★風のチェンソー&土の切り出し
前話同様、調理が無いのでもうちょっとだけ
食べ終わって、このタイミングで精霊を呼ぶのはどうなのかと少し考えながらも、人気も無いので呼んでみます。
「精霊、居る?」
「はい。美味しそうにお昼を一人で食べているのを見ていましたが?」
それなら声を掛けてくれればよかったのにと思ったのですが、今手元には食べるものがありません。よけいな事を言う前に聞きたい事を聞いていましょう。
「どうやって作ればいいの?分かっている範囲で教えてくれる?」
今日の目標。木刀の作成です。
「まずは木を自分が持ちやすい程度の大きさに切りそろえます」
目の前には丸太を半分にした状態の木がまるっとあります。
切りそろえるって、道具は何も持ち合わせがありません。
「魔法の出番?」
「ですね。風か土が適しているかと思います」
思い出すのは風で土の棒を落とした時の事。
あの時は風の刃を思い浮かべて、魔力を通して放ちました。
「風は分かるけど、土はなんで?」
折角なので聞いてみると、
「土属性は鉱物を含みますから。厨房のナイフなども属性で言えば土でしょう?」
「あー、厨房のはナイフじゃなくて包丁かな?そういう事ね」
言われた通りで考えれば、即席のナイフが出来る可能性も。
道具が全く見当たらない木材屋さんの謎もこれで分かった気がします。
「ただ、一点だけ問題も」
「問題?」
「想像によっては、魔力消費が多くなる可能性があります」
「どういう事?」
何となくの想像はつきますが、聞いておくに越したことはありません。
「形に対しての魔力、属性の魔力の二種類は今週で理解していると思います。その上で、形を維持する魔力が必要になります」
「維持する魔力消費は早いの?」
「鍛錬による減少は認められています」
という事は、使えば使うだけこれも上手くなるという事。
「早速練習しなくちゃいけないって事だね?」
「はい。ある程度魔力量が出来てからでないと簡単ではありませんので。ただ、今回のこの木刀作りは丁度いいかもしれません」
「丁度いいの?」
「小型のナイフを魔力で作って、それを使う事で上達するかと」
「小型のナイフ」
パッと想像したのはカッター。流石にこれでは刃が折れそうな気がするので、もう少ししっかりしたモノを考えましょう。
となると、小刀?だと長すぎるので、切り出し辺り?
グッと握る柄、片刃の鋭い切れ味。
想像出来れば後は作るだけと、魔力を流しそうになって直前でやめます。
「その前にこのままじゃ木刀にはできないもんな」
まだ丸太の形のまま。とりあえず半分。さらに半分の半分ぐらいまでは切ってしまって問題はなさそう。
そう言えば、さっきの木材屋さんはどうやっていたかな?思い出してみると手を当てて、スパッと真っ二つにしていたことを思い出します。
なのでちょっと真似てみることに。
出来上がりは真っ二つ。当てるのは手のひら。
手首から中指の真っすぐな線を想像して、そこから真下へスパンッと切れる。
知っているものだとウォーターカッター?となると水?いや、スパッと切れるのは風かな?属性は何にすればいいのか少し迷います。
「見たと思って聞くけど、材木屋さんがコレを真っ二つにした魔法は属性だと何?」
「あれは風と土ですかね。まだ雅には難しいと思うので、風だけがイイと思いますよ」
複合があるのか。
まぁ、今はとりあえず風。
風でコレを真っ二つに。
どうやって切れるのかを想像するなら、鋭い何かで切れるか、チェンソーの様なものでバッサリか。
とりあえずまずは、風のみでバッサリいけるのか想像してみることに。
「ちょっとやってみる」
風を刃にしてそれを鋭く研いだばかりの包丁の様に。
形を決めたら魔力を流して確定するイメージ。
「風っ」
手を置いて、真っ二つになる様に想像した風の刃は七割程切れました。
「んー、惜しい」
ここまで切れていれば、少し力を入れれば割れるかと間に指を入れて左右に力を入れてみますが、しょせん七割。三割というのは思いのほかくっ付いているようです。
「もう一回やるか」
手を置いてさっきと一緒の想像をして魔力をもう一度流します。
「風っ」
今度は草原の草も少し切れて、下まで届いたようです。
綺麗に二つに割れました。
今の想像力でこの大きさは二回必要な事も分かったので、更にそれを半分にするのは別の想像をしてみることにしてみます。
四分の一になっている木の真ん中あたりに手を置いて、次にイメージするのはチェンソーの刃。あれはガソリンで小さい刃を何度も滑らせて抉る様に木を削ります。
となると、手のひらを置く形では切れるイメージが湧きません。
包丁で食材を切るイメージに近い切り方の方がまだしっくりくるので、右手にハンドソー(片手のこぎり)を作るイメージ。
形状はハンドソー。自分の手でギコギコとせず、チェーンが回るイメージで、それが高速回転して、木を切っていく。
イメージがしっかりと出来たら、後は手を準備して魔力を流します。
「風のチェンソー」
凄い速さで木が削れていきます。
「え?」
精霊がビックリして、思わず声が出た感じ。
僕はそのまま右手を下げて、少しだけ地面を切った辺りで魔力を止めます。
「何をしたのです?」
「チェンソーって道具を再現してみたんだけど?」
「それは地球の道具ですね?」
「そそ。まさか再現できるとは思ってなかったけどね」
切りクズもまんまチェンソーで木を削った時と一緒。
「それで作るつもりですか?」
「いや、これだと切れ味が凄すぎるから。危ないだろうし、普通のナイフで後は削るよ」
精霊も静かになって、次に作るのは切り出し。
とりあえず風で作ってみることにしたのですが、
想像するとかなり難しい事に気が付きました。
「長さが見えない」
頭の中ではこの辺りまでと想像できているのですが、風なので可視化できません。
切れ味はとても良さそうですが、これは無理という事で土に属性を変えることに。
持ち手は余硬すぎない程度で、刃の部分はかなりしっかりと。
「土の切り出し」
言葉と一緒に魔力が減るのが分かります。
思っていたよりは多めに。結構ごっそりと無くなった気がしますが、かなりいい感じの切り出しが右手には握られています。
「よっし」
それを使って木を削ることに。
それが思っていたよりも簡単にサクサクと削れます。
まずは持つ部分。自分の握りやすいように少し凹凸をつけて。
ここでビックリしたのは魔力を切らなければ切り出しがそのまま残っていた事。
置いても、刺しても、しっかり形が残ります。
手を離せることが分かったので、右手、左手と何度も握っては戻しを繰り返し、いい感じにフィットさせることが出来ました。
あとは形を整えるだけ。
多少の不格好は初めてなので問題ありません。
草原に座ったまま三時間程度。
思っていたよりも時間はかからずにやっと一本、出来上がりました。
「出来たぁ」
まだ結構ゴツゴツとしていますが、あとはやすりで磨けばオッケー。
「これが木刀ですか」
「まぁ、結構不格好だけどね」
「一応案内としては、あとはサンドペーパーなどで磨くそうです」
「サンドペーパーねぇ。やすりってこっちはあるの?」
「無いと思います」
だよなぁ。
そんな感じで話をしていると、思っていたよりも魔力を使っていたのかもしれません。
「ありゃ、かなり怠い」
「使い終わったら、魔力は切った方がイイですよ?」
あ、切り出しをいつまでも残していたからか。
魔力を切ると手に持つ部分以外がぼろぼろと崩れます。
それと同時に少しだけ怠さも軽減されたような?
とりあえず木刀が出来て良かったー。
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