コロッケ
いつもよりも少しだけ早く起きて、今日は少し走ることに。
同じ部屋で寝ている精霊は布団を少し蹴っ飛ばしてお腹の冷えそうな感じなので布団を戻して、服をパパッと着替えたら静かに自分の部屋を出て家を出ます。
「うゎ、結構寒い」
季節柄もあってか、外は思っているよりも寒いので出した一歩目を引っ込めたくなります。
そこで少し悩みながらも、良い事を思いつきます。
「そうだ、……ドライ」
思い付いたのは昨日使ってみた魔法。
自分の体に少しだけ温かい空気を纏わせてみます。
「お、いい感じかも。あったかくなって来たら魔法を止めればいいかな」
丁度いい温度で外に出られたのでそのまま走り出します。
ルートはいつも通りで最後にパンを買うルート。
そして今の精霊は前と一緒でしっかりと量を食べられるので場合によってはパンも二つ買った方がいい感じ。
ポケットに入っている小銭は銀貨が二枚程。
走っていると小銭がすり合う音が少し気になって来たので一度立ち止まって両方のポケットに入れてみると音も無く。
南から西を抜けて北へ行く辺りで体もしっかりと温まってきて魔法も必要ない感じに全身も温まって来たので魔法をとめます。
全身から少しだけ煙の様に魔力がふわっと消えたのですが寒くなる事も無く。北を抜けて東へ進み、そして南へ。
いつものおばちゃんの所でパンを買ってそのまま帰宅。
「ただいま」
「おかえりなさい」
家の扉を開けると精霊が待っていたのですが、不思議な恰好。
「その恰好はちょっと……」
「寒いので温まっているのです。魔力操作の練習にもなるので一石二鳥という事で」
「えー、かなり不格好だけど?」
「そうですかね?可愛いと思いますけど」
一応良く言うのであれば、ひな人形の女雛が十二単をきているような感じにも見えなくはないのですが、いかんせん野暮ったい感じ。
そして布団なので長さも多少あるのででろーんと下に伸びているのがマイナスポイントでしょうか?
「あー、さっき走りはじめで寒かったからドライを自分に使ってみたけどいい感じだったよ?精霊もやってみれば?」
「あー、あれですか。なるほど」
そう言って精霊は自分自身に魔法をかけたみたいで、
「おっ、本当ですね。布団の重さが無い分いいかもしれないですね」
布団が重たいのか玄関近くで布団を置いてしまいます。
「ほら、布団忘れちゃうよ?」
「うー、面倒ですね」
精霊が部屋に布団を戻しに行っている間に手を洗って朝ごはんの支度を始めます。
いつも通りパンを半分に切ってそのまま食べるのですが、今日は外も寒いので温かくしておきたい所。
いつものサンドイッチなのでトースターに入れてすこしだけリベイク。
「置いてきました、早速食べましょうっ!」
「リベイク中だよ」
「あっつあつにですね!じゃあ、飲み物でも準備します」
「じゃあお願い」
「はーい」
精霊にコーヒーをお願いしている間は手が空くのですが、お湯浴びには時間が足らず、手伝うにもやる事は無く。
そうなると頭を働かせることぐらいしかできません。
「今日、なにつくろう」
走っている間にも頭の片隅で考えてはいたのですが、これといって思い浮かぶものも無く、まあ魔法を使っていたのであまり余裕も無かったというのもあるのかもしれませんが、今日はいい閃きが無く。
リベイクをじーっと見ていると赤くなった電熱線がパンを焦がしていくのですがそこからいい香りが。
「そろそろですか?」
「そうだね、食べようか」
「「いただきます」」
お皿に盛ってお互いにガブリと大きな一口で。精霊は小さな体ながらにちょっと小動物が齧った感じに見えますが、それでも中々の勢いで。
温かくなっている分美味しくなっていて、齧るスピードは緩むことなくそのままの速さで朝食が終ります。
「ふぅ、美味しかった」
「早いですね。私はこのペースでゆっくり食べさせてもらいます」
「うん、急がないでいいからね。あ、コーヒーありがとう」
精霊にお礼を言って、コーヒーを啜ります。
パンの焼けた香りにコーヒーといい感じに混じって優雅な朝食のひと時を感じますが、お昼のランチは待ってくれません。
なにかいいモノが浮かばないなーと精霊を見てみるとまだ小さく齧りながら食べているのですが食べカスが少し落ちます。
後でそれは掃除すればいいかと思っていたのですが、その欠片がいい閃きを持ってきます。
「あ、決まったかも」
「お昼ですか?」
「うん。準備をしないといけないけど、先にお湯浴びしてすぐに調理を始めようかな」
「私はもう少し食べていますね」
精霊をそのまま厨房に残して、一度お湯浴びを済ませて服を着替えたら調理開始。
今日の材料もシンプル。
じゃがいも、タマネギ、あとはひき肉。ひき肉は豚でも牛でも鳥でも大丈夫。ですが、まあ普通は豚か牛でしょう。
因みに今日は豚肉で。
最初にじゃがいもをたわしなどで泥を落としながら綺麗に洗って、大きな鍋に入れて全部かしっかり浸るほどに水を入れて火にかけます。
じゃがいもが茹るまで結構時間がかかるので、その間にタマネギをみじん切りに。
タマネギのみじん切りが出来たら、フライパンに油を敷いてひき肉と一緒に炒めます。
ひき肉が今日は豚なのでしっかりと火を通したいので色がしっかり変わるまで。そしてタマネギも白く透明になるまで炒めます。
味付けは塩コショウなのですが、コショウがちょっと強めにするのがマスター流。
しっかりとひき肉とタマネギが炒め終ったら、じゃがいもの確認。
竹串などを刺して中まで火が通っているのを確認してザルにあげたら少しだけ大変な時間。熱々のじゃがいもを素手でもって皮を綺麗に剥がします。
はがし終えたらそれをボウルに纏めて、マッシャーでどんどん潰します。
多少のゴロゴロ感も食感になるので均一に潰せなくても大丈夫。
つぶし終えたら、炒めたタマネギとひき肉を入れて全体を混ぜ合わせたら種の出来上がり。
「後は形を作るだけっと」
「美味しそうですね」
「まぁ、あとは衣をつけて揚げるだけだね」
「コロッケですね」
「うん」
今日のランチはコロッケ。
サクサクの揚げたてを楽しんでもらうとしましょう。
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