★ダンジョン130
目の前にいるレッドヘアホースは乗せてくれていた個体より一回り大きく、かなりの巨体。そして体は燃えていて近くにいるだけでもその熱波がこちらに来て思わず目をそむけたくなるほど。
「かなり熱いね」
「ここはもう地面が焦げているので大丈夫な気がしますが、気持ち温度は上がり続けている気もするので早めに行動は済ませた方がよさそうですね」
「おっけー」
こちらが睨むと相手も睨んできてやる気満々。
一旦身体強化を解いて、すっと刀を抜いて前に構えます。
レッドヘアホースは少しこちらが動く度になるべく目の中に入れたいのか視線を少し動かしながらもしっかりと左目でこちらを捉えるような動き。
先に動いたのはレッドヘアホース。
前足をあげて大きくいななくとゴウと体の炎が一気に強くなります。そしてそのままもう一度鳴くと炎が波のようにこちらへ襲い掛かってきます。
距離は十分離れているのですが、動きが波の様な形。浅く広い炎の攻撃は今の状態では避けられそうになく。
咄嗟に出来るのはローブでの防御ぐらい。
体を横に顔を守る様に左腕をあげながら炎の波をやり過ごしたのですが、結構な熱量。
「強いね」
「当たり前です。かなりのダメージでは?」
「痛くなかったとは言えないけど、あのぐらいならまだ何とか」
強がってはみますが同じことをあと数回も受ければ流石にダメでしょう。でも、何か対策が浮かんでいるかと言われると難しい所。
フィールドも熱くなってきているので時間が無いのはある意味幸いでしょう。
熱さで少しクラクラしている気がしますが、やられっぱなしのつもりはありません。
抜いた刀を相手に突き付ける様に構えるとレッドヘアホースは他のモンスターも見せた様ないやらしい笑みを浮かべて口元をニヤ付かせます。
そしてそのいやらしい笑みのまま大きくフシューと息を吐くと炎の色が赤から青へ。
色が変わると同時に肌がチリチリと焼けるような痛み。
温度が上がっているのがよくわかります。
綺麗な赤毛に青い炎を纏った瞬間にダッと地面を蹴る音。
次の瞬間には目の前にいたはずのレッドヘアホースは自分の後ろへ。
そして遅れて痛みが全身を一気に襲ってきます。
「グッ」
舐められていたからなのか横を一気に素通りするだけだったので熱さによるダメージはあったのですが、死ぬ事は無く。
それでも今までの炎の温度とは段違いなので息を吸うだけでも喉が焼けるような痛みが。
このままでは流石に危ないのでサイドポケットから持って来た回復薬をすぐに飲みます。
回復薬の効果は素晴らしく、すぐにダメージは回復。
「完全に舐められていますね」
「ありがたいことにね」
あの攻撃が体当たりの様に突進であれば確実に一撃でやられていたことは明白。
「コレは絶体絶命という奴では?」
「まあ、余裕がある状態ではないよね」
「速さに追いつけそうですか?」
「分からないけど、身体強化をすればギリギリ何とかかなぁ」
目で追えないので身体強化は必須でしょう。そして攻撃力は多分必要なさそう。
相手の威力をそのまま借りればいいだけのハズ。
ただ次はこちらを狙ってくる事も考えられます。
そうなると後は賭け。
「身体強化」
そんな事を考えながらもこちらも準備を整えるとしましょう。
自分に身体強化をかけるのですが、今必要なのは視力と瞬発力。逆に言えばそれ以外はそれほど必要ないので、そっちに集中できるといいなと思いながら身体強化を掛けると、いつもの感じとは少し違う感じに。
「なるほど?」
「どうかしましたか?」
「んや、これならいけるかもしれない」
「それは朗報ですね」
少し違う感じに勝機を見いだせた気はしますが、今は距離が離れた状態。
先程と同じように大きくいななくと炎の波による攻撃をまたもしてきます。
「それはさっき見た」
炎の波の攻撃は広さこそ結構あるのですが、炎のスピードはそれ程速くないので急いで下がる様にバックステップを繰り返すと次第に炎が消えていきます。
距離は離れましたが、攻撃も当らない状態に。
そして炎が弱まったと同時にレッドヘアホースへ一気にこちらが駆け寄るように向かって行くと、ニヤリと汚い笑みを浮かべフシューと息を吐く動き。
「その行動を待っていた!」
レッドヘアホースは息を吐くと炎の色が赤から青へまだらになりながら変わっていくのでそれを結構近い距離で見ながらもこちらも覚悟を決めて足に力をグッと込めて刀を正面に。
身体強化を掛けているので馬の息遣いも動きもしっかりと見えている状態。
炎の色が殆ど青になったのでこちらも息を止めて集中。
レッドヘアホースの後ろ脚が地面を蹴る瞬間、自分が見ていたのは馬の視線。
体当たりを今回はして来るだろうと予想をしていたのですが、今回もこちらの横を素通りするような視線に見えたので刀をそちらへ倒して、念の為でほんの少しだけ自分も地面を蹴って勢いをつけます。
グッ
凄い重さがいきなり手に掛かったかと思うと、ソレで終わり。
手に衝撃と重さが同時にかかって、それをグッと耐えていたのですが急に重さがなくなって、横を見ると煙が。
そして煙が消えると中の魔石が落ちています。
「やりましたね」
「まぁね。おっ、乗せてくれたレッドヘアホースも喜んでくれているみたいだね」
倒したのを確認してか、ゆっくりとこっちへ近づいて来て鼻先を押し付けて来るので軽く撫でてあげます。
目を細めて気持ちよさそうにしているのでそのまま少し撫でていて油断をしてしまったのがいけないのでしょう。
地面に落ちていた魔石をぱくっと食べてしまいます。
「あっ」
餌を食べるようにすぐにそのままそれをゴクン飲み込んでしまいます。
そしてすぐにレッドヘアホースは変化を始めます。
ググッと全体が一回り大きく、そして一度赤い炎が青くなって黄色になってもう一度赤くなります。
そして少しだけ下がって一度大きくいななくとその炎は綺麗なグラデーションに。
「綺麗ですね」
「だね。名残惜しいけど進もう」
「ええ」
最後にともう一度近づいてきてくれたレッドヘアホースを撫でて、別れの挨拶。
そのまま階段を降りてダンジョン探索を続けます。
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