豚バラ肉のマヨポン炒め
厚揚げを皆さんが楽しみ終わった頃、時刻はお昼というよりは夕方前。
残っていたピザ生地はシンプルなプレーンピザかおつまみにもいいチーズピザにしてしまったので残りはゼロ。
やることはやり切ったって感じです。
まぁ休日が一日つぶれたわけですが、そんなに問題という感じも無く。
というのも家が結構賑やかだったので、人が多い方が落ち着く性分。
こんな感じの賑やかな一日というのは実はかなり楽しめています。
「いやぁ、あれほど美味しいとは思わなかったよ」
客席ではまだ厚揚げの話をしている模様。
「本当にね。だってこれ、今食べてもあの美味しさにはならないよ?不思議よね、同じモノなのに」
勢いで二つ三つと食べていても、後でと少し残る分もあるわけで。それを食べた人がアレ?という顔でさっきほどの美味しさが無い事を伝えます。
「そしてまぁお酒に合うね。こっちのピザもまだイケるし」
飲みながらも食べている人も居るようで、まだまだ楽しむ感じの声。
「本当にすまなかった。今日はありがとう」
片手に水を持ったがーさんが頭を搔きながらこちらへ。
様子を見る感じ、客席から下げるお皿も今は無いのでしょう。
「いえいえ。最初はビックリしましたけど、発酵や水抜きを手伝ってもらったのでこちらこそいろいろとありがとうございます」
事前準備が無かったので、発酵も水抜きも自分だけでは絶対に無理な事をやって貰えたので、今日が成り立った部分はかなりあって。こちらとしても感謝なわけで。
「一応みんなから軽く紹介をと言われているが、どうする?」
「紹介ですか?」
「そう。各自の家族に知人。色々皆好き勝手連れてきているからね」
軽く言いながらも、がーさんが上手い事やってくれたのはよくわかります。子供の声はしますが、厨房には一切入ってこず、いつもの知り合いも何かの拍子にこちらに来るかと思いましたが来る事は無く。
小さい子供の興味というのは自分も覚えがありますが、ある程度抑えが効かないモノ。
ましてや今日の様なパーティーで自分の作ったピザが焼ける瞬間など見たいに決まっています。
「すぐやめるつもりもないですし、別に今日はいいですよ」
「ん、わかった。じゃあ今日はこのままって話しておくよ」
「すみませんがお願いします」
「いいって、いいって。いきなりだったのに流石だよ。じゃあ話してくる」
片手をあげてがーさんが厨房を出ると入れ替わる様に精霊が姿を現します。
「楽しかったですか?」
「うん。ワイワイしたこの感じは凄く楽しかったね」
「客席にいなかったのにですか?」
「あー、そうだね。えっと……」
説明をしようとするとちょっと難しいのですが、少し確認してみますか。
「精霊は今回のパーティーが初めて?」
「はい。客席でも私を認識できるようだったので、楽しくあれもこれも食べていました」
「それは良かった。えーっと、なんといったらいいかな。ちょっとよくわからないかもしれないけど、お祭りをする時の準備が楽しい感覚って言うのがあるんだけど……」
「お祭りの準備が楽しい、ですか?」
「そう。その感じだから厨房で僕も楽しかったんだよって話なのだけど」
精霊にはいまいちピンとこなかったかもしれませんが、学生時代の学園祭などの準備が楽しい感覚。お祭りの裏方で神輿を担ぐ人達が主役だとすればそれを裏で支える黒子の役割をして得る、誇りのような感覚でしょうか。
勿論パーティーを楽しむのが一番なのですが、そのパーティーを成功させたという裏の楽しみ方というのでしょうか。僕は今日それを感じて、それを一言で表したら”楽しかった”という感じなのです。
「んー、経験が少なすぎて何ともですが、楽しかったという事でいいのですね?」
「そそ。あとでちょっと寂しく感じるかもしれないけどそれも慣れるといいモノだから」
コレだけ賑やかだった一日を過ごすと、お客さんが帰ったあとには静けさと寂しさを感じるかもしれませんが、それも少しずつ慣れてくるもの。
人がいるという楽しさは、人が居なくなって初めて分かるもの。これもまた経験とマスターに教わったのを思い出します。
「寂しくはならないと思いますけど、そういうモノですか」
「そういうものだよ。っていうか精霊はどんな用で?」
「あ、忘れていました」
がーさんと入れ替わりで来た精霊も何かしら用があったのでしょう。
確認をしてみると、
「今日のお夕飯はどうしましょう?」
…………。
マジか。
本気と書いてマジと読む、マジか!
数秒時が止まったようにピタリと止まる空気。
「お腹へったの?」
もう一度確認の様に聞きます。
「今はそれほど。ですが、もうすぐ夕方。お夕飯はどうするのかなと」
えーっと、今お昼食べていたよね?というかさっきも厚揚げをやたらと饒舌に語っていた声も客席側から聞こえた気もするけど、このタイミングで夕飯の確認?
これは正直に言うべきでしょう。
「まだ、考えていないよ」
「そうなのですか。今日は朝から美味しいものばかりで楽しいので、あ、これが浮かれているという奴ですかね?」
まぁ、君は常に浮いているから浮かれているで間違いはなさそうだけど?
あ、そう言う話じゃなくて?
夕飯かぁ。コレから夕飯を考えないといけないのかぁ。
ピザの残り、ジャーマンポテト、サラダ、厚揚げ。
残ったものでも十分な気はするけど、別の何かをもう一品?
流石にご飯を炊いたり、麺を茹でたりそういう作業が多そうなことはあまりやりたいとは思いません。
となると、レンジで温めるぐらい?
頭の中であれやこれやと考えていると、アッサリが食べたくてこってりも食べたくて。
「あー、一品浮かんだ」
「ほほぅ?それが今日の夕飯で?」
「うん。ご飯か冷凍のうどんと一緒でいい?」
「ええ。期待しています」
浮かんだ料理は簡単なモノ。
使う材料も豚バラ肉のしゃぶしゃぶ用でオッケー。
厚揚げの時に刻んだネギが残っているのでそれも後で一緒に掛けることにして。
ちょっとだけ面倒だけどこれでボリュームが変わるのでここだけはしっかりと。フライパンにごま油を敷いて、一枚ずつにペラペラと剥しながら豚バラ肉を焼きます。
味付けは少しだけ塩とコショウで。
肉の色が変わってきたら、ポン酢とマヨネーズをかけて火にかけてさっと炒めたら出来上がり。
お好みで白ごまを振って、刻んだネギをのせると色合いもばっちり。
お客さんが帰って、お店が一気に静かになってから食器をある程度洗ってから作ったのですが、味はサッパリだけどこってりという不思議な感じ。
面倒だったので冷凍うどんを温めて一緒に僕は食べて、精霊は温めたご飯と一緒に丼ぶりのような感じで。
洗い物もフライパンぐらい。ただ、油が跳ねるのでちょっとそこだけが面倒程度。
何故か最後に一気に疲れたような休日の一日目が終りました。
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