わない事。
卵液にお玉を準備したら、焼きましょう。
しっかりと油を敷いた卵焼き器を火にかけてしっかりと温まったのを確認したら、お玉一杯分を卵焼き器に。いい音で卵が焼けていくので怖がらずに菜箸などで大きな膨らみを潰しながら、ある程度半熟の状態で片側に纏めます。一回目は形をしっかり調えられなくても大丈夫。手前か、奥か。自分の得意な方に寄せたら、油の沁みたキッチンペーパーで油を塗ってもう一度最初と一緒でお玉一杯分を卵焼き器に。寄せた卵焼きを菜箸でひょいと持ち上げて、下に卵液を潜らせたら同じ作業。二回目からは塊を乗せるように一度ひっくり返してあげて、そこからは同じ作業を繰り返す形で。もし、菜箸で勢いを浸けて形を整えるのが難しいのであれば、ターナーやフライ返しなどの面の大きいモノを使うのもアリ。大体五回程やったら、出来立てをまきすの上に置いて形を整えます。
ここで形がある程度整えられるので、最初から絶対四角にとあまり気負う必要も無く。
「よっし、できた」
出汁を自分のできる範囲の最大でやったのでかなりトロトロで結構難しくはありましたが、何とか出来ました。
「雅??私の特別な奴は?」
お客さんの分が出来たので一安心をしていたのですが、精霊としては自分の分が無いまま。ジトーっとした目で見られているような感じで精霊が言ってきます。
「今作るからちょっと待って」
とりあえず一人分をそのまま客席に持っていく前に、精霊の分の準備。
と言ってもこっちはかなり簡単。
出来ている卵液をタッパーに入れて、少量のサラダ油も入れて軽く混ぜて蓋を少しずらした状態のタッパーをレンジで温めるだけ。500Wで二分~二分半。
タッパーの中でどんどん膨らむのでタッパーの中の液量は三分の一程度が理想。
結構膨らむのでたっぷり入っていると容器から溢れてしまいます。
客席に一人分の出汁巻卵を出して、戻って来るとタイミングよくレンジが完了の音。
しっかり膨らみ、裏側を見て固まっていれば大丈夫。さっきと一緒でまきすでちょっと形を整えて出来上がり。
こっちの場合は出汁がさっきの卵液より少し多くても固まってくれるので、多少は楽な部分も。
「はい、精霊の分」
「おおぉ?雅がソレで作ったよりもふわふわに見えますが?」
「まぁ、作り方が違うから。でも味は変わらずだからイケると思うよ?」
精霊の分も作ったので、とりあえず他の人の分を作ります。
この作業を後六回。
終ってみると結構時間がかかっていたようで、いつもより一時間程遅い時間に。
「お魚も美味しいですけど、本当に出汁は美味しいですね」
お客さんが帰って、片付けを始めると精霊が言います。
「出汁のおかげでお味噌汁もいつも美味しいもんね」
「本当に、出汁って素晴らしい」
今日はこの後いつも通りに木刀作成。
そろそろダンジョンも気になってきていて、入ってみたい気持ちがあるので今週は情報収集をしたい所。
精霊が色々と知っているみたいなので、その辺りもゆっくり話を聞いてみたいので、
「出汁もいいけど、ダンジョンについてそろそろ色々と教えてもらいたいけど、いい?」
聞いてみると、
「ええ。今日はいつも通りに草原ですか?」
「うん」
「では、その時に」
この後ゆっくりと話が出来そうです。
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