鶏卵うどん
転移装置に乗って光が消えたらもう一階。
気も緩んで大きく息を吐きます。
「ふぅ、無事帰ってこられたね」
「今回は危ない部分も多かったですからね。あ、私は先に家に戻って体に戻ってきますね」
「えーっと、ギルドで待っていればいいかな?」
「そうしてもらえると助かりますね」
「わかった。じゃあここからは別行動だね」
そんな会話をしながらダンジョンの出口へ。
ギルド職員さんが待っているのでギルドカードを渡します。
「お疲れ様です。探索進んでいますね」
「ええ、今回は少しヒヤッとすることがありましたけど、問題なく進んでいます」
「はい、カードありがとうございます」
渡したカードが手元に戻って来たのですぐに仕舞うと、ギルド職員さんが珍しく声を掛けてきます。
「もうすぐ四十階ですが、準備は進めていますか?」
「準備ですか?」
何のことかわからなかったのでオウム返しの様に聞いてみると、
「特殊階層になってくるので支度が必要なのはご存じありませんか?」
特殊階層?何の話かあまり分かっていないので返事に困っていると、
「この後換金等をする時に職員に確認をしてみて下さい。換金や鑑定カウンターの人間の方が詳しいので」
まくし立てる様に言われては頷くほかなく。
そして頷いてしまったのもあってギルド職員さんはもうこの話は終わりという感じでニコッとわらって次のダンジョンから出る人を見ています。
ポツンと一人残された感じになってしまいましたが、多分精霊が特殊階層などについては知っているはずという思いもあって話を聞くのはちょっと後回しにするつもり。
そんな事を考えながらもギルドに入ると今日も中々の活気。
ある程度慣れているのもあってそのまま二階の鑑定カウンターへ向かいます。
慣れた手つきで手荷物検査機の手前の部分でリュックを降ろして今回の戦利品をトレイに乗せて行きます。
今回もビンが多め。緑が五つに青も二つそして紫と赤が一つずつ。
それ以外は腕輪が二つと盾とナイフ。
分けてもいいかと思っているのですが、丁度一つのトレイにキレイに乗ってちょっとだけ自分の気分が上がります。
手荷物検査機を通ったアイテムはラベルやタグが付いていて、嬉しい結果も。
「おっ、回復薬中は珍しいですね。解毒薬が二本と回復薬小が二つですね。青は両方素早さが下がる薬で、紫が毒、赤はヨウ素液ですね」
ビンは中々今回も当たりの様子。
一度家のビンも整理しないといけないでしょう。
「腕輪は両方ガラスの腕輪ですね。盾は……呪われのラウンドシールドで、おっ、ナイフは当たりですね。火の属性付きナイフですね」
今日は後ろに人も居ないので簡単な説明をしながら鑑定をしてもらって、そのままスライド移動で換金カウンターへ。
魔石は小が十七個に中が一個。そしてガラスの腕輪やラウンドシールド、青と赤のビンもいいので一緒に換金することに。
「小の魔石が十七個と中が一個で……んー、この中は少し小さめの中だから銀貨二枚半程度かな。合わせて銀貨十一枚ってところだな。腕輪や盾とビンを纏めて銀貨四枚全部合わせて十五枚当たりでどうでしょう?」
「お願いします」
銀貨を十五枚並べてもらって、それを受け取ります。
とりあえずこれで換金も終わり。
後はいつも通り帰るだけなのですが、今日は精霊が戻って来ると言っていたのでここで待つことに。
時間もあるのでついでに夕飯でも考えてみようと壁を背にして考え事をします。
それほど長い時間は経ちませんが、結構時間が経ってから精霊が結構な勢いでこちらへ飛んできます。
「お待たせしましたー」
そう言って肩に乗ったので、ダンジョンを出てすぐの事を精霊に話すと、
「特殊階層についてはちゃんと考えているので大丈夫です」
「ん。じゃあ、ギルドの人に聞かなくていいんだね?」
「大船に乗ったつもりで!」
そう言われると少し怖い気がしますが、グッとここはこらえて頷きます。
そして丁度いい話題そらしのネタも一つ。
「じゃあ、話すことも無さそうだし帰ろうか」
「え?ご飯を食べに行くのでは?」
「あー、少しだけ待っている間に夕飯を思い付いたから今日はそれを作ろうかと思ったんだけど」
僕の言葉に精霊は人形の体で首をコテンコテンと左右に悩んでいる様子。
首を数回動かす形の逡巡の後、決まったのか聞いてきた言葉は、
「今日はお腹が減っているので早い料理であれば家で。時間がかかりそうなのであれば外にしませんか?」
お腹がかなり減って仕方がないと言いたい模様。
それは一応自分も同じなので、
「時間はそれほどかからないと思うよ?」
「では、すぐに帰りましょう」
と、悩む間もなくすぐに決まります。
軽くなったリュックを背負いなおして、家へ帰るとすこしだけ散らかって見えるのは多分精霊が人形に入るときにバタバタしたからでしょう。
いつもの場所にリュックを置いて、木刀を仕舞って、手を洗って。
使い慣れていた木刀が無くなったことを思い出しますが、とりあえずはご飯の支度。
ローブを脱いで腕をまくって、調理をしましょう。
調理開始と最初にやるのはいつもと変わらずの出汁を取ることから。
ですが、今日は早くという精霊のリクエストもあるのでストックの出汁を使う事に。
ストックしてあるものなのでそのまま温めるだけ。無ければお水に出汁の元などを使うのでもオッケー。
出汁を温めている間にメインを食べられる状態に。
今日のメインはうどんなので、乾麺であれば茹でて食べられる状態に。すぐに食べたいので今日は冷凍のうどんをお湯で戻します。勿論レンジでチンでもオッケー。
ここまでの工程を見て精霊が、
「まさかうどんだけという事は無いですよね?」
「流石にね?」
「だといいのですが、あまりにもシンプルなので心配になりまして」
「じゃあ、コレをお願いしてもイイ?」
精霊に渡したのは皮を剥いた生姜。
それをすりおろしてもらいます。
その間にこちらも仕上げを進めましょう。
しっかりと出汁が温まったら、スープになる様に少しだけ味の調整。
醤油や塩でスープの味にします。
それが出来たら、水溶き片栗粉と卵の準備。卵はちょっと多めに一人二つ。水溶き片栗粉は目分量ですが、サラサラより少しとろみが感じられるぐらいが僕の好み。
先に出汁に水溶き片栗粉を入れてしっかりととろみをつけたら卵をそっと入れていきます。ここで大事なポイントが一つだけあって、触りたい気持ちがあってもグッと我慢。触れば触るほど卵が小さくほろほろになってしまうので卵をいれたら固まるのを待ちます。
卵が固まったらあとは完成させるだけ。
茹であがったうどんを丼に入れてその上に出来立ての卵入りの餡を掛けるだけ。
「見た目は凄くシンプルですね?」
「食べれば分かるから」
「では」
「「いただきます」」
ネギを散らしたり、カマボコをいれたりと色々なアレンジもありですがこのシンプルさが結構いいモノで。
トロリと美味しい餡とするすると入る卵。少しうす味なのですが、そこに自分の好みで入れる生姜の味がなんとも言えません。
「熱くて一気に食べたくても食べられないモノですね?」
「足りなかったらまたつくればいいから焦らないでゆっくり食べよう?」
「ええ」
ダンジョンから帰ってすぐの夕飯は鶏卵うどん。
病み上がりなどに丁度いい一品なのですが、ダンジョン終わりの自分の胃にも丁度いい一品になりました。
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