だいたい親子丼
熱燗と揚げたてのナゲットを持って客席へ行くと笑顔でこちらを認識。
「これは美味しいな」
軽く上げる右手には徳利が。
「ええ。がーさんもいつもそう言いながら飲んでいましたよ」
年齢的にも飲んだ事は無いのですが、調理でお酒は使う事が多いので、それほど抵抗はありません。新しく持って来た徳利から一杯だけ注ぎます。
「ビールやワインはよく飲むが、これは初めてだ」
「日本酒ですね。こっちにはないのかな?原料はお米なのですけど」
日本酒は作ったことが無いのであまり詳しくは分かりません。
「本当に君のいた世界というのは色々と先に進んでいるみたいだね」
クイッと猪口のお酒を煽って、早速ナゲットを一つ、そのまま口へ。
「こりゃぁ、美味いな!」
「それはよかった。さっき食べていたコレのアレンジですけどね」
白和えのお皿を回収しながら、ケチャップ皿も置きます。
「え?コレがソレ?」
食べる時によく見ると、ナゲットからほうれん草がちらりと出てきますが、それもフードプロセッサーで細かくしてしまったので分かりにくいもの。
食感も鶏肉が強く出ているので、豆腐はグッと身を隠した感じ。
「酒とコレだけでいくらでも飲めそうだ」
「そのままもいいですけど、このケチャップとマスタードもあいますからどうぞ」
「まじかっ!」
一人の大人の男性と頭ではわかっているのですが、まるで子供。
ケチャップを付けてパクリと食べて喜び、マスタードを付けて食べると目をカッと開いて少しビックリ。表情もコロコロと変わり、少しするとお酒をまたちびりと。
厨房に戻ろうと思いましたが、マスターもよく言っていたので一応同じセリフを真似て伝えることに。
「日本酒は燗酒だと“いきなり”はあまりありませんが、それでも一気に酔いが回ることがあります。お酒の後にはお水もしっかりと飲んで、調整してくださいね」
「ん、そう言う酒なのか。分かった」
言葉を聞いてすぐ、水を一気飲み。
すぐにお水を足してから厨房に戻ります。
「予想よりは食べてないかな?」
それでも結構な量が減っていますが、精霊も一人楽しく食べたようで、
「ケチャップも悪くないですが、調べたらバーベキューソースなるものもあるみたいですが、雅、作らないのです?」
「バーベキューソースは作ったこと無いなぁ。ハンバーガー屋さんで買うと付いてくるイメージしかないや」
「作ったことが無いのです?」
「わざわざ作る事は無かったかなぁ」
「ほほぅ?」
精霊に何か変な事を言った気はしないのですが、いつもと違う動きをされると少しばかり不安に。
チラリと精霊の方を見ると、マウスポインタの様になっています。
「簡単そうなので、作ってください。材料は……」
精霊はどうやら調べていたようで、言ってきます。
「え、本気?」
「本気ですよ。さ、お願いします」
グイグイと背中を押して厨房に立たされると、
「材料はケチャップ、ソース、醤油、砂糖、おろした生姜とニンニクですね。コレを混ぜるだけでいいそうなので、簡単ですね?」
言う精霊としては簡単。作る僕としてはすりおろしが二つもあるので少し面倒ではありますが、まあこの程度であれば範囲内。
「はいはい。ちょっと待ってね」
おろし金で生姜とニンニクをおろしてそこに言われた通りの材料を入れて混ぜるだけ。
砂糖が溶けにくいので、少しだけ温かくして溶かします。砂糖は別の材料にしてもいいかもしれませんがしっかりと混ぜれば混ざります。
「これがバーベキューソース?ですかね?」
「うん。なかなか近い味だと思う」
ハンバーガー屋さんの味と一緒かと言われれば結構離れている気もしますが、自家製と考えれば悪くはない味。
少し付けて食べてみると、これはこれでかなりいい感じ。
「イイですね。って、あれ?この気配」
精霊はまたナゲットを食べながら何かを感じたようです。
玄関が開く音がして、その方向へ足を向けたのですが誰もおらず。そのまま一度厨房に戻って、出来立てのバーベキューソースを持って客席にいくと、
「がーさん?」
「一人酒をしている風のが居たからね。おいしそうなモノも食べているし、一緒に食べたくなってね」
「燗酒、付けましょうか?」
「頼む。あー先に猪口と水を早めに頼む。おしぼりは勝手に使うよ?」
「分かりました。ナゲットも追加で揚げますよ」
ありがとうという返事を後ろに、厨房に戻るとさらに減ったナゲット。
「精霊、そのぐらいにしてくれないと夕飯作れなくなるかも」
「がーさんの分を減らせばいいでしょう?」
「お客さんの分は減らせないよ?」
「えー。美味しいのにー」
熱燗の準備をして、お猪口とお水を出してまたナゲットを揚げます。
がーさんがいるので一人酒に来ていたお客さん事は任せることに。
自分と精霊の二人分を想定していましたが、二人追加となれば炊いた方がいいのでご飯を炊く準備も。これでシメも問題ないでしょう。
揚げたてのナゲットを持っていくとがーさんがピッチャーに氷と水を入れたものが欲しいというので、お水のおかわりも自分の手を離れたので揚げることに集中出来ます。
結局三十分以上は揚げていた感じ。
途中にお酒とナゲットの追加が一回ありましたが問題は無く。
調理も一段落なので、客席の方へどんな様子かも込みで見に行くと、
「風のはどうして今日、一人で?」
「気にはなっていたんですけど、風の精霊達が最近面白いって騒いでいたのでその話もしてみたくて。で、少し時間を潰してお店に戻って来たらいない。それに入れない。僕達が入れない場所って言うのは殆どないので、こんな事は久しぶりですよ」
苦笑いをしながら、二人が話しています。
「一段落かい?」
風のと言われていた一人が言います。
「ですね。あとはお二人がたべたくなったらシメを作るぐらいですね」
「なんと。いきなり来たのにシメまであるのかい?」
「ご飯もそろそろ炊けるので、何時でも大丈夫なはずです」
「重ねてありがとう。この酒、本当に気が付くとかなり効くね?」
「そういえばこっちのに飲ませた事は無かったか」
がーさんがぽつりとこぼします。
「何もわからずにがーさんと一緒でいいといったら、知らないものが出てきてビックリだったが、これは美味しいな。場合によっては昼にも飲みたいぐらいだが……」
「提供だけで手一杯なので、一人では難しいかもしれないですね」
「「そうかぁ」」
なぜかがーさんもがっくりしていますが、仕方のない事ですからね?
「さて、あまり遅い時間まで居ると迷惑だろうから、シメをお願いしていいかい?」
「ゆっくり飲んで構いませんよ?」
お店でバイトをしていた時も結構遅い時間まで、ああ一応十時前には帰らないといけないと言われていましたね。
「君が飲めるようになったら、そうさせてもらうという事で今日は食べてお暇するよ」
「お気遣いありがとうございます。すぐ作りますけどゆっくりしてください」
「では、もう一本だけ!追加で」
お二人がニヤリと笑って追加をしてきたので、
「はい」
返事をして厨房に燗酒を付けるのもあるので戻ると、
「そろそろお夕飯ですね?」
ご飯が炊けたのを見て精霊も聞いてきます。
「うん。お客さんの分と一緒にすぐ作ろうか?」
「それもいいですけど、もうちょっと待ちます」
「どうしたの?」
うちの食いしん坊に何かあったのかと思ったのですが、
「一緒に食べるのは夕飯ぐらいですから、結構つまみましたしまてそうです」
一緒に食べる事を優先してくれたのは凄くうれしくて、ただつまみ食いし過ぎて今はお腹が一杯と聞こえるので嬉しさも半分な感じ。
「わかったよ」
返事をしたら、シメを作りましょう。
使う具材はタマネギとキャベツ。
タマネギは食感重視だったら厚めにして別に気にしないのであれば薄切りで。
キャベツはちょっと大きめにざく切りで。
丼ぶり用の鍋にガラスープを入れて、キャベツもタマネギも一緒に少し煮ます。
ナゲットはちょっと大きいので、半分に切って野菜が全部しんなりしたら入れて、後は卵を掛けて蓋をして一分。火を落として中身を見たい気持ちをグッと我慢して今のうちに丼ぶりにご飯をよそって、あとは出来立てをかけるだけ。洋風のだいたい親子丼の完成です。
色合いと味を考えて、海苔を少し散らせば出来上がり。
「お待たせしました、だいたい親子丼です」
「だいたい、親子丼?」
出来立てを見て聞いてきたので、
「ええ。ナゲットに鳥が入っているので親子丼でもいいのですが、他にも色々と入っているので“だいたい”です」
いつもであれば箸なのですが、お酒も入っているのと食べやすさから今日はレンゲ。
「「いただきます」」
お二人が食べ始めたので、どうかなとそのまま少し食べる所にいると、
「こんな親子もありかぁ。美味いねぇ」
「野菜もとれるのがイイね。味も濃すぎず、薄すぎず。うん、最高なシメだ」
喜んでもらえたようでよかった。
後は自分達。
ちょっと遅い夕食前に、ナゲットをつまみ食い。
遅いといっても、いつもよりも少し遅いだけなので一般的にはそこまで遅い時間ではないので気にすることも無く。
夕方にあったいきなりの訪問も楽しく過ごすことが出来ました。
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