厚揚げ
お酒の解禁を皮切りに、ピザの方は一段落の様子。
調理したままだった食器やお皿類をこのタイミングで一気に洗えました。
そして、思っていた以上の消費だったのでシンプルなピザもあまり残すことも出来そうにありません。まぁ、それ以上に生地が残ったとしてもウィンナーロールを作ろうと思っていたので、余ることはないのですが……。
「何か今おいしそうなものを思い浮かべましたか?」
精霊はいつの間にニュータ○プになっていたのでしょう?人の思考を感じ取って質問をしてきます。
「あぁ、ウィンナーロールってお菓子というかつまみ?というか、そんなことを思い浮かべただけで……よく気が付いたね?」
迂闊に想像も出来ないとなると結構大変なのですが、まあ仕方ありません。
「作らないのです?」
「生地が余ったら作ろうと思っていただけだからね」
がーさんに言えば生地はすぐにできそうですが、そこまでして作るものでもありません。
作り方としてはいたって簡単。
ウィンナーにピザ生地をあまり厚くならない様に巻きつけるだけ。
出来たモノを、オリーブオイルを敷いたフライパンでコロコロと回しながら焼くだけで出来上がり。キャンプなどでピザを作って生地を持ち帰るのが面倒な時などになるべく食材を無駄なく使うのにも役立つエコメニュー。
「作らないのですか。もう少し食べたいところでしたが仕方ないですね」
結構な量のピザを食べて、ジャーマンポテトやサラダもさっき食べていたはずなのですが、まだ食べると?
思っている以上に精霊はかなりの大食漢のようです。
「ゆっくり休めているかい?」
ワイングラス片手にがーさんが厨房へ。
「そうですね。ある程度一段落は付いてきましたね」
食器類が全て洗い終わっているのを見たようで、苦笑いをしながら肩を組んできます。
「え、あの……」
この形を僕は記憶の中で何度か見たことがあります。
「済まないが、一品だけ無理を通してもらっていいかい?」
ああ、やっぱり。
マスターがよく苦笑いをしながら、結局頷くときと同じ構図。
こうなると断るのは難しいのでしょう。実際、自分も今断れるとは思えません。
「なんでしょう?」
作って欲しいものは作業としては簡単。
とても美味しいのもよくわかりますが、この美味しさを知っている人が今は少ないとがーさんが言います。
「そうなのですか?お店でも、うちでも何度か食べましたけど?」
「そりゃぁ君の所や、あのお店だったらやってくれるけどねここの皆もこの美味しさは知らない様だから、コレに合わせてお酒も日本酒にするので……ね、ね?頼むよ」
言われたアレに合わせるものは……結構あれこれ用意した方が良さそう。
「分かりました。ただ、折角なのでレンジの時短ではなくさっきの発酵と同じような感じで時間を進める事をお願いしてもいいですか?」
「ん?ああ。そういう事ね。いいよいいよ。そっちの方が絶対美味しいもんね」
「おや、雅何か作るので?」
がーさんと話が決まった頃に耳聡く精霊が聞いてきます。
「そう。今からもう一品。折角だから箸の練習にもなるし、成果をがーさんにも見せてあげたら?」
「ふふん、そうですね。私の箸使いをお見せしましょう!」
精霊は偉ぶるかのようなオーラは出ているのですが、いかんせんただの球体。
オーラの形状からすると腰に手を当てる感じで球体を両手でグイッとしている魔力も感じますが、何しろ見えないので……。とまぁ、精霊は一旦置いて。
「薬味の準備からですね」
個人的にはシンプルなほど美味しいと思っているので、その時に欲しいものを先に。
それは生姜。このすりおろしと醤油の二つだけで他はいらないといいたいのですが、やはり人によって味の好みは違います。
鰹節を用意してみたり、長ネギを刻んでみたり。
最近は食べるラー油を使うのも一つ。あ、大根おろしもあったらいいかな?考えているといくらでも出てくるのでとりあえずこの位で。
「とりあえずこんなところかな?」
ある程度の種類が揃ったら、厨房の自分が使うモノを脇に置いて一応確認。僕が残すのは勿論生姜のすりおろし。あとは気分で欲しくなる大根おろしと長ネギ。最悪そのままポン酢で食べられるので取っておいて問題はありません。
「精霊はどうする?」
「こんなに色々と楽しめるのです?」
「まぁ、一人一つだから六回ぐらいしか試せないかもしれないけど。一応全部試したい感じ?」
「そうですね。折角なので全部試します」
という事で、今準備したものを一式残しておきます。
「あっちに置いて来て、もう一品出ることを伝えてきたよ」
丁度いいタイミングでがーさんが戻ってきました。
メインの準備とお願いをしますか。
お願いの内容はいたってシンプル。
木綿豆腐をキッチンペーパーで包んで、重しを乗せて準備完了。これを最低でも一時間以上。今日は時間指定が出来るというので二時間分でお願いすることに。
「オッケー。さ、渡して」
渡した豆腐は不思議な空間に入って、そしてがーさんがまたそれをとりだします。
「こんな感じだけど、大丈夫?」
そこには二時間経って水分がかなりしっかりと抜けた木綿豆腐。
「十分です。じゃあ、人数分ですかね?」
「かなー。まあ追加も入るかもしれないけどそれもお願いという事で」
「わかりました」
返事をしている間にもう一つの準備。
しっかりと木綿豆腐の水分が抜けているのを確認して、周りの水分もしっかりと拭います。この後は揚げるので、水が残っていると跳ねるのでここはシッカリ丁寧に。
しっかりと揚げるので、油は多め。温度は160~170度。そこに木綿豆腐を入れて、じっくりと揚げましょう。
五分位すると豆腐が浮いてくるので、ひっくり返して反対側もしっかりときつね色に焼き揚げれば出来上がり。
「こんな感じで十分ぐらいずつですね」
「という事は、私の分は結構後ですか?」
一応自分の番を後の方に精霊も設定してくれているようで助かります。
「かな。まあじっくり揚げていくからゆっくり待っていて」
厨房ではゆっくりとした空気が流れているのですが、出来上がりをがーさんが客席の方へ持っていくと、
「なんだこれっ!!!滅茶苦茶うまいっ!!!」
早速一人目が一口食べたのでしょう。
こちらはどういう感じなのかあまりよく知らないので何ともですが、地球でも厚揚げは普通にスーパーなどで買えるので大差ないと思っている人も多いようですが、出来立ての厚揚げというのはちょっと言葉で言い表せない、出来立てにしかない美味さというのがありまして。
買ってきた厚揚げをトースターで温めたり、フライパンで温めると美味しいと書かれているものもあったりするのですが、一線を画すほど。
「私の分はまだ?」
「早く食べたいっ!」
「ぼくもー」
「……(すごい速さで首を上下に)」
この感じは、精霊の番が遅くなりそうですね。
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