担々チーズリゾット
「今日も食べに来たよ」
「こんにちは、いらっしゃい」
大体いつも通りの時間にガーさんと六人が来ました。
「いやぁ、昨日は遅い時間に悪かったね」
「いえ、こちらも危ない事をしていたのでお叱りも理解できますので……」
そんな話を二人でしていると、
「昨日の夜にこいつが来たのか?」
一人ががーさんに反応を示します。
「ちょっと魔法の練習で混ぜてはいけないものを混ぜようとしまして」
「いや、その辺りは別に気にしていない。夜に来たのか?」
一歩踏み込んで、更に聞いてきます。
「え、ええ。来ました」
「……その手があったのか」
そう言って首を落とします。
僕としてはどういう事かもわからず、何とも言えない空気。
「あのね、昨日この人あの鍋が美味しかったけど、あれこれ気になっていたらしいのよ」
隣にいた女性が解説とばかりに口を開きます。
「はぁ」
生返事を返す事しか出来ませんが、返事を返すと、ぐるりと男性はがーさんを掴みます。
「何を食べた?」
「残り物を、ね?」
がーさんはニヤリと笑うように言います。
「残り物?昨日のお昼の鍋、ちゃんこ鍋という事か?」
「あんなに味変化をするとは思わなかったよ」
「「「味変化?!」」」
反応は一人から一気に半数の半分まで増えます。
「味噌、バター、ピリッとラー油。いやぁ美味しかったね。というかシメの麺がまた最高だったよね。うんうん」
がーさんが言う言葉に数名は生唾を飲み込む程。
「そんな変化まであったなんて。くぅぅ」
がっくりとうなだれるほど一人は落ち込んで、いや涙を流しています
「あの、今日のランチは麺ですけど、昨日の夜のそれよりも個人的には美味しいという自負があるものなので、期待してもらって大丈夫です」
あまりお客さんを刺激するのが良くないのは分かっているのですが、ここまで落ち込まれるとそうも言っていられません。
それに今日のランチの担々麺は十分勝てるスペックはあります。
「そうなのかい!?」
ガバッと立ち上がり、両手を掴んできたのは先程からの落差の激しい一人。
「期待を裏切ることはないと思いますよ」
ご飯の準備もあるので、大丈夫。
皆さんを席に誘導しておしぼり、お水の提供もしたら試食の時と同様に作っていきます。
丼ぶりの準備と、麺を茹でるタイミング、最後は三名分にして三回に分けて。
とりあえず最初の二杯が出来て、提供順を伺うと最初の四名が先でがーさんと後から来た二人は後でいいとの事。
と言っても一分半程度の差でどんどん出せるので、提供をしていきます。
「今日のランチ、担々麺です」
皆さんも慣れた手つきでスープを飲んで、麺を啜ります。
ある程度食べているうちに声を掛けてきたのはいつもの通りにがーさん。
「これは、干しエビが入っていないね?」
「ええ。マスター直伝ですね」
「食べていて凄くうれしいものだね」
その言葉の意味が一瞬分からなくなって首をかしげます。
「どういう事でしょう?」
「いや、かなりしっかりと戻していても、干しエビはある程度口に含むと硬さというか食感がパリッと残るだろう?でも、ザーサイに肉にネギぐらいだから変に口に残るものが無いんだよ」
ああ、そんな事まで考えていたのか。
マスターの気遣いの凄さを改めて感じます。
「まぁ、この後のご飯の事を考えてくれているのもあるよね?」
「それは、そうですね。どうしますか?」
ご飯のおかわりを聞くと、殆どの人が手を上げます。
「多少、お願いをしてもいいのよね?」
手を上げなかった一人は女性の一人。そのまま尋ねる様に言う言葉に周りも凄い反応を。
「リゾット風にしてもらえる?」
「ええ。出来ますよ。チーズリゾットでよろしいですか?」
「お願いします」
そこで手を挙げたのは同じく女性と来てからずっと大変な感じの男性。
「私のもお願いします」
「これもリゾットにして欲しい」
「お一人ずつ順番に、ご飯と合わせて持ってきます」
まず一人分のスープごと下げさせてもらって、厨房へ。
ご飯を四人分よそって、お盆に乗せて器一つ分のスペースを確保するとチーズリゾットを作ります。
スープの残りにご飯を入れて、さっとひと混ぜして上にチーズを乗せてあとはバーナーでチーズを溶かします。
たったこれだけですが、チーズの塩っ気と担々麺の辛さが少しマイルドになるので食べやすくなる感じ。
「お待たせしました」
ご飯を各自に渡しながら、出来立てのリゾットにはスプーンを添えて出します。
そのまま二人分を厨房へ持って、同じ作業をして提供を。
「ん、チーズが辛味を更に抑えてゴマをしっかり楽しめるわ」
「ふん、男はこうガツンとくるのはご飯だけの方がいいのだよ……このチーズは合うがな」
「なるほど、チーズが辛味を抑えて食べやすくしてくれるという反面、パンチも減るとも取れるわけか。本当に料理の奥は深いね」
「…………(ひたすら頷きながら手は止めないで食べている)」
ご飯までしっかりと食べて、みなさん各自でそれなりに楽しんでいただけたようで。
「どうでしたか?」
「今日も最高だった」
来てすぐにかなり荒れていた男性はお腹も一杯になったのかかなりの満足顔。
「すぐにというつもりはないが、夕飯をいつか家族で食べたいのだがそう言うお願いは出来るのか?」
その言葉に顔を見合わせるのはガーさんと僕。
「まだ慣れてないのですぐにとはいかないかもですね」
「因みにそれは何故?」
横から聞いてくるのは別の女性。
「単純に僕の力不足もあるのですが、それ以上に人手が必要になりそうなので」
「人手?」
「ええ。夜となると、コースなのでしょう?」
「コースも出来るのかい!?」
てっきりそういうモノかと思ったので答えたのですが、ガーさんの顔を見ると、コレは答えを間違えてしまった感じ。
「流石に一人ではお昼も無しにしてもらわないと難しいので、お昼が無しでもいいのであれば仕込むことは出来るかもしれませんが……」
「いや、そこまで無理をお願いしたいわけではないので、そうかぁ人手も必要か……」
今度は一転、皆さん悩むような感じ。
「先に言っておきますけど、マスターの様にいきなり人を連れてこられても上手く指導出来るわけではないですからね?」
釘を刺しておきますか。
「そ、そうだね。うん、わかっているよ」
数名焦った声を出した感じ釘を刺して正解だったようです。
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