ナポリタンオムレツ
風呂敷二枚で作ったリュックの形状になっているモノを背負って、両手には木刀になりかけているものと一本の木材。
「じゃ、行こうか」
精霊に声を掛けると、
「あの、今の作業は何なのでしょう?」
精霊が聞いてきました。
「ん?今の作業?」
「はい。その背中の……」
このリュック、何か変?
「ただの布がなぜそのように?」
「あー、風呂敷って便利なんだよ。もっと大きいものや色々な物を一つに纏める事も出来るし、一つのカバンの様なものにすることもできるし」
頭の中では手持ち鞄にする方法や肩掛けのタイプも浮かびます。
「その布が?」
「うん。こっちの世界ではあまり見ない?」
まあ、あっちの世界でも少し古い文明というか、あまりメジャーなものではなかったのかもしれませんが、うちの家では結構よく使われる技術の一つだったので、ある程度体が覚えています。
「素晴らしい技術ですね。他の方法や色々と勉強がしたいのですが、ええと、風呂敷というのでしたっけ?」
精霊が聞いてくるので、うんと答えます。
「あー、なるほど。うん、ふむぅ」
どうやら何かを見始めたかのように精霊は静かに。
「とりあえず、家を出るけどいいかな?」
「あ、はい。ではでは、いってらっしゃい」
「うん。いってきます」
挨拶をして、家を出て南の扉へ。
両手に木や木刀のなりかけを持っているのもあって、人の目が結構こちらへ向いている気がしますが、気にすることなく。
「いつもより早い時間だね」
いつもの人が声を今日もかけてきます。
「ええ。休日なので。いつもの所で訓練ですね」
「そうかい。それ、は?」
手に持つ木刀を見て言います。
「木剣みたいなものですね。危ないものじゃないですよ」
手にはある程度馴染んでいるので、軽く素振りを見せます。
「ほぅ、木剣ねぇ。まあ、気を付けて」
「はい。ありがとうございます」
軽く頭を下げて、そのまま扉の先へ。
優しい風が草原の草を撫でる様に今日も吹き、さわやかな気分に。
足取りは軽いまま、いつもの所へ行きます。
まずは作りかけの仕上げをしたかったので、次の木刀用の木を置いて、その上にバランスよく風呂敷で作ったリュックを掛けます。
いつも通り座るのは草原。
毎回同じところに腰を下ろしていたせいなのか、少しだけ生育が遅く見えるので逆にここが自分の定位置と分かる感じ。
胡坐をかいて座ると、土のやすりを魔法で作って木刀を磨きます。
無心で、ただ気を磨く作業。
偶に吹く風の音や後ろの林の奥の方からは鳥や小動物の声が聞こえる程度。
一時間が経ち、二時間が過ぎる頃に声がかかります。
「そろそろお昼にしませんか?」
もちろん精霊の声。
「ん、結構時間が経っていた?」
日中というのもあってそれほど日の位置が変わった感じもしないので自分ではあまり分かっていません。
「大体二時間ぐらいでしょうか。それにしても風呂敷は凄いですね。本当にどんなものでも包めてしまうのですね」
どうやら何かを見ていたようで、精霊も興奮冷めやらぬ感じに言ってきます。
「昔の人の知恵だよね。袋は便利でいいけど、布一枚で形に合わせた使い方をするっていうね。習った時はふーんって程度だったけど、慣れてくると本当に便利でさ」
声を掛けながら、おにぎりを取り出します。勿論一緒に水筒も出して、水筒の蓋はそのままコップとして使えるので、一杯分すぐに麦茶をいれると飲み干します。
「ぷはぁ。キンキンに冷えていると美味しいなぁ」
「あ、私にもお願いします」
蓋は一つしかないので、もう一度注いでそのまま手に持っていると精霊がすすすと寄ってきます。
そして、まるで何とかの親父さんがお湯に浸かるような感じ。
一瞬だけ水位は上がったかと思うと、そのままどんどん減って蓋の中身は空っぽに。
「ぷはぁ。ヒエッヒエで美味しいですね」
「飲んだの?」
「ええ。そんなにジーッと見るほどの事でもないと思いますけど?」
いやいや、結構今のも不思議な光景よ?
「いや、いつも食べる時もあまり気にはしていなかったけど、どういう事なのかよくわかっていなかったから。不思議だね?」
「そうですか?まぁ、精霊はあまり食事とかはしないみたいなので。そんなことよりもおにぎりを早くお願いしますよ?」
急かされたので、おにぎりをとりだして、別途海苔だけを包んできたラップから一枚海苔を取り出して、海苔を巻きやすくなる様にほんの少しだけ形を三角に近づけながら海苔を巻いて出来上がり。
「とりあえず、鮭もどきから順番に食べよ」
「ええ」
「「いただきます」」
声をそろえて、パクリと一口。
自分で作ったとはいえ、骨に当たることも無くご飯に振った塩味で飯は美味く、パリッとした海苔はいい磯の香り。白ごまがぷちっと割れて、ふわっとゴマの香りと鮭もどきがいい感じに旨味を伴って口の中へ。
思わず二口目に。無言のまま、気がつけばもう一口、もう一口とそのままおにぎりが無くなります。
「美味かった。やっぱり外で食べるのってちょっと違う感じもあっていいね」
「そうですね。家の中での食事も悪いわけではないですけど、風の感じや自然がいいのですかね?」
精霊も同じような感想なのか、同意してくれます。
「次は、どっちを食べましょう?」
精霊はふわふわと浮きながら、おにぎりを前に浮きながら聞いてきます。
「王道を最後に残す為にも、葉ワサビでいこう」
同じ手順で海苔を巻いて、いただきます。
一口目はあまり先程と変わらないのですが、最後がふわっとわさびの香りに。
二口目からは、少し違っておにぎりを食べているはずなのにお寿司の様な感じ。醤油の味も少しして、ピリッと来るわさびの香りは強すぎず弱すぎず。
「おにぎりだけど、ちょっと違う感じが不思議だね」
「お刺身ご飯の時の最後の感じを少し思い出しました」
精霊が言うので、あぁと少しだけ納得します。
「まぁ、お刺身と一緒にわさびも付けているし、醤油ご飯もわさびの香りしていたからアレと似ているのは仕方ないかも」
ちょっと面白くなりながら、最後の一つに手を伸ばします。
「王道の焼き明太子でしめますか」
「王道なのです?」
「えっと、鮭や明太子、あと最近はツナマヨネーズとか皆が比較的喜んで食べる具材の王道って意味だから、そんなに大したことはないかな」
「なるほど。万人受けという事ですね?」
「そう。でも、万人受けするって事は外しもしないって事だから」
「それは素晴らしいですね」
そんな感じで、三つめも食べることに。
「おおぉ。これは」
食べ始めてすぐに、精霊が唸ります。
「プチプチ、パリッ、ちょっとした焦げの香りも良く、素晴らしいですね」
「うん。もう少ししっかりと火を入れた方がイイかと思っていたけど、丁度よかったかもね」
一応しっかりと火は通っているのですが、若干奥の方が生焼け気味で個人的には食中毒なども考えるとあまりよろしくは無いのですが、味としては結果オーライ。
「ちょっと、危なかったかもしれないけど、お腹とか壊さない?」
確認とばかりに、精霊に聞いてみます。
「あ、精霊はそういう事はないと思います。雅がどうなるか知りませんが」
冷たく言われましたが、食べた相手が問題ないという分にはこちらとしては一安心。
「それならよかった。まぁ、お腹壊さないに越したことはないけどね」
いい休憩になりながらの、お昼はゆっくり楽しめました。
食後というのもあって、ゆっくり昼寝のような感じに寝転んで大きく伸びを。
気持ちのいい風が眠気も誘ってきます。
「ふぁああああ」
大きなあくびを一つ。
このままだと寝てしまいそうなので起き上がって、とりあえず先に片付けを。
風呂敷を一つに纏めて、片手で持ちやすい様にバッグの形に。
食べた時のラップや水筒などを入れなおして、来た時とは違う形ですが帰り支度はこれで完了。
もう一杯、麦茶を飲んで作業の続きを。
二本目の木刀はかなり磨きも終わっていたので、そう時間がかかることなく終わり、三本目の作成へ。
少しだけ嬉しかったことが起きたのはこの時。
ある程度形を整えるためにスパッと切る作業の時に今までは二度に分けていたのですが、一回で綺麗に木が割れる様に。まだかなり細く、丸太を簡単に半分には出来なさそうですがそれでも自分の魔力や魔力操作が上達しているのが目に見えたのでかなり嬉しくなります。
自分の上達を感じながらも、三本目の木刀作成もある程度すると、日もいい感じに傾き始めます。
「そろそろ帰ろうか」
「ですね。今日の夕飯はどんな感じに?」
相変わらずの食いしん坊。
「全然考えてなかった」
「なんですって!?」
かなりビックリしたのか、色もグルグル変わります。
「んー、どうするかなぁ」
前と一緒で穴を掘って、木屑を処理しながらの会話。
お腹は多少減ってはいますが、精霊はそれほど待てなさそうな感じ。そうなってくると手早く作れるものとなりそうですが、何がイイか……。
「そういえば、こっちへ来てすぐにも何か作ったのですよね?」
精霊が聞いてきます。
「こっちへ来てすぐ?」
もうすぐ二週間。来てすぐは、ああ、ナポリタンを作ったっけ。
「その時は何を作ったのです?」
「ナポリタンを作ったよ」
「ほほぅ、ナポリタン?」
こんな感じで今日の夕食が決まるとは思っていませんでしたが、決まったのは助かります。片付けも終わったので、帰るとしますか。
今日は昨日よりは早めに動いているので、まだ扉の周りも夜仕様に変わる前。それでも気の早いお店はあって、美味しそうな香りに引き寄せられそうになりますが、グッと我慢。
「ただいま」
「おかえりなさい」
家に帰ったら手を洗ってうがいをして、荷物を一度片付けていざ夕飯の準備。
二人分なので簡単にパパッと。
雪平鍋でまずはお湯を沸かします。沸騰してきたら塩を振って、乾燥したパスタを。
大きな鍋やたっぷりのお湯でやるように書いてありますが、普通の雪平鍋でも問題はありません。ただ、対流が少ないので、しっかりとその場に居て、箸で麺がくっつかないようにかき混ぜましょう。
ほんの少し芯が残っている程度でパスタは上げます。
湯切りをしたパスタはくっつきやすいので、オリーブオイルでくっつかなくなる様にコーティングをして、パスタの準備はオッケー。
お湯を沸かしている間に、切るのはピーマンとタマネギ、そしてウィンナー
人に出すものではないので、結構手抜きな感じですが、ちゃんとピーマンのタネは取りますし、ヘタも取ります。タマネギは食感重視で適当に切って、ウィンナーも斜め切りで食べやすく。
フライパンを用意して、少量の油を敷いたら全部まとめて炒め始めます。
野菜が全体的にしんなりしてきたら、一度塩コショウで味付けをして、フライパンの上の方へ移動させて、下の方へケチャップをたっぷりと。
ケチャップだけに火を当てるようにして、水分を飛ばしある程度したら野菜をケチャップ側へ。ソースとバターを足して少し炒めたら最後にパスタを入れてしっかりと混ぜ合わせたナポリタンの出来上がり。
このままお皿に盛って完成。という予定でしたが、この間のチキンライスが頭をよぎったので、ちょっとだけアレンジを。
「おぉぉ。これがナポリタン」
出来上がりを察してか、精霊が出てきましたがちょっと待ったと声を掛けます。
「まだ、もうちょっと待って」
やる事はいたって簡単。卵を三つ割って、しっかりとかき混ぜたら塩、牛乳を足してフライパンの準備。
結構多めの油を敷いて、火にかけます。
よく言われるのは白い煙が出るぐらいといいますが、ここだとそれは出来そうですが実家のキッチンはセンサーが付いていたので、適当な温度まで行くと火が弱くなってしまいます。なので出来るだけ温めるという気持ちで、フライパンが温まったら、ここからは時間との勝負。
卵を入れて、すぐに火が入るので箸で空気を卵に含ませます。
三回か四回程度空気を含ませたら、後は真ん中にナポリタンをどんと乗せて、フライパンを前後に数回ゆすって、フライパンと卵がしっかり離れているのを確認。
火を消して、お皿をフライパンに乗せる様に置いて、ひっくり返せば卵包みの完成です。
「出来たよ。ナポリタンオムレツ」
「ナポリタンオムレツ?」
「がーさんの時は普通にナポリタンにしたんだけどね、コレの方が食べやすいでしょ?」
麺類は嫌いではなさそうですがいつも食べづらそうな気がしていたので、一応少しだけ気を使ってみました。
「冷めないうちに食べましょう!!」
「はいはい。じゃあ」
「「いただきます」」
夕飯もお昼同様、楽しく食べられました。
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