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★ダンジョン63

 通路を探して次の部屋へ。

 相変わらず通路から手を伸ばせばリンゴが生っているのですが手を出すつもりは勿論なく。


「でも美味しそうですよねぇ」

「やらないのが分かっていても、その発言は怖いなぁ」

「大丈夫です、冗談ですから」


 何故か「じゅるり」と聞き馴染みのない音が聞こえた気がしますが、多分気のせいでしょう。

 通路を抜けて新しく入った部屋にも何もアイテムは落ちておらず。


「今回は当りませんねぇ」

「だね。まあ後で色々出るかもしれないからそう思っていれば最初からいろいろ出るよりはいいんじゃない?」

「そうですね」


 アイテムは無いのですが、リンゴは落ちている状態で。

 拾うつもりも無いので次の部屋へ移動という事で端の方にある通路に入ります。

 結構狭く、前回の猫が居た階層を思い出します。


「この道は狭いね」

「ですね。当たりだといいのですけどねぇ」


 そのまま通路を突き進んだのですが、途中から道が曲がります。

 そして進んだ先はただの壁。


「ハズレかな?」


 そう言いながらも念の為と木刀を腰から引き抜いて、壁を軽くつついてみます。

 ですが、高い音が鳴ることはありません。


「何をしているのです?」

「いや、この前はこういう感じで隠し部屋みたいなところに入れたから一応でね」

「あーなるほど。ウォールゴーレムが道を塞いで居たのですか」

「そそ。っていうかこの階、ウォールゴーレムは居ないんだっけ?」

「ええ。居ないので多分無いとは思いますが、ダンジョン自体にそういう隠し部屋が無いとは限らないのでいい試みかもしれませんね」

「無いとは限らないなら、そうだね」


 今回はハズレでなにもありませんでしたが、いつか当たることもあるかもしれないという希望的観測も増えましたが今回はそこまで。

 来た道を戻る事に。

 そして通路を戻ると、少しだけ覚えのある匂い。


「この匂いは……」


 まるっきり一緒とは言えないのですが、少し甘い匂いです。

 そしてこの甘い匂いはモンスターを引き寄せる匂い。

 匂いに釣られてスタッグビートルが部屋に入ってきます。

 最初に来た時と部屋の中は変わらず、リンゴがぽつぽつ落ちています。

 そのリンゴに向かってスタッグビートルがゆっくり近づいて、器用に二本のハサミを使って半分に切ると中身を食べ始めます。


「少し下がって、見てみようか」

「ええ」


 通路に少し戻ってスタッグビートルから認識されない位置へ下がってみていると、落ちていたリンゴを食べ終ったのか次のリンゴへスタッグビートルが移動します。

 二個目のリンゴにスタッグビートルが触れた瞬間、そのリンゴはぼやけて透明に。

 何が起こったのか分かっていないスタッグビートルはつんのめって、二本のハサミは空を切ります。

 そしてそこには輪郭のぼやけたリンゴが出現。

 スタッグビートルは慌ててハサミを使いながらソレを捕らえようと挟みますが、何一つ当たりません。

 遠目で見ていても焦燥しているのが分かるほど。

 そしてスタッグビートルは攻撃が効かない事を理解したようで、後ろを向いて移動の準備を始めたのか、羽を出そうとします。

 その瞬間、ケヒケヒと不気味な笑い声が聞こえたと思ったらスタッグビートルは半分に。

 後ろからゴーストアップルがガブリと噛みついたようで、何の反応も無いままスタッグビートルは煙になってしまいます。


「食べられたね」

「食べられましたね」


 魔石も落とさず、ただスタッグビートルが食べられます。

 ゴーストアップルは煙も大きな口を開けて食べると、こちらまで聞こえるぐらいの大きなゲップをして、キョロキョロと当たりを見回します。

 距離も離れていて通路に逃げているので大丈夫かと思ったのですが、何故か目があった気が。


「もしかして、目が合った?」

「物理は効かないので注意です」

「だよねっ!」


 ゴーストアップルはこちらを認識したようで、ゆっくりとぷかぷかと浮きながらぼやけた輪郭のままこちらへ向かってきます。

 焦らずに木刀を準備して正面へ構えてみますが、物理ではダメージがありません。

 すぐに風纏いを想像して言葉によって確定をさせます。


「風っ!」


 木刀に風が纏い、多分これで攻撃も当るはず。

 ゴーストアップルは気にせずにこちらへ寄ってきます。

 距離が近くなったと思うと、ゴーストアップルはむくむくと大きくなっている気が。


「来ますよっ!」


 精霊の言葉と同時に二回りほど大きくなったゴーストアップルはその大きな口でガブリと噛みつくようにこちらへ攻撃してきます。

 ただ、その動作はそれ程早くないので、大きく開けた口に向かってこちらも木刀で横薙ぎ一閃。

 木刀であれば物理攻撃になるので当たらないでしょうけど、風を纏っているので攻撃はしっかりと当たります。

 思っていたよりも野太い断末魔をダンジョンに響かせて、魔石を一つと緑のビンを落とします。


「一撃で倒せたのかな?」

「みたいですね。というかビンは色的に回復薬ですかね?」

「だと嬉しいね」


 落ちた魔石とビンを拾って、サイドポケットへ。

 元々今回も回復薬や解毒薬は持ってきているので精霊の言う通り回復薬だとありがたい所です。

 そしてゴーストアップルを倒しても消えないリンゴが数個。


「そのリンゴは普通のリンゴかもね」

「では、食べてみても?」

「いいけど、お腹壊さない?」

「大丈夫なはずです。調べによると緊急時の食料になるという記述もありましたから」

「そうなんだ。じゃあ、一つ食べてみようか」


 恐る恐る落ちているリンゴを拾ってみると、ズシリと結構な重さ。

 通常のリンゴの数倍の大きさ。人の顔と同じぐらいの大きさがあるのですが、さてどうしようと少し悩んでいるとシャクリといい音。

 持っていて前が見えづらいのですが反対側で精霊が噛みついた様子。


「甘くて美味しいです」

「なら一口がぶりといってみるか」


 精霊に倣って、こちら側からがぶりと一口。

 口の中に最初に届いたのは甘味。酸味は殆どなく食感も程よい硬さです。


「美味しいね」

「ですね。そしてこの大きさだったら食べるのには時間がかかりそうなので後でまた食べたいです」

「噛みついちゃったから、そこに噛みついていないもう一つのリンゴがあるからソレを持って行こう。コレは抱えながら食べ歩こうか」

「ええ。ダンジョンでも食べられるのは嬉しいですねぇ」


 リンゴを食べて上機嫌の精霊と、思っていた以上に美味しくてびっくりしている二十六階の探索。

 ズシリと重いリンゴをゲットして、先に進みます。





今回も読んでいただきありがとうございます

目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです

誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません

改めてありがとうございます

毎日投稿頑張ります


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