カニカマ入りオムレツ
「今日のお昼はなにかなーっと、こんにちは」
「こんにちは、いらっしゃい」
がーさんがいつもの様に最初に入って、その後ろをいつもの六人が入ってきます。
昨日の様に立ち止まることも無く、席に着いて行くのに合わせておしぼりとお水を出すと、厨房へ戻って調理再開。
鯵を揚げながら、餡を温めなおすだけなのですが中々バランスよくとは行きづらいので餡の方はかなり弱火に。
先に揚げる方から。
そして全員分揚げ終わったら、お皿に盛って。
ご飯とシジミの味噌汁をよそったら今日のランチの提供を。
「今日は鯵の甘酢あんかけです」
見た目以上のボリュームのある一品なので、食べ始めると結構ゆっくりするかと思っていたのですが、すぐにがーさんが呼んできました。
「どうかしましたか?」
僕が聞くと、
「マスターに聞かなかったかい?コレを出すときは卵を聞くかどうかを」
と、言われます。
卵を聞くかどうか?
多分お店で出すときは確認をしていたという事だと思うのですが、僕が居た頃にはそれが無かったのか、もしくは気が付かなかったのか。
「すみませんが、分からないです」
正直に言うしかないので、それを言うと、
「面倒を掛けるけど、おしえてもいいかな?」
がーさんが聞いてきました。
「是非、教えてください」
卵を聞くという意味、何となく思いつくものはあったのですが、多分ソレをやると精霊が反応しそうな気がします。
「甘酢あんかけの時にお店の常連はすぐにオムレツか具入りの卵焼きを頼むんだ。それが焼けるまではこの魚をゆっくり食べて、出来上がりに残っている餡を掛けてなんちゃって天津飯みたいにして二度おいしく食べるんだよ」
やっぱり。
「なるほど」
頷きながら僕が納得します。
「では、卵を皆さんに聞いた方がいいですかね?」
「是非頼みたいが、中の具に贅沢は言わないからカニカマを入れてくれ」
がーさんが言います。
「カニカマ?なんだそれは」
火の契約者ががーさんに聞きます。
「じゃあ、がーさんと一緒で」
風と水と光の契約者さんはすぐに乗ります。
「お前らは聞かないのか?」
周りを諭す様に言いますが、
「どうせおいしい。私も」
いつも無言な土の契約者さんもそれだけ言うと二つ頷きます。
「シンプルに卵だけでも?」
闇の契約者さんが言うので、
「大丈夫です」
それだけ言うと、
「じゃあ、俺もシンプルでいい」
という事で、卵焼きを七つ作ることに。うち五つはカニカマ入り。
「あ、大丈夫。冷蔵庫開ければすぐにカニカマ出て来るから。あと、カニ缶を探さなくていいからね?これはカニカマの……なんていえばいいのかな、食感?いやカニっぽい感じ?あれがいいんだ。本物じゃない事が大事だから、よろしく頼むよ?」
「わかりました。すぐ、取り掛かります」
という事で厨房に戻って、卵焼きの準備。
卵を出す為に冷蔵庫を開けると、目の前に何故かカニカマ。
がーさんのサービスなのか、準備がいいというべきなのか。
卵もカニカマも準備が出来たので、フライパンを温めて準備を進めます。
卵焼きはいつも通りなので、一人卵は三個程。
綺麗に均一な黄色になって欲しいので白身をしっかりと切っていきます。
味付けは塩を少し。そして少し固まるのをゆっくりにしたいので、牛乳も加えます。
どういうのがいいのかわからないので少しだけ迷いましたが、カニカマは三等分に切って適当に手でほぐして卵へ。
プレーンの二人の分はカニカマが無い分少しだけ塩を多くするか、少し迷いましたがマヨネーズを入れることに。
焼き方はいたってシンプル。
しっかり温まったフライパンに気持ち多めの油を入れて、卵を入れたら素早くかき混ぜて空気を含ませます。オムレツでいいと思うので、箸で半分に纏めてあげたら出来上がり。
箸だと難しいようであれば、火に強いゴムベラやターナー等で破けないように纏めればオッケー。
「お待たせしました。オムレツとカニカマ入りオムレツです」
「うんうん、まっていました」
がーさんが喜んでお皿を受け取ると、ご飯のおかわりを。
おかわりのご飯を持ってくると、あんかけにオムレツをそのまま入れて、少しだけ食べづらそうにしています。
「レンゲ、いります?」
「頼む」
短いやり取りでしたが、パッと後ろを見ると手が全員あがっているので、レンゲは七つ。
レンゲを渡すと今度はご飯のおかわりのラッシュ。
「あの、お味噌汁もお変わりあれば……」
などと色々な注文も重なって、少しだけ一人でてんやわんや。
一段落がついたので厨房で一息と思ったのですが、
「雅ぁぁぁぁ」
恨みがましい声。
「ああ、精霊」
こっちとしては一段落なのですが、お構いなしでしょう。
「なぜ、あんな、隠し玉が、でて、くる、の、で、す?」
少し離れた距離に居た精霊は一歩ずつ詰め寄るかのように言葉を区切りながらグイグイと迫ってきます。
「いや、あれはがーさんが提案しただけで。元の予定にはなかったし」
最初から作るつもりがあったのであれば、試食の時に言います。
「ですが、ですが、あんな、美味しそうな、モノが……」
スーパーボールの様な形なのでただ地面に落ちていくようにしか見えないのですが、さながらがっくりとうなだれたような感じを受けるのは一緒に何日も過ごしたからでしょう。
「わかったから。お客さんが帰ったら作るから。ね?それでいいでしょ?」
「本当ですかっ!?」
多分笑顔なのでしょう。顔は無いけど、何となく分かります。
「ただ、お客さんが帰ってからね?」
「ええ。勿論!」
コレだけで気分がよくなってくれるのは助かりますが、一息つくつもりだったので逆に疲れた気がします。
自分の分もお昼はまだなので、それほどの手間ではない事を考えればまあいいかという所。寧ろ自分の分は最初から丼ぶりにするのもいいかなと。
ちょっと大きめの丼ぶりにご飯を乗せて、カニカマ入りのオムレツを乗せて、あんかけをかけて上から揚げた魚を置く。
「思っているより美味しそうに見えそうだなぁ」
自分の分を想像するだけでも結構良さそうな結果になりそうなので、もう少し頑張るかと気合を入れなおしました。
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