酸辣湯(うどん)
お客さんも帰って一段落。
試食した分で結構お腹も一杯になってしまったので、自分のお昼ご飯は抜きでオッケーなのもあって、サクッと洗い物を済ませたら午後はゆっくりと昨日同様に魔法の練習。
「精霊、教えて」
呼べば、精霊もすぐに来ます。
「何をお教えしましょう?」
「もっと魔法を使えるようになりたい。その為の練習方法を教えて」
昨日は三回の魔法で結構疲れてしまいました。
今日はまだ一回も使っていません。
「魔力量を上げるには昨日同様に使い切りが一番いいかと思います」
「じゃあ、あれこれ考えながらまた疲れるまで魔法を使えばいいって事だね?」
「そうですね。今の魔力量であればお風呂を満たすのは如何でしょう?」
その提案に乗ることに。
ただ、まだ昼を過ぎてそれほどな時間にもなっていないのでお風呂に入ってしまうと、夕方や今日が終りの気分になってしまいそう。
「それでしたら、街の散策をしてからがイイかと」
街の散策か。
昨日は東の市場を見て、南の方も少し散歩した。見ていないのは北と西の方。
「案内してくれた東は市場だったけど、北や西はなにがあるの?」
「西地区は建築資材、武器防具などがあります。また北地区はギルド、及びダンジョン関連の建物が豊富です」
武器防具も気になるけど、ギルドやダンジョン。
そういえば知り合いも言っていた。
「因みに登録などは?」
「可能です。ですが、推奨レベルには達していないかと」
「説明を聞いたりはしてもいいの?」
「可能だと思いますが、私の方が詳しく説明できます」
少しだけ自慢げにふよふよと。
まだ付き合いは短いですけど、ウチの精霊、可愛いでしょ?
「じゃあ、今日は武器、防具でも見に行こうか。ついでにギルドの感じも」
「はい。基本的に外では喋らないようにします」
「よろしく」
という事で今日もお散歩。
家を出て、噴水までは昨日と一緒。どうやらこの家は北西地区の噴水より。
噴水広場まででてから、今日は西へ足を延ばしてみます。
「ほぇー。凄いな。武器は何でもって感じかー」
パッと見てすぐにわかるのは剣。ゲームで見たことのあるような両手剣に片手剣。剣の部分がうねうねしているフランベルジュはかなりいい場所に飾ってあるので価値も高そう。
隣には槍。長いものから短いもの、斧が付いたハルバートみたいなものもあります。
次に弓。隣には矢のコーナーがあって中々面白い感じ。
最後はメイス。多分鈍器系と言われるヤツ。モーニングスターのような鎖でつながれている遠心力も使って殴るタイプのモノもココに統一されているようです。
どうやらそこは武器屋のようで、防具などは無く武器だけ。
「刀はないかぁ」
ぼそりとつぶやくと、店主が奥から反応してきます。
「坊主、刀を使うのか?」
「あ、いえちょっと見たいなと思いまして」
まだダンジョンに入る予定もないですし、もう少し魔法が上手くなってからと思っています。
「刀は基本的にダンジョン産ぐらいだから店には並ぶことがほとんどないぞ」
「ダンジョン産?」
「ダンジョンについてもあまり知らないという事は、新参者か」
昨日の今日は新参者というほかありませんね。
「そんな感じです」
頷くと、武器屋の店主が教えてくれます。
「刀は技術が違うらしくて、鍛冶屋じゃ殆ど作ってない。稀に作ってくれるところもあるが趣味程度。実践には向かんだろうな」
「そうですか。色々とありがとうございます」
色々な武器も手に取って触ってみますが全体的に結構な重さ。コレを簡単に使うには筋力も足りないでしょう。
「もう少し体を鍛えたらまた来るんだな。あと、どうしても刀が見たいならギルドオークションでも覗け。見るぐらいなら大丈夫なはずだ」
「ギルドオークションですか?」
「そう。ギルドの隣の建物で宝箱を開けて換金するところがあるから、そこで当たりがあればみられるだろうよ」
「ありがとうございます。行ってみますね」
挨拶をして武器屋を出て、隣を見ると防具のお店。
ただ、あまり防具は見当たりません。
皮の鎧や鎖帷子ぐらい。
「防具は取り置きが少ないのかな?」
武器と違いサイズを合わせる都合があるのかあまりありませんが、今の気分は刀。
周りに人も少ないので精霊に声を掛けます。
「ギルドオークションの場所まで案内お願い」
ふよふよと精霊が一度縦に動くと先導してくれます。
昨日の東から南に行くときは結構迷ってしまいましたが、精霊が案内してくれるので困ることなく北へ。
北の一番端の方にダンジョン入り口と書かれた看板が見えて、その隣。
かなり賑やかなお店と反対側も同じく賑やかですが結構な武装をした人達。多分これからダンジョンに向かうのでしょう。
ダンジョンの入り口も見えてきたので目を向けると、一人用から多人数用と何種類か入り口があります。その入り口とは反対の所から今まさに冒険を終えたパーティーが。
「宝箱は四つか。四人いるし丁度いいだろ?」
「順番で決めましょう」
四人が四人一人ずつ手に宝箱をとると、
「じゃあ開けるぞ、せーの」
宝箱を開けると少しばかり眩しい光。中から浮き上がる様に出てきたのは、肉?
「またダンジョン肉かー」
三人は肉が出てきて、最後の一人に目を向けると、
「お、当たりじゃないか?」
出てきたのは盾。
早速周りに居た商人が寄っていきます。
「これはラウンドシールドか。いや、魔石付きだから結構いい値段になるな」
遠目で見づらいですが、よくみるとシールドの真ん中に石が。アレが魔石だろうか?
結構な盛り上がりを見せていて、昨日はそこまでの人込みに居なかったのもあって少しだけ人に酔ってしまったみたい。
「何となくわかったし、帰るかな」
ギルドを後にします。
「ただいまー」
家に着いて、魔法の練習と思ったのですが結構疲れることは分かっているので先に夕食をどうするか決めることに。
厨房に残っているのはお昼の残りはスープぐらい。そのまま飲んでも美味しそうですが、味を変えるのもよさそう。
カリフラワーとコーンの入ったあっさり目のスープ。卵は落としてないので、ある程度は持つ気はしますがあまりサッパリしすぎもつまらないので味をうちなおすことに。
スープは鶏ガラと塩に少量のコショウが入っている程度。一度温めなおしたら、お酢、醤油、少しだけ砂糖を入れて味を整えて、あとはラー油で辛さも。
水溶き片栗粉を入れて少しだけとろみをつけて、お昼と同様に卵を落としてスープの準備は完了です。
「精霊も後で食べる?」
「勿論です」
あとは冷凍のうどんか中華麺を茹でたらスープにいれ出来上がり。
ここまでできていれば疲れていても大丈夫でしょう。
「じゃ、まずはお風呂の準備かな」
お風呂場に行って湯船に水を。
手順は昨日と一緒。まずは魔力を感じて、湯船一杯の水を想像します。
「水よ」
今日は目を開いて言葉に出すと手のひらの先からもこもこと水が浮き上がります。
魔力で水とつながっているからか水の量が増えると重たくなるのも感じます。
湯船と同じぐらいの大きさになったので湯船の上に操作して、プチンと魔力線を切ると水はその場に落ちます。
「おお。一発で成功だね」
「おめでとうございます。ですが、ここからが難関です」
そういうと精霊が説明を始めます。
「ここに火を入れるのですが、弱いと消えます。強すぎると水が蒸発します。魔力量の調節と緻密なコントロールの両方が習熟できるので頑張ってください」
言われる分には簡単ですが、やることはなかなか難しそう。
言われるままにとりあえず火を想像して右手の人さし指の上に火を作ります。
「もう少し大きめかな?」
最初に想像した火が思っていたよりも小ぶり。今から大きくは出来ないのでそのまま風呂に火を入れてみると、一気にジュワーっという音と同時に火は消えてしまいました。
「これは難しいね?」
「頑張ってください」
言われるままに二回目、三回目と火を作ってみますが簡単に消えてしまいます。
「四回目って、ああ、昨日よりもう一回多く使えそうだけど、これが成長?」
「そうです。まだ初期段階なので回数は倍や数倍、なじみ具合によってですが今日辺りは昨日の倍ぐらいまでは出来るとは思いますが、あまり無理はしないでください」
昨日の今日でも回数がしっかり増えるのは嬉しい事。
ランニングのように数ヵ月やっていってやっと距離が延ばせてくるのも達成感としてはりますが、即日に回数が増えるのはやりがいもあるもの。
「火よ」
四回目の火も簡単に消えてしまいますが、湯船に手を入れてみると結構あったかくなってきている感じ。
疲れるのが先か、温めきれるのが先か。
結論から言えば、疲れるのが先だったのですが、人肌程度の温度までお風呂は温かくなりました。
ゆっくり浸かるには少しぬるいですが、疲れた今の状態では丁度いい感じ。
そのままお風呂を済ませたら、簡単な夕食。
結局疲れているので冷凍のうどんをレンジで温めて丼に。先程作った酸っぱくて辛いスープを温めなおして掛ければ、うどんでつくる酸辣湯の出来上がり。
もちろん精霊の分も同じ要領で作って横に。
「「いただきます」」
声をそろえて食べ始めます。
少し酸っぱくて、ピリッと辛い。
食べおわる頃には魔力切れの怠さも少しだけ緩和しているので、洗い物を済ませて後は寝るだけ。
今日もなかなか楽しい一日でした。
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