ステーキ
ついて行くと、武器屋などが多く並ぶ西地区。
まだ朝早い時間ですが、ダンジョンに行く人たちは丁度今ぐらいが活動開始時間の様ですれ違う様に反対方面に。
こんな早い時間からやっているのかと思ったのですが、冒険者が動き始める時間にはお店も始まるようで、服のお店も始まっている様。
精霊について行くと、そこは不思議な感じのお店。
雑貨も服も置いてあるのですが置き方も適当、というよりは、ただ上に積み重ねただけ。
お店に入っても、挨拶も無くそれが少し自分にとっては懐かしさを覚えます。
「すみませーん」
「いらっしゃい」
出てきたのはかなり若い店員さん。
「服とか、傘とかその辺りを見たいんですけど」
とりあえず見てからと思ったので、そのまま言ってみます。
「あ、お客さんだったの。適当に見ていいよ。一応傘はそっちの奥で服はその辺りの物と一緒にごちゃごちゃしていると思うから。取れないときは言って」
それだけ言うとまた奥に戻ってしまいました。
考えてみると、買い物はあまりしたことが無く服もタイミングがあるときに選ぶ形で今まで過ごしてきたので、こういうお店でゆっくりというのは殆ど初めての体験。
時間もあるので手にとって見て、中には関連商品のような感じに並べられているものも多数あって、中々楽しい時間を過ごします。
面白かったのは服。
地球と違う材質なのですが、デザインはそれほど変わりなく、アニメや漫画で見た田舎の農民のような恰好やちょっとしたお貴族様のようなものまで。
基本的に必要な服は街に居てもおかしく見られないモノなので、そこまで畏まったものも必要ないので簡単に見つかりました。
傘は精霊がくれた和傘があるので要らないかと思ったのですが、そこにあったのはビニール傘。
「え!?」
それはよくコンビニで買っていたアレ。
「お、兄ちゃん中々鋭いじゃないか。その傘に目をつけるとは」
つい驚いて声を上げてしまったので、店員さんが様子を見に来てくれたようで、声を掛けられます。
「あの、この傘」
「ああ。ダンジョン産だ。よく分からんがただの傘だが一応ダンジョン産でちょっと値段が高いんだ。普通に雨の日にも使えたし、どういうモノなのかわかってないからコレクターアイテムみたいなものだな」
付いている値札は金貨一枚。
元の価値を知っている自分としては欲しいものにはなりません。
「そんなにお金に余裕があるわけじゃないので、僕には無理ですかね」
「まぁ、そういうのが好きな人もいるからな。普通の傘は奥だ」
言われた通りに奥を見れば、かなりの量の傘が。
そこには和傘がずらりと並んでいました。
色とりどりの傘は蕾の状態の花の様で、開くと花が咲き、思わず頬が緩みます。
「綺麗」
「ウチは職人工房からの直送だからな。そこら辺の店にゃ並んでないモノばかりだ。まぁ、そのおかげもあって少々値は張るがな」
値札を見ると銀貨が数枚程度。
ただ、傘はそこまで凄い速さで消耗するものでもないので、そう考えれば悪くない値段。
「とりあえず一本、予備でほしいですね」
選んだのは、紫陽花柄の物。色は緑よりは青に近い、空の様な色。
精霊がくれたのは逆の赤い和傘。
この二本があれば雨の日も悪くありません。
服も決まったので、それと一緒に傘も買う事に。
「まいど」
お会計を済ませて、紙袋に服を入れてもらい手には傘を。
お店を出て少しすると精霊が目の前に。どうやら少し話をしたいようで裏道の方へ。
「いいお買い物が出来ましたか?」
「うん。服も買えたし、貰った傘があるから改めてはいらないかもしれないと思ったけど、傘も買えたし」
「それは良かったです。では、お昼にしましょう?」
やっぱり、思った通りの展開です。
「その様子だと、食べようと思っていた店も決まっているの?」
「ええ。ちょっと賑やかなので一度家に帰って着替えてからですね」
言われるままに一度家に帰って、買ったばかりの服に袖を通します。
家を出て、二度目の家からの外出は朝と似たコース。
北側のダンジョン近くのお店。
朝の時のお店は隠れ家的なお店でしたが、昼は真逆。一回見るだけで記憶に残る様なデカい看板にステーキと書かれているお店。
入ると、すぐに店員が席へ案内してくれます。
お店の作りはファミレスのような感じ。
一人で入ったので、テーブル席ではなくカウンター席へ案内されました。
メニューは結構豊富。肉の色々な部位が選べるようで、面白いのはソース。
数種類のソースから選べるようになっています。
幸いにして、時間も昼には少し早いのもあって人はまばら。小さな声で精霊にどうするのかを聞けそうです。
「ねぇ、何が食べたいの?」
ふよふよと目の前に精霊は動くと、すっと耳元へ。
「このダンジョンステーキがいいです。量も結構あるようですし」
そこに書かれていたのはダンジョン肉のステーキ500gのメニュー。
串を一度食べた記憶はあるので、確か豚肉と魚肉の間の様な触感だったことを思い出します。アレで500gはちょっときついかなぁ。とは思ったのですが、値段は銀貨二枚と銅貨三枚。と、結構いいお値段。
ただ、朝が甘いものだったので今の気分はいける気しかしません。
「それにしようか。あと、そこの調理が見える席にしてもらう事とか言ってもいいかな?」
「大丈夫だったと思いますよ。じゃあ、お願いします」
小さな声で精霊と話を決めると片手をあげて注文へ。
「すいませーん」
「はいー、ただいま」
女性のウェイトレスがオーダーを取りに来てくれます。
「このダンジョン肉のステーキ500gをお願いします」
「ステーキ500gですね。ソースは何にしましょう?グラム数があるので二種類お選びいただけます」
そこに書いてあるソースは五種類。
レモン醤油、ビネガーソース、バルサミコソース、タマネギソース、塩。
最後の一つはソースではない気がしましたが、少し決めるのに迷っていると、
「お勧めは、レモン醤油と塩ですね。お酒を一緒にとなれば、他のソースもいいのですが」
ウェイトレスさんがおすすめを教えてくれたのでその通りにすることに。
「あと、もし大丈夫だったら、調理をそこの席で見てもいいですか?」
鉄板の目の前の所にも席は何人分かあるので聞いてみることに。
「ええ。大丈夫ですよ」
喜んで席を移動すると、お店の調理人が珍しそうにこちらを見ます。
「あまりじっくり見ない方がいいですか?」
「いや、別に構わねぇぞ。ただ珍しかっただけだ」
「そうなんです?」
「冒険者が多いからな。若ぇ兄ちゃんだからこの位は余裕か」
注文が調理人にも入った様で、丁度肉が見えます。
ダンジョン肉はやはり大きく、どうするのかと見ているとフォークとナイフを鉄板へ叩くようにカンカンッと音を立てます。
すると、火が付いたのかじんわりと温かく、熱く温度が上がっていくのが分かります。
「焼き加減は?」
聞かれたので少し悩んでいると、
「お勧めはミディアムレアだな」
「じゃあ、それで」
「あいよっ」
さっと油を垂らすと、フォークで鉄板に油を伸ばしてそこからは一連の作業。肉の表面を一気に焼きます。
「カットは?」
「お願いします」
言うとすぐに、フォークとナイフでカットをして、軽くその肉を転がして焼いていきます。
コロコロと数回転がしているのを見ていたら、さっと店員さんが付け添えも乗っている鉄板を渡し、そこへ肉がどんどん置かれていきます。
「お待たせぇ。ダンジョン肉のステーキだ」
白い湯気は食欲をそそり、肉の焼けるいい香り。
「いただきます」
思わずフォークで一つをさしてそのままパクリと一口。
「美味いっ」
「おぅ。そりゃぁよかった」
目の前で焼いてくれていた料理人もにっこりと笑ってくれます。
次に塩、レモン醤油と肉を付けながら一口ずつ食べたら、精霊の番。
「精霊、順番にいくよ」
ちょっとだけ俯くように口元へフォークを持っていくと、音も無く肉は消えます。
順番は一緒で、塩、レモン醤油と付けて口元へ同じく持っていくと、やはり消えます。
次は自分の番とばかりに塩を口に運んで食べようとしたのですが、先に食べられてしまう事に。
ちょっとした取り合いになりながら、お肉はかなり美味しく食べられました。
「美味しかったです。御馳走様でした」
「イイ食いっぷりだな若ぇ兄ちゃん。まいどぉ」
前に食べた肉とは全然違ったのが不思議でしたが、美味しいステーキのお昼。
お肉たっぷりにポテトとシンプルながらも楽しめるお昼でした。
今回も読んでいただきありがとうございます
目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです
改めてありがとうございます
毎日投稿頑張ります




