とろ鉄火丼
メインは残っているのですが、ご飯は味見で食べた分しか残っておらず。
仕方なくストックにあるパンを温めてランチを済ませてしまえば後は自由時間。
自由時間に期待して食事を始めたのですが、
「あーっ!一人だけズルいです!」
「いやいや、ご飯が無いんだから仕方ないでしょ?そもそも誰が一番食べたと思っているの?」
「え、あー、いえ、そうですね?」
しどろもどろの精霊を無視するわけではないのですがメインのスープにパンをつけて食べるとかなりいい味。
お客さん達にはご飯を合わせてもらいましたが予想通りでパンもいい感じ。
精霊があまりにもジーっと見てくので、
「食べるの?」
「いいのですかっ!?」
「パンだけなら」
「うぅ」
今自分の食べているモノだって残りのそこまで大きくない鯛の白ワイン蒸し。
流石にこれまであげるつもりはありません。
トースト自体はそのままトースターに入れるだけなので簡単。
「美味しいですけど、飲み物が欲しい感じです」
「まあトーストだからね」
とはいえ、バターも塗っているカリッとパリッとしているトーストはそれを食べているのを見ているこちらでも美味しく見えます。
「お腹が一杯なのに入るものですね」
「……それも大体おかしいけどね?」
「因みにこの後はどうします?」
「あー、いつも通りかな?場合によってはギルドで刀について聞こうかと思っているぐらいかな」
「刀ですか?」
「そそ。一応やっぱり武器もそろそろほしいからその辺りをね」
「刀についてはこちらで調べるので大丈夫ですよ?」
「あ、そうなの?そうなると昨日と変わらずかなぁ?」
「木刀作りですか?」
「そうなるかなぁ」
そんな感じに話を済ませれば食事も終わり。
今日もお皿は少ないので洗い物はそれほど時間もかからずに終わります。
「じゃあ、今日もいつも通りですね?」
「そうだね。木刀磨きかな」
「あ、今日はお手伝いできないので自分だけでお願いしますね?」
「わかったよ」
精霊の手伝いが無いので多分自分でやすりを使うと出来ても一本か二本。
今日は手荷物が少なくなりそうで嬉しい所。
形を整えただけの木刀二本をもって家を出るとすぐに精霊が追いかけてきて肩に乗ります。
「因みに精霊は何するの?」
「今日も魔法の練習です」
「結構頑張っているみたいだけど、何をやっているの?」
「えーと、まだその時までのお楽しみにして欲しいです」
「言えない様な危ない事なの?」
「いえ、そんなことはありません。ただ、あまり知られたくない事でして」
「……まあ、危なくないのであれば仕方ないね」
「しっかりと目にもの見せてあげますから、その時をお待ちください」
日本語が少し変な気がしますが、まあそこは目をつぶるとしましょう。
「あ、木刀作りもいいですけど夕飯もしっかりと考えて下さいね?楽しみにしていますから」
「……今お昼が終ったばかりなのに?」
「私の幸せはお夕飯に掛かっていますので」
勝手に幸せを掛けないで欲しい所ですが、そこまで言われるのはやはり少し嬉しい部分もあります。
「まあ、ゆっくり考えるよ」
「お願いします」
精霊を肩に乗せて南の扉へ行くといつもの人が。
「おっ、今日も作るのかい?」
「ええ。使い心地はどうです?」
「いいもんだよ」
そう言いながら軽い素振りを見せてくれるのですが、かなりの剣筋。ちょっと見惚れてしまう程です。
「凄いですね」
「まあ、門番になる為にはある程度修めていないといけないからな」
「へー、そうだったんですね」
会話が終り扉を抜けると今日もいい風が。
精霊を肩に乗せながらいつもの場所までゆっくり行きます。
道中もたわいもない会話をしていたので夕飯を考える暇は無く。
「では、いってきますね」
「うん。気をつけてね」
着いてすぐに精霊はいつもの様に森の方へ。
一人で風を感じながらやすり掛けを始めると意外と時間はすぐに過ぎてしまうモノ。
ただ今日はちょっと集中力が続かず。
そのおかげか夕飯を考えやすい感じに。
「さて、夕飯も考えないといけないけど……なにがいいかな」
木刀片手にやすり掛けをしながら夕飯を考えます。
シュッシュッ
一定間隔の音は自分で鳴らしていても心地のいい音。
少しずつ考えもクリアになっていくのでいい感じ。
頭の中がクリアになって来ると食べたい物がスッと浮かんでくれます。
今日の夕飯は今浮かんだものに決定。
決定するとお昼で足りていたはずなのに、ちょっとお腹が減って来る気がします。
首を左右に振って気を散らして木刀磨きを再開するのですが、何とも集中できない感じ。
どうしようかと考えていると、
「戻りましたー」
それほど時間が経っていないのに精霊が帰ってきます。
「あれ?早くない?」
「今日の練習はある程度出来たので早めに戻ってきました。お夕飯は決まりましたか?」
「あー、うん。一応決まったよ。今日は集中できないから帰ろうか」
「帰ったらすぐに作ってくれる感じですか?」
「かな」
そんな話をしたものだから精霊が背中をグイグイと押してきます。
片付けを済ませて精霊に背中を押されながら扉に来るとさっきもあったいつもの人。
「おろ?今日は早いね?」
「今日はちょっと集中できなかったので早めに切り上げました」
「まあそういう日もあるわな」
扉を抜ける頃には精霊も肩に乗って背中を押すことはやめてくれましたが、それでも家に帰ると、
「ただいま」
「おかえりなさい。ご飯の支度を始めましょう」
こんな感じで食欲全開。
苦笑しながらも手洗いやうがいを済ませて最初に準備するのはご飯。
今日の夕飯は炊き立てのご飯で食べたいのですぐにご飯の支度から。
洗って、ご飯を水に浸しておきます。
ただ、今日は自分もお腹が減っている状態なのであまり長く浸けずに十分前後でそのまま炊飯器へ入れて炊飯ボタンを押して食べられるようにします。
ご飯の支度が終ったら次はメイン。
冷蔵庫を開けると欲しいものがあるのでこればかりは本当にうれしい所。
「あった」
今日のメインは真っ赤なアイツ。
お昼も魚でしたが夜も今日は魚で。
刺身にするのは後にして、もう一つの食材を食べられる状態にしましょう。
もう一つは山芋。
皮を剥いてすりおろすだけ。
出汁を入れて伸ばすのもいいのですが、今日はそのままでオッケー。
「今日の夕飯はシンプルですね?」
「だね。その代わりおかわりできるようにするつもりだから」
「おかわりするほどのモノに?」
まあ今の状況だけを見ると山芋を擦っただけ。
完成させればそんな事も言われないでしょう。
少しだけ待つとご飯が炊けた音。
この音を待っていましたとばかりに、一気に完成させていきましょう。
あえて一杯目は白ご飯で。
丼ぶりにご飯をしっかりとよそってから乗せるのは勿論、マ・グ・ロ。
サクから刺身の形にして、それを綺麗にならべていきます。
「おぉぉぉ」
綺麗に丼にマグロを並べたら上にたっぷりと山芋のすりおろしを掛けて出来上がり。
「さ、食べよう。今日の夕飯はとろ鉄火丼だよ」
「とろ鉄火丼!!」
普通のトロ鉄火だと中トロなど赤身よりも脂ののったものをさしますが、今日のトロはとろ違い。
とろろたっぷりの鉄火丼なので色合いも白と赤がいい感じに混ざっています。
「「いただきます」」
出来立てを二人で楽しんで食べて、二杯目は酢飯にして。
出汁を掛けた三杯目はお茶漬け風とお昼食べられなかったご飯をたっぷりと食べてかなり満足の行く夕飯に。
それにしてもおかわり三回は食べ過ぎた気がしました。
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