インスタントラーメンアレンジ
燻製のお肉を齧りながら、ちょっと水分補給をしてまた作業に戻ります。
後は磨き作業だけなので、土のやすりをつくってひたすら磨くだけ。
ちょっと口寂しくなったら、口に肉を放り込んでガムの様に食べるつもりで噛み始めるのですが、いい味なのですぐに呑み込んでしまう感じ。
「病みつきになるって言っていたけど、本当だね」
「意外と、この干し肉もずっと噛んでいると旨味が出てきていいですよ。まあ、口に入れてすぐは少し辛いですけど」
精霊はどうやら干し肉も美味しく食べる方法を見つけたようで、じっくり長く食べる分には干し肉の方がいいらしく、最初が辛いというので、頭に浮かぶのは少しだけ勿体ない事。
夜のシャワーが微妙になる可能性はあるのですが、折角なので挑戦はしておきたい。
微妙な心の葛藤はあったのですが、食べる事の方が欲求としては上。
「ちょっと試してみてくれる?」
土のやすりを一度止めると、小さめでいいので小さいぬるま湯を作ります。
「湯の玉」
ふわりと湯の玉が出来たので、そこに干し肉を入れて少し湯の玉の中でじゃぶじゃぶと表面を洗う感じ。
「さ、食べてみよう」
干し肉は少し柔らかくなって、水分を取り戻した感じ。そして色合いも若干和らぎ、肉っぽく見えなくもありません。
「お?コレはいいですね?」
「うん、いけるね。塩っ辛さは減ったけど、噛むと旨味も出て来る」
燻製とは違った肉の旨味がじわっと出て来るのですが、最初の時と違い塩の味はマイルドに。これならば食べられます。
「でも、やっぱり普通にご飯が食べたいですね」
精霊はそう言います。
「まぁ、夕飯はしっかり作るからさ」
「おや、もう考えてくれているのですか?」
いや、まだだけど。
この流れはあまり良くないな。
「まだ考えてないよ。とりあえず木刀作ってからね」
「えー、考えてくださいよー。ほら、干し肉も美味しくなったのですから」
「いや、美味しくなったけど今はもういいから」
口元へ肉をグイグイと持ってこられても、今はもう十分。結構塩を取っているのが逆に気になるところで水分の方が欲しい感じです。
何とか精霊をなだめすかして、木刀作り再開。
とりあえず今日はこの一本をそのまま作りきりたい所。
精霊も考えながら作るといえば、それ以上は何も言ってこなくなって静かなもの。
日が傾き始めて、夕方というよりはコレから夕方という様な時間には木刀も出来あがったので、休日も終わりの空気。
「そろそろ帰りますか?」
木刀が出来あがったのを横で見ていた精霊が声をまたかけてきます。
「だね。さて、夕飯をどうするかなぁ」
「家まで距離もあるので分かりますが、それを作りながら考えなかったのですか?」
言われてみるとその通りなのですが、
「何かやっている時は、一つに集中した方がいいって教わったから。あれもこれも出来る人はいるけど、僕はそう言うタイプじゃないからね」
世の中にはマルチタスクであれやこれやを同時に出来る人が多くいて、場合によってはそれが出来ないと仕事として厳しい職場がある事も分かっています。
ただ今日、今に至ってはそう言う必要性もありません。
昨日の朝の様に時間が無く、それでも料理を準備しないといけない場合であればやれるかやれないかではなく、やるしかありません。ですが、今はそう言う状況でも何でもないので無理することはないのです。
「ですが、訓練になるのでは?」
「なるかもしれないけど、休日に無理してそれをする必要ある?」
「ないですね。うむむ、まあ今夜の料理も期待しておきます」
これ以上喋っても勝ち目がないと思ったのでしょうか?それとも夕飯の量が減らされる心配か?どちらとも分かりませんが、精霊はポンと消えてしまいます。
持って来た荷物も少ないので軽く一纏めにして、最後に片付けと確認をしていつもの草原を後に。
「今日もイイ時間に戻って来たね。っと、それも出来たようだね?」
南の扉のいつもの門番さんが木刀をちらりと見ながら言います。
「ええ。何本かやっとできた感じですね」
「ほう?何本かあるのかい」
「ええ。魔法の練習で作っているので」
「そうかい。っと、ああ次の通行人か」
そう言って、扉を通してくれたので会釈をして家路へ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
挨拶をして、木刀を置いたら手を洗って。
何となくで作ろうと思える料理も浮かんだので、厨房へ。
「おや?雅ぁー」
「どうかした?」
「ええ。これが」
厨房にはポツンとサッポ○一番塩ラーメンが。そしてその上には一枚ポストイットが張られています。
「ん?」
”昨日は突然で色々とありがとう。疲れているだろうからコレをどうぞ“
がーさんの名前が下にあるので差し入れでしょう。
「これがあるなら、サクッと作るか夕飯」
別の何かを作ろうとしていたのですが、インスタントラーメンがそこにあるので今日の夕飯はこれでいいでしょう。
「えーっと、たしか使う材料は……」
休日で父が偶に朝食とも昼食ともいえる様な時間に作っているのを何度か見た味を折角なので作ることに。
タマネギ、キャベツ、ジャガイモの準備から。
タマネギは皮を剥いて適当に薄切り。キャベツは食べやすく千切り。ジャガイモは皮を剥いたら、千切りの感じであまり大きくならない程度に切ります。
切った野菜を全て鍋に、水を入れてしっかりと沸かします。
しっかりと沸騰したのを確認して、一応ジャガイモに火が通っているのを確認したらインスタントラーメンの出番。
麺をそのまま鍋に入れて、袋に書いてある通りに麺に火を入れます。ついでにこのタイミングで卵も投入。
麺がほぐれていい感じになったら、火を止めてスープの素を入れて味の確認。
「精霊出来たよー」
一人分を二人分に嵩増しできる上、野菜もとれるしスープまで美味しく飲めます。
そしてコレを一人で食べたことは一度も無く、いつも父と半分こ。
結構大きくなった時にも二人で分けた、ちょっとだけ懐かしい味。
「これはイケますね?」
「うん。美味しいよね」
食べて思ったのは、自分が作っても父さんの味にかなり近い味になっていた事。
まあ、インスタントラーメンの性能がいいというべきでしょうけど。
少し懐かしさを思い出すラーメンの味。
ちょっとだけ地球が恋しくなりました。
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