チキンナゲット
お客さんが帰ったら、自分と精霊のお昼。
いつもの様に片付けが優先ではありますが、パスタが茹っているので先に精霊の分だけでも出すことに。
「ナスもいい色ですし、トマトチキンも美味しそう」
精霊は喜んで食べ始めます。
その間にまずは片付け。静かになった客席からお皿を重ねて洗い場に。
全てのお皿を水に浸けたら自分も少し遅いお昼。
「スープもあるし、パスタ無しでご飯と食べるか」
出し忘れていたので、精霊にビシソワーズをだしながら自分はストックの冷凍ご飯を温めます。
カレーやシチューと一緒のような感じで、お皿の脇にご飯をそのまま添えて食べてみますが中々いい感じ。
「おや、パスタにしなかったのですか?」
「この後動くこと考えたら、ちょっとパスタじゃきつすぎる気がしたからね」
「では、そろそろ粉チーズも一緒に楽しみますかね」
精霊は器用に粉チーズを掛けて、楽しみ始めたようで、
「おぉぉ。これは素晴らしい。偶にツンとくる酸味がなくなってトロトロとまろやかな口当たりに」
何処で覚えているのか、コメントが結構面白いのが最近の楽しみ。
「それはよかった」
美味しいと言ってもらえるだけで作った側としては十分に嬉しいもので。
お昼が終って、自分たちの食事もおわったらいつも通りの自由時間。
「今日もいつも通りですかね?」
精霊が聞いてくるので、
「かなぁ?」
木刀作りも切りそろえる日と磨きの日と分けているわけではないのですが、仕事終わりの三時間前後でやっているので、キリの良い所が丁度分けられている感じ。
木刀も三本位出来てきたので、少しだけ慣れを感じるように。
「今日は磨きかな」
作りかけの一本を持っていつもの草原へ。
南の扉でいつもの挨拶をして、人がそれほどいないいつもの場所。
木陰に座って、土のやすりを作って木刀を磨きます。
木を磨く音と風の音。
コレだけ広い場所にいるのに聞こえるのはその二つの音だけ。
自分でやっているので眠気はあまり生まれず、心地よい音で集中出来ている気がします。
土のやすりも慣れて来ると目地を自分で調整できるようになって、魔力を切って作り直すことも無くなり、消費が少しだけ減った気がします。
よく言えば洗練された感じとでもいうのでしょうか?
ゆっくりとした時間が流れ、ある程度木刀も磨き終われば次第に頭の中は夕飯を考えることに。
「お昼どうにも食べたくて作ったけど、さっきも食べ忘れちゃったしなぁ」
何故か急に食べたくなった白和えは結構な量が残ってしまいました。
お客さん達に出すタイミングを逃してしまったのも原因かもしれませんが、それ以上に今日のメニューにはちょっと合いそうになかったのも仕方のない事。
「アレをどうにかするとして、さてどうするか……」
そのままもう少し食べて、後は何かちょっと変えればいいかなと考えますが、すぐに思いつくことも無く。
まあ、家に帰って精霊と話をしながらゆっくり作るのも悪くないので一応一声かけておくことに。
「夕飯は少し時間がかかるかもしれないけど、いい?」
「何か作るのです?」
「いや、思いついていなくて」
そのままに言います。
「今日のお昼は結構食べたので、ある程度は我慢できそうですよ?」
「ん。それならよかった。何かいいの思いつかないかなー?」
そんな感じに出来た木刀を持って家路につきます。
ゆっくりと木刀磨きをしていたのもありますが、少しだけ遅い時間になると南の扉の周りも賑わって、夕飯のタネになりそうなお店もちらほらと。
ポテトのフライをつまみにお酒を楽しんでいる人達、一仕事を終えて着替えもせずに楽しそうに飲む人たちを横目に家の前に着いたのですが、今までにない事が。
「あれ?あの人」
そこにいたのは、お昼にがーさんと一緒に食事を食べにくる人の一人。
「何処に行っていたんだまったく。やっと来たな」
両手を腰に当てて、少しばかり怒りの表情。
「この時間、何時も出ているのか?」
「ええ、毎回絶対にというわけではないですけど」
答えると、大きなため息が返ってきます。
「入れるか?」
「あ、はい」
家の扉を開けて、入ってもらう事に。
手を洗って、とりあえずいつもの客席へ案内。料理を出す予定も無いのですが、おしぼりとお水はいつもの癖で出すことに。
「何か忘れものですか?」
思い当たる節が無いので、予想を立てて聞いてみます。
「いや、一人で飲みたくてな」
「うちのお店でわざわざですか?」
「コレだけ美味いものを出してくれるからな。いきなり驚かせてみようかと思って」
驚いたのはその通りで、寧ろどうしようかなという所。
「作ったものも無いので、時間はかかりそうですけどそれでもよければ」
「そ、そうか。いつもは来ると話していたな」
予想外だったのか、少しだけたじろいでいるようですが気にしても仕方ありません。
「とりあえず、がーさんがお店で飲んでいたのと一緒でいいですか?」
「おう、ソレで頼む」
言われてすぐに準備をするのですが、少しだけそれでも時間はかかります。
鍋でお湯を沸かしている間に、徳利にお酒を入れてお酒の準備は完了。
ついでに白和えをそのまま箸休めに出せば、少しは持つはず。
「そうだ、白和えにアレを入れて……」
お酒を出すことになって思い付いたのはちょっとしたアレンジの一品。
お酒が温まったので、お盆に乗せて白和えと一緒に。
「どうぞ。ちょっとコレから調理していますので……お一人で大丈夫です?」
こっちのお店にはテレビやらラジオやら一人の気を紛らわせるものがあるわけではないので少しだけ心配になって聞いてみます。
「一人酒には慣れているから大丈夫だ。というか、これは?」
大丈夫だと言ったばかりですが、大丈夫かな?
「日本酒の燗酒です。熱いのでちびちびとやってください」
そう言って、とりあえず猪口へ七分ほど注いで右手で飲むように促します。
「おう、いただきます」
お酒は飲みなれているのか、一口で慣れた様子。
厨房に戻って早速作るとしましょうか。
洗う手間を考えると少しだけ面倒ではあるのですが、お客さんをあまり待たせるのもいい事ではないので、フードプロセッサーの準備と油の準備を先に。
フードプロセッサーに白和えを入れて、追加で入れるのは鶏肉。ひき肉があればそのままで、なければ普通のお肉を小さめに切って入れるだけ。
追加で入れるのは卵、小麦粉、少量の油。味も少し入れたいので、塩やガラスープを入れるのもいいですね。
味は入れなくても、ソースを付けて食べる形にしてもいいのでここは好みで。
しっかりとフードプロセッサーで混ぜたら、深めの鍋で油を熱して、スプーンなどで一口サイズに掬って揚げていきます。
「イレギュラーがありましたが、これが夕飯ですか?」
ただいまの挨拶も出来なかったのでどうしたのかと思っていたのですが、精霊はそこにいたようで、出て来たようです。
「いや、これで揚げたモノをもう少しだけ加工するよ」
「なるほど。まだ少し時間がかかりそうですね?」
「うん。いきなりのお客さんでびっくりしちゃったけどね。待たせているし、今日はつまみ食いしていいよ」
「本当ですかっ!」
つまみ食いに適したコレを前に”待て”と言っても難しい事は分かっているので、許可を先に出すことに。
「その代わりある程度の量は残す事、わかった?」
「勿論です」
こんなに信じられない返事というのも珍しいのですが、ある程度残さない事には困りそう。どうにかする方法を考えないといけないと思いながら、ナゲットを揚げます。
「すまねー。そろそろなくなりそうだからもう一本同じの頼むわー」
客席からお酒の注文が。
「はーい」
と大きな声で返事をして、お酒を徳利に入れて温めることに。
ちょっとだけ夜が長くなりそうな気がします。
今回も読んでいただきありがとうございます
目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです
改めてありがとうございます
毎日投稿頑張ります




