★魔力の玉
魔法はチラチラと出てくれているのですが、ダンジョンに潜れるのはいつになる事やら……
「いやぁ、美味しかった」
パンケーキを持っていくと、七人のお客さん共にみんな満足そうで、代表してかがーさんが言います。
「お口に合ったのであればよかったです」
パンケーキが全員に行き渡ると、昨日夜の食事をお願いしたいと言っていた一人が軽く手で呼んできます。
「コースが出来ないわけじゃない事は分かったよ。手間ばかりかけさせてすまないね」
「あ、いえ、そういう事じゃなくてですね……」
「では、今日何故こんなランチを?」
気にして貰えるのはありがたいのですが、そんなたいそうな理由は無く。
「コース料理にもう一人興味をもったのが居まして」
一人と言っていいのか一玉というべきなのか少し迷いましたが、視線を厨房に向けると皆さんが納得したような顔に。
「コースは無理でも、ワンプレートランチであればと思ったのですが、それならばこっちのほうがいいかなと」
自分の感覚としては、生姜焼きとトンカツで迷っていたところにハーフ&ハーフのセットを見つけた様な感じ。
迷った時、その両方が食べられるのは嬉しい事を僕の少ない人生でも知っています。
「じゃあ、もう一人は満足してくれたのかい?」
「ええ、多分。まだ言われていないデザートの催促があると困りそうですけどね」
ちょっとだけ苦笑いをして、向き直ると女性が一人また手招き。
「はい、どうされました?」
「このジュース。すっごく美味しかったわ」
オレンジジュースのビンをもって、言われます。
「これは僕が作ったわけではないので。ただ、皆さんで食べたこの空気が良かったのでは?」
「それはあるかもしれない。栓抜きで開けるのも楽しかったし、料理に合うときはまた飲みたいわ」
お子様ランチに合わせるならビンのジュースと勝手に想像してみたのですが、それがどうやらハマった様で。折角なので確認をしてみますか。
「ガーさん、よくわかっていないのですが、ジュースはどうなっているのです?まぁ、正直を言えば冷蔵庫もよくわかっていないのですけど」
使っても減らないという夢の冷蔵庫。
「使ったら戻る様になっているから、問題ないよ。システムはそのうちに伝えるけどまだ今は早いかな」
どんなシステムがあるのかわかりませんが、今はまだというのであればこれ以上は喋らないでしょう。
「分かりました。という事なので、ジュースはいつでも出せるみたいです」
結果報告とばかりに女性に言うと、にっこりと笑顔で返されます。
周りに視線を投げると、とりあえずは一段落の模様。
厨房に戻ろうとすると、パンケーキの追加の声が。
お昼はもう少しだけ続きそうです。
皆さんが満足して帰ったのはそれから一時間後。
全体的に量が抑えめだったせいもあったのか、パンケーキの追加とジュースの追加があの後に二回ほどあって、厨房で作るのですが、
「私の分もお願いします。あ、間にクリームたっぷりのハンバーガースタイルで」
などと、人が忙しいのを横目に勝手な注文を繰り返す精霊に多少のイラつきを覚えながらも、すぐにできるデザートだったので、問題は無く。
お客さんも帰ったので、洗い物も一気に済ませます。
殆ど終わって、思い出すのは自分がお昼を食べていない事。
一応味見という意味では多少食べてはいるのですが、しっかりと食べてはいません。
ですが、終った満足感が自分の気分としては勝ってしまってまぁいいかなという気分。
「まぁ、お昼は無しでいいや」
ただ、お昼を抜いてそのままいつもの所まで行って練習という気分でもありません。
「あー、できるかちょっとやってみるか」
厨房の電気を落としたら、自分の部屋へ。
ここ数日で出来たらいいなと思っていたことをやってみることに。
それが予想外の事になるとは知らずに。
やってみることは単純。
魔力に色を付けないとどうなるのかという事。
ここ数日、練習しているのは六属性の玉。頭で想像する時、六つの玉を想像するのですが、そこに何の属性も入れない場合がどうなるのか。
この前ガーさんが来た時に叱られたのは混ぜる事で危険があるという話。
混ぜる以前の何もない魔力だけであれば問題はないハズ。
という事で、まずは一つ。
いつもと一緒で目を閉じて、魔力を感じます。そのまま魔力で作るのはサッカーボールぐらいのちょっと大きめの玉。それを頭の中でしっかりと想像します。
想像が出来たら、右手をその玉に添える様に出してそこに“ある”ことを感じて、落ちないように左手は下へ。
あとは言葉による確定。
「魔力の玉?」
確定が出来るのかも分からないので疑問形になってしまいましたが、多分成功した事はすぐにわかりました。
それはシッカリと魔力が減ったから。
ここ数日の練習の成果でしょう。
目を開けて、両手の中に玉がある感じは何となくわかりますが、見えません。
「出来た、のかな?」
左手の上に乗っている感じがあるので、おそるおそる右手を玉の方へ。
ほんの少しだけ触ったような感触があって、そのまま突き抜けます。
何とも表現しづらいのですが、感じだけで言うと風の壁を抜ける感じでしょうか?扇風機の前に手を置いて風を手で押すようなあの感じに似ています。
そのまま突き抜けたので、元に戻せば変わりなく。
中々面白い触感なので何度か触ってみたり、指でつついてみたり他にも色々としてみますが、問題はなさそう。
「これならもしかして」
一度魔力を止めると、そこに触感は無くなりました。
思い付いたのはこの玉の制御。
もう一度想像して、今度はその玉を自分の周りで回してみます。
「うん、多分出来た、かな?」
見えないので出来ている保証が無いのが欠点ですが上手くいっている感じはあります。
そして一番の問題だった、色々な物に当たる可能性。
六属性の玉は属性もあって、当たってしまうとちょっと危ない気がしていたので結局外でしか練習が出来ないという結論になっていました。
ですが、今自分が立っているのはベッドの横。多分ベッドやそこに置いてある木刀にもあたっているはず。
「これなら、練習できるかも」
日常使いが出来そうな魔法と言っていいのかちょっとわからない事ですが、とりあえず練習を室内で出来るようになった気がします。
今回も読んでいただきありがとうございます
目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです
改めてありがとうございます
毎日投稿頑張ります




