鯛の白ワイン蒸し
主食のご飯は鮭とキノコの炊き込み。
折角なので主食に合わせてメインも魚にする事に。
「となれば、お魚はあるかな?」
冷蔵庫を開けて見つけたのは鯛。
結構豪華な料理に見えそうなものが出来る気がします。
ただ、手順のわりにすぐ出来る料理なので下準備までで済ませることに。
使う材料はまずは鯛。別に鯛にこだわらず白身魚や今日のご飯に入れている鮭でもオッケー。
後はいつもの様にタマネギとキャベツもあるといい感じ。
そして大事なプチトマト。トマトじゃなくてプチトマトなのでやる事も簡単。
ヘタを取っておけばオッケー。
タマネギは櫛切りで結構大きく食感が楽しめる形。キャベツは適当にざく切りでオッケー。
鯛は切り身であれば軽く水気をふき取って、塩とコショウを振って味付けを。
このタイミングで小骨は出来るだけ綺麗に取り除いておきます。
後はフライパンで調理するだけ。
「それがメインですか?」
「そそ。先に食べるなら作るけど?」
「いえ、折角なので今日は我慢しますよ」
「ん。じゃあ食器とか出してもう少し支度を進めておこう」
精霊と二人でやるので食器を出すのも簡単で。
今日はちょっと深めのスープ皿とご飯用のお椀の準備。
ご飯ものなのでスープは?と思うかもしれませんが、メインがスープも担ってくれるので問題なし。
支度は意外とすぐに済んでしまったので、ちょっとだけゆっくりしていい時間に。
「で、結局今日のお昼のご飯はどうなりそうなのです?」
「お客さんに決めてもらおうと思っているから、来てからだね」
「私もお客さんではないのです?」
「お客さんじゃぁないね?」
お客さんと言うよりは家族に近い感じ。いつもそばにいるのでまあ口には出しませんが、そんな感じが一番合うのではないでしょうか。
そんな感じで話をしているといつもよりは少し早いですが、がーさん達が来店。
「こんにちは、いらっしゃい」
「今日も楽しみで来たよ」
挨拶を済ませて客席へ案内すると精霊も慣れてきているのか、お水とおしぼりをすぐに出してくれます。
「コレからメインを作るので少しお時間を頂くのですが、先に決めてもらいたいモノがありまして」
お客さんが席に着いていつもであればすぐに僕も厨房に戻るのですが、今日は確認から。
「何を決めるんだい?」
がーさんが聞き返してくれたので、
「今日のご飯の味を」
「ご飯の味?」
「ええ。今日のお昼のご飯は鮭とキノコの炊き込みご飯なのですが……」
そこまで言った瞬間に、
「そのままでっ」
最初に声を上げたのは火の精霊付きの人。
その言葉に頷いているのは男性陣。
「まあまあ、話は最後まで聞こう」
がーさんが窘めてくれたので、話を続けます。
「仰る通りでそのままでも美味しく仕上げているのですが、今日のメインがワイン蒸しで。それにもバターを入れるのですが、炊き込みご飯にもバターを入れるとそれはそれで美味しく出来あがるので、どちらがいいかな?と」
僕の発言が終ると、皆さん一気に静かに。
かなり真剣な表情で悩んでいる様子。
「どちらもと言うのは出来ないのかな?」
「出来ますけど、バターを追加した後は元に戻せませんが大丈夫ですか?」
「あー、なるほど……」
そう、一度バターを足したら戻せないのが今日一番の問題点。
お椀によそってからバターを乗せるという事も出来ない事は無いのですが、ソレだとやはり少し微妙になるもので。出来ればしっかりと作ったものを出したいのでそこは我慢してもらうしかありません。
時間的には一分も待っていないのですが、結構な空気感のせいでかなりの時間を待った気分。
「両方食べたいという事で決まったから、最初は普通の。次にバター込みでお願いできる?」
「分かりました」
大方予想通りではありますが、両方と決まったので後はメインを作って行きましょう。
すぐに厨房に戻って用意しているフライパンの中身を確認。
フライパンにはキャベツを敷いて、その上にタマネギを敷いて、更にその上に鯛が乗っている状態。
このまま火にかけると流石にキャベツが焦げてしまうので、白ワインを全体にかけて蓋をしないまま火にかけていきます。
白ワインが沸騰してきたら、塩とバターとプチトマトを入れて蓋をして鯛の中までしっかりと火を通せば出来上がり。
白ワインとバターの味が優しくいい味になるのでお皿に盛ったら少しだけコショウを掛けて味にメリハリを。
鯛の身はふわふわで食べやすく、先にしておいた塩コショウもココで効いてきます。
タマネギやキャベツは甘く、プチトマトは蒸している間に割れることもありますが、割れたプチトマトからの酸味が丁度いい酸味になるので今日の決め手と言っても過言ではありません。
最後にスープも飲めます。バターが入っているのですがプチトマトの酸味や野菜からの甘さや旨味がぎっしりと詰まっているので飲まないのがもったいない程。
「よっし、出来た」
メインが出来あがったので、後は配膳となるのですがここは一人でやるとしましょう。
「配膳、手伝いますよ?」
精霊が言ってくれますが、
「手伝ってくれるのは嬉しいけど、両方の味みたいんでしょ?」
「いいのですかっ!」
「いいから言っているんだけど?」
「すぐに手を洗って食べる準備をしますっ!」
まさに高速移動。
精霊は凄いスピードで厨房を出て行ったので、配膳を一人でしましょう。
ご飯をよそってメインも盛りつけて二人分をトレイに乗せてサーブしていきます。
「あれ?精霊のお手伝いは?」
「今一緒に裏で食事中です」
「あー、なるほど。両方の味が食べたかったのね?」
「ですです。すぐに皆さんの分お持ちしますね。一声かけてもらってからバターを追加するので、お願いします」
一人でサーブしてみるとつい先々週ぐらいまでやっていたのになかなか時間がかかっている気がしてしまいます。
「サーブは手伝ってもらっても良かったかな?」
こんな感じの今日のお昼はこの後おかわりとバター追加作業のあとにも同じくおかわり。
勿論味見と言う形で自分も少しずつ食べてはいたのですが、皆さん綺麗に全部食べてしまいます。
「自分の分残しておくの忘れてた……」
今日のメインにはパンが合うとすこし強がってみましたが、やっぱり少しご飯も食べたいなと思うお昼になりました。
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