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冷やし出汁トマト

 今日はおにぎりのお土産があるせいか、皆さん食べおわるとすぐに帰ります。

「ごちそうさまっ!これがあれば色々と話もしやすいよ」

「確実にこれは自慢できる」

「家に帰ってもまた食べられる幸せがここに……」

「……(無言でニコニコと笑顔になりながらおにぎりの入っている袋をぎゅっと握る)」

「ふっふっふ」

「どうやって食べようかしら」

 がーさんも喜んでいる感じですが、それ以上に六人がかなり喜びを示してくれるのでこちらとしても凄くうれしい感じ。

「箸の件は気長にやって」

 がーさんからそうアドバイスだけを頂いて、七人は帰っていきました。


「うーん、箸はやっぱり難しいですね」

「そっか。じゃあとりあえず今日は外行こう。気分転換も兼ねて」

 と言っても、いつも通りの片付けはまだあります。

 自分の分のさんまは無くなりましたが、おにぎりが一個はあるのでまあいいかなという所。そして練習中の精霊のさんまはやはり食べかけで結構残っているので、それは先程の皆さんのと一緒でおにぎりにすることに。

「雅、さっきもちらりと見ていたのですが箸の使い方を見ていてもいいですか?」

 興味を持ってくれているのは嬉しいので、頷いて魚の身を綺麗にとっていきます。

 それを精霊は見ているのか、少し無言の静寂。

 綺麗に身を取ったら、軽くほぐして他の具材と混ぜておにぎりに。

「綺麗なものですね」

「そう言ってもらえると嬉しいね。まあゆっくりやっていこう」

「はい」

 精霊の返事もそれほど落ち込んでいる感じでもなく、楽しそうなのでついでに夕飯の下準備だけしておくことに。

 使う食材はトマトだけ。

 鍋でお湯を沸かして、トマトは少し勿体ないのですがヘタを取って湯剥きをして皮を綺麗に剥きます。

 あとはコレを出汁に入れるだけ。

 出汁は濃くても、薄くても大丈夫。

 父が面倒くさがりで、よく市販の白だしを少しだけ水で薄めてそこへトマトを入れてお酒のつまみにしていたので、やっている事はそれと一緒。

 後はこれを今日は出汁の鍋ごとなので蓋代わりにラップをして。父は大体ジッパー付きの保存袋に入れて冷蔵庫で冷やしておくだけ。

「よし、これで夕飯の支度もおっけー」

 片付けをしてみると今日は七輪を出していたので、片付けるものも結構な量。

 いつもよりも時間はかかりましたが、それでも問題なくゆっくりできる時間は確保できました。

「精霊、いくよー?」

「はーい」

 作りかけの木刀を持って、今日は磨きの予定です。

 南の扉の所でいつもの門番さんが会釈をするので会釈をこちらも返して扉の外へ。

 今日もイイ風が吹いて、草原が迎えてくれたような感じ。

 いつもの所へ歩いて移動して、少しだけ休憩をしてから木刀を磨き始めます。


「なにやら皆さんに相談をしていたようですが、いい返事がもらえたのですか?」

 磨き始めるとずっと無言ですが、精霊がふと尋ねてきます。

「あー、うん。子供じゃないからそのまま話すけど精霊は箸を使うの嫌にならない?」

 磨きの手を少し緩めながら、そこにいる精霊に聞いてみます。

「今のままでは少し難しいですが、そこまで嫌にはなっていませんね」

「そっか。僕は一回嫌になってね」

「雅が、ですか?」

「そうだよ。まあかなり小さい頃だけどね」

「その時はどうしたのです?」

 あの時は、確か……

「箸を使わないでスプーンとフォークあとナイフだけで食事をしていたよ」

「え?」

「箸を使うと怒られるからね。だからそれ以外を使っただけだよ」

 そう。どうしてもとりづらいモノを刺し箸で取ろうとするとそれは良くないと言われ、箸に残っているタレを舐めるとそれも良くないと言われ、どうしたらいいのかとなった時、食事がほんの少しだけ嫌になりました。

 すると、すぐに母は席を立ってスプーン、フォーク、ナイフを持ってきて言います。

「箸だとマナーでいけないから、こっちが上手くなればいいの。食べることが嫌になると人間は困っちゃうから、もう少しお母さんも食事を考えてあげるから、ゆっくり上達しなさい」

 その日の食事は肉じゃがでどうしてもジャガイモが重たくて取れなかったのですが、フォークだと簡単にさせるので食べやすく、ただギュッと刺し過ぎるとぼろぼろになってしまうほどには煮えていたので、刺すというだけでも色々な力加減が必要という事が分かって、その力加減が少しずつ上達していくと、箸を使ってもモノが簡単に取れるように。

 指の力加減を覚えていくと意外と箸は簡単で使い慣れていくとかなり楽だと分かる頃には箸が普通に使えるようになりました。

「と、まあこんな感じで小さい頃にあったから。少しだけ心配でね」

「その心配はありがたいですが、無用ですね」

「なんでさ?」

「私の手は魔力で作っているので、雅の言っていた力加減は多分そう遠くないうちに覚えられそうですから、嫌いになる前には上達して見せますよ?」

「それならよかった」

「それとですね、私は多分食べることが嫌にはなりません。だってコレだけ美味しいものが食べられるのに、食べるのを止めるという選択肢はありません。あと、さっきのさんまをほぐすのを見ていても思いましたが、綺麗な所作は美味しい料理に凄く似合うので、ご両親の言っているマナーというのが大事な事もよくわかります」

 子供じゃないのは分かっていましたが、それでも自分が思っていたよりもかなり上からの意見。精霊が僕の箸使いを見て、それを綺麗だと言ってくれたことも嬉しい話。

「ありがとう」

 何といえばいいか、色々と頭の中で考えたのですが出てくる言葉は一つだけで。

「いえいえ。気にしてくださってありがとうございます」

 お互いにありがとうと伝えあって、また僕は木刀をゆっくりと磨く作業に。

 そして、作業が終る頃には、

「今日の夕食はお昼の残りですか?」

 いつもの精霊の調子に戻っています。

「そうなるかな」

「何か洗い物の前に作業をしていたアレは?」

「出すよ。この時期、あれあると滅茶苦茶いいんだから」

「トマトがですか?」

「そう。トマトが凄くいいんだよ!」

 アレの美味しさは食べていないからそんなことを。

「話していたらお腹減って来たからすぐに帰るよ!」

 いつもより少しだけ速足で家路に。


「出汁に入れただけのトマトを冷やしたものがそれほど?」

 家に着いて、「ただいま」「おかえり」といつものやり取りをして、手を洗ったらすぐに夕食の準備。

 お昼の残りのおにぎりをレンジで温めたら、お茶碗に。

 出汁入りのトマトはそのままお椀に。なのでお椀には透明な出汁スープとまるっと一つ分の湯剥きされたトマト。

「なんというか、質素にも見えますが?」

「食べれば分かるから。ほら、いただきます」

「はい、いただきます」

 たった数時間とはいえ、出汁にはトマトの旨味も入るのでいつもの出汁よりも野菜の旨味が感じられます。そして噛みつくととろっとろの中身が出汁を多少吸っていて、トマトだけど少し出汁という絶妙な感じ。

「これは、なんとも、言えない」

 自分も精霊も今は片手にフォーク。箸だと刺さないと重くて難しく、挟むとかなり柔らかいので簡単に崩れてしまいます。

「この出汁をご飯にかけると、冷やし茶漬け。かけないでそのまま汁として飲んでも全然オッケー。ね、このトマトは滅茶苦茶いいでしょ?」

「ええ。滅茶苦茶美味しいです!」

 箸やフォークやナイフでの食事マナーも大事ですが、最後はやっぱり美味しく楽しく食べる事も同じぐらい大事。

 顔があるわけではないので分かりませんが、精霊も多分笑顔で食べているはず。

 同じく自分も美味しいく笑顔で。

 そんな夕食を今日お楽しく食べました。




今回も読んでいただきありがとうございます

目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです

改めてありがとうございます

毎日投稿頑張ります

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― 新着の感想 ―
[一言] 我が家のプチトマトがようやく収穫できそうな、まだできなさそうな。 赤く実ったら絶対やってみよ!
[良い点] サンマにもーーウロコがーー( ˙-˙ ) 初めてしりました。魚なんだから有るのは当然かも知れないけどーー気にした事もなかったーー。勉強にもなります。
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