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揚げパン

「そ、そんな」

「ズルいっ!」

「何故気が付かなかった……」

 残りの三人は言葉を発することなく、何かを真剣に迷っているようで無言のまま。

「えっと、何をそんなに驚いているのかわからないけど……」

 そう言ったのはがーさん。

 お店の前で一同が会した瞬間の六人の反応です。

「コレ、今日のランチに必要だって言われたパンなのだけど?」

 その言葉に一同が安堵します。

「いや、差し入れをするという基本的な事を忘れていたという事実にビックリしまして」

 一人が言った瞬間に、

「じゃあ、差し入れは基本的に禁止ね?」

 がーさんが禁止を告げます。

「んあ!?」

 禁止されてしまっては先に続けないと自分の口の軽さを呪うように一人が項垂れます。

「そんなことしなくても話せば聞いてくれるいい子だよ?雅は」

「いや、分かってはいるのですが、なんというかこちらとしても頼みやすくなるというか……」

 ごにょごにょと言葉は尻すぼみに。

「まぁ、ちょっと早いけど大丈夫だと思うからとりあえず入ろう?」

 家の玄関をいつもの様に開けて、七人が入っていきます。

「ちょっと早いけど大丈夫?」

 ガーさんの言葉に、

「こんにちは、いらっしゃい」

 挨拶をして、パンの受け取りを。

「はい、これで大丈夫?」

 がーさんが持って来たのは結構な量のコッペパン。

「大丈夫ですけど、量が多くないですか?」

 一人一本か二本で念のためで少し多めでも二十本程度だと思っていたのですが、明らかに三十本を超えているように見えます。

「うん、ちょっとお願いしたい事もあるのでね」

 そういって確認をしてくるガーさん。

「今日のランチを確認してもいい?」

「シーフードクリームシチューですね。給食を思い出したので、コッペパンと合わせてもらうのがイイかと思いまして」

「やっぱりね。そんなことだろうと思ったんだ」

 確信めいてがーさんは頷きます。

「給食といったら、シンプルなコッペパンも悪くないけど、懐かしい揚げパンをお願いしてもいいかい?」

「揚げパン、ですか?」

 僕としてはそれほど記憶にないのですが、リクエストであれば。

「一応、レシピを確認してからでもいいですか?」

「ああ。全然かまわないよ」

 頷いてすぐに、精霊に声を掛けて確認を。

「精霊?揚げパンのレシピ教えてくれる?」

「はい、揚げパンですね?」

 ふわっと出てきて、マウスポインターの様になって少し。

「検索結果が出ました。いたってシンプルなレシピです」

 そういうので、多分出来ると思いガーさんにすぐに返事を。

「大丈夫そうですけど、配膳はどうしましょう?」

「とりあえずコッペパンのままで出していいよ」

「では、先に一度配膳して作りますね」

 嬉しそうにがーさんは客席へ。

 とりあえず、ランチを先にスタートしましょう。


 とはいえ、温めたシチューを大きめの皿によそって、ブロッコリーを乗せてシチューは出来あがり。

 コッペパンもそのまま皿に乗せるだけ。

 フルーツはスイカを齧り付ける形でカットしたモノを。

 大きなスイカが上の方にあって、左側にたっぷりのクリームシチュー右側にコッペパンと、トレーの上は中々にごちゃごちゃした感じ。


「ご注文の一品はコレから作りますから、まずはどうぞ。本日はシーフードクリームシチューです」

 告げた瞬間、

「ご飯はあるかい?」

 男性の一人が言います。

「はい。すぐにご用意しても?」

「頼む」

「他にもいらっしゃいますか?」

 がーさんともう一人が手を上げて、一応少なめでとの事。

 厨房に戻ってすぐにご飯を用意したら、配膳をして戻ってきたら追加注文の揚げパンの作成をしましょう。

「精霊、作り方を教えて」

「はい。油を用意して先程のパンを揚げる必要があります。揚げたパンにグラニュー糖をまぶすので、先にバットなどに準備をしておく必要があるそうです」

 精霊の教え方はやっぱり何かを見ている感じ。

 ただ、シンプルで分かりやすいのでこちらとしても助かります。

「ありがとう。手順で違う所があったら言って」

「分かりました。あ、あと私も出来立てが食べたいです」

「ん。出来たら味見をお願いするよ。それでいい?」

「完璧です」

 パンがもう出来上がっているのでどちらかと言えばアレンジにこれはなるのかと思いながらも、とりあえず揚げ油を準備。

「精霊、コレどの位揚げればいいの?」

「えーっと、十秒から三十秒ですね。揚げすぎると焦げる事もあるそうなので、いいタイミングでお願いします」

 そのタイミングが分からないから聞いたのに、自分で見つけろという事のようです。

 揚げた後は少し油を切る必要はあると思うので、バットと油切りを準備してそれとは別でバットにグラニュー糖をたっぷり入れて付ける準備をします。

 油の温度は菜箸で、ちょっと小さめの泡がぽつぽつ出るぐらい。

 コッペパンを油に落として、十秒。思っていたよりも変化が少ないので、精霊の言葉を疑い始めます。

「精霊、本当に十秒から三十秒?」

「ええ。ひっくり返して反対側もとなっているようです」

 片面の話を両面の話と勘違いしていたようで、少しゆっくり揚げればいいだけなので焦る事は無く。

 とりあえず三十秒でひっくり返して反対側も。

 焦げることなく温まった感じはあるので、大丈夫そう。

 油を切ったら、冷めないうちにグラニュー糖へコッペパンをダイブ。

 まだ表面が熱いのか、ある程度のグラニュー糖は溶けて、飴状の上にはグラニュー糖が付きます。

「じゃあ、熱いと思うけど試食してみて」

 出来立ての一つ目をお皿に乗せてそのまま精霊に。

「いただきます」

 一度火を止めて、その様子を見てみると、

「あまーい!」

 どこかの芸人さんの様な結構大きな声で。

 そしてすごい勢いでパンがヒュン、ヒュンと消えていきます。

「これは、悪魔の、様な、美味さ、です」

 喋りながらも、食べているのか中々不思議なものが見られました。

「大丈夫そうだから、皆さんの分作るかな」

 作業手順は簡単なのであまり油の温度が下がらないように気を配るだけ。最初だけ三本で後は二本ずつで七本。

 出来立てを客席へ持っていくと、ギョロりと一気に視線がこちらへ。

「揚げパンです」

 出した瞬間、皆さんもすぐに手に取って口へ一気に頬張ります。

 口へ入れた瞬間、皆さんが固まったように一度停止。

 少し経つと、次は一心不乱に揚げパンにかじりつきます。

「まだパンはあるよね?おかわり、あるよね?」

 がーさんが聞いてきたので、

「はい。もう一本ずつは確実に「すぐに追加を頼む。出来るなら持ち帰りも」」

 僕の言葉を遮る勢いで、注文が。

「わ、わかりました」

 厨房へ戻って揚げパンをもう一度作るとしますか。




今回も読んでいただきありがとうございます

目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです

改めてありがとうございます

毎日投稿頑張ります

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― 新着の感想 ―
[一言] 小学校の給食で揚げパンが出ると、友達が私の周りでジャンケンしてた。 なぜか揚げパンを食べると次の日学校を休む(熱を出す)。そんな特異な身体を私は持っていたのだ。 美味しかったのに食べれんかっ…
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