イカとカラスミのパスタ
精霊が人形に入れられると、話は終わりとばかりに皆さんも笑顔で人形を軽く触って遊んだ後にすぐに解散。
「また明日も楽しみにしているね」
「ご馳走様でした」
そんな感じで帰ろうとしていたので急いでがーさんを呼び留めます。
「ん?どうかしたかい?」
「流石に人形をもって移動するのは厳しいかなと思ったのですが……」
「あー、それは大丈夫」
「え?」
人形を持って歩くのはかなり恥ずかしいのですがそれが大丈夫とは、一体?と思って目を向けると、やさしい顔をして頷きます。
「大丈夫、誰も何も気にしないから」
「そんなことあります?」
「まあ、やってみれば分かるから」
といわれてもと思ったのですが、
「ですね。雅、問題は全くありませんよ」
「えぇ、本当?」
「この後しっかりと証明出来ますから」
がーさんと精霊が言うには肩に乗せておけば誰も不思議に思わないとの事。
コレからいつも通りの木刀作成なので、と行く支度をしようと思ったのですが、考えてみれば洗い物が残っています。
「はぁ、洗い物やってなかった……」
流石に洗い物をしないまま別の作業を使用とは思っていないので、行く支度を玄関脇に置いて、厨房に戻ります。
洗い物の量はいつもよりも少なくしっかりと浸けていたので簡単に汚れも落ちます。
全部の洗い物を終えたら、すぐに出発となるのですが……。
「雅、乗せて下さいー」
「あー、はいはい」
玄関に用意していた木を持って行こうとすると精霊に声を掛けられて、いつもと違うのを実感します。
「大丈夫です。重たくもありませんから」
「いや、まあ重さもそうだけどそっちじゃなくて、見栄えがね……」
「問題ありませんから」
という事で木を持って肩の上には精霊の入った人形。
不思議な感じですが、精霊の言う通りで肩に重さはほとんど感じないので乗せているのを忘れるほど。
恥ずかしいという気持ちはありながらも一歩目を家から踏み出してみるとまあ何とかなるだろうと気にするのを忘れます。
キョロキョロといつもよりも両目であちらこちらを見てみますが、こちらに視線を飛ばす人はおらず。
そのまま南の扉の所に行くと、いつもの人。
「おっ、今日も精が出るね」
「あ、こんにちは」
いつもの挨拶だけをして、そのまま扉を開けてくれるので扉を抜けていつもの草原へ。
いい風が今日も僕達を迎えてくれます。
少し歩いて人気が無くなると人形の精霊に向けて声を掛けます。
「誰も何も言わないね?」
「ね?言ったでしょう?」
「逆に不思議なぐらいだけど?」
「そういうモノなのです」
「よくわからないけど、そういうモノなのね?」
「ええ。というか、結構肉体と言うのは不便ですね」
「あー、肉体をもったのは初めて?」
「ええ。なかなかに厄介です。うぅ、こんな罰になるとは……」
「食べ過ぎた精霊がいけないんだからね?」
「分かっていますって」
そんな会話をしながら、いつもの場所で風のチェンソーで木を削っていくのですがいつも通りと少し違い、横で精霊が色々と動いているのが結構目につきます。
「なにしているの?結構目につくんだけど」
「この体で何が出来るかを色々とやってみているのですが、結構体が重たくて」
言いながら、ちょっとした拳法のような動きをしてみたりするとキレのいい回し蹴りを披露してくれます。
「おー、結構動けているように見えるけど?」
「よっ、ほっ、とりゃぁ!……よっし、コツを掴めました!中々肉体も楽しめますね?」
そう言うと精霊は「ふっ」と小さく息を吹くと精霊が飛び上がります。
「おぉぉ?飛べるの?」
「ふふん、精霊ですからね。こっちの方が私らしいかなと」
「あー、かもね。帰りは一人で動けそうだね?」
「そうですね、と言いたいところですが魔力も有限ですから。肩を借ります」
「はいはい」
それからもまだ色々と精霊はやっているのですがつい目がそちらに行きそうに。
あまりにも集中が出来ないので困っていると、
「ちょっとそこの森の中で動いてきますね」
「あ、うん。気をつけてね」
「大丈夫です。いざとなったら魔法も使えますから」
そういって森の方へ。
静かになれば、いつも通りに木を削れます。
チェンソーで木を削って形を整えて。
粗方の形が出来あがったら次の木へ。
用意したのは三本でしたが、出来上がったのは二本分で一本は全く手が付けられなかった感じ。
「ふぅ、まあ今日はこんなところまでかな」
日も傾き始め、夕方が近くなってきたので帰り支度。
そして木屑を土に戻してとある程度やる事をやると、森の方から精霊が飛んで帰ってきます。
「ナイスなタイミングですね?」
「うん。丁度こっちも一段落ついたところ」
「では、帰りましょうか」
精霊を肩に乗せて、形の整った二本の木とそのままの木を持って南の扉へ。
いつもの人は、もういなかったので門番の人には会釈だけ。
それにしても本当にだれも何も気にしないのでやはり不思議な感じで、聞いてみることに。
「あの」
「はい、どうかされましたか?」
「人形が肩に乗っているの、不思議じゃないですか?」
「いえ、全然。魔術師の方達のゴーレムみたいなものでしょう?この街では珍しいですが、魔獣を飼っている方達も居ますから、それに似たものと理解していますし」
「あー、なるほど。そう言う感じなのですね」
「ええ。なので逆に可愛いですよね?とか言われると結構構えてしまいますね」
「あ、そういう事は無いので。分かりました、すみませんありがとうございます」
「いえいえ、お気をつけて」
なるほどと思いながら、帰路へ。
そして家へ着いたのですが、家の前にはがーさんが。
「よっ、ちょっと話し忘れていたこともあったから待たせてもらったよ」
「気にせず入っていても良かったんですよ?」
「いやぁ、一応人の家でしょ?勝手に入っているのもどうかなーって思って」
「お気遣いありがとうございます」
「という事で、これで夕食でもお願いできない?」
その手にあるのはかなり立派なカラスミ。
「かなりいいモノですね?」
「分かるね?これを使ったパスタでもと思ってね」
「わかりました」
「ぉぉぉ、なんとも美味しそうな食材ですね」
「分かるねぇ?精霊も」
「ええ、ええ。コレはワインも進みそうですねぇ」
がーさんと精霊が楽しそうに話しているので家に着いてすぐに木刀などを片付けて調理と行きましょう。
カラスミのパスタを作るつもりですが、流石にそれだけだとちょっと寂しいので一緒に使うのはイカ。
渡されたカラスミはかなりいい大きさで硬さはどちらかと言うとやわらかめ。
「んー、結構柔らかいな……」
硬さがあれば、おろし金などでパラパラとおろして和えるのですが、柔らかいのでたらこパスタの要領で茹でたパスタやゆで汁の温かさで和える事に。
イカは通常よりも小さめに切って少し大きいものには隠し包丁を入れておきます。
イカを準備している間にパスタを茹でるお湯を沸かしておいて、しっかりと湧いたら塩もしっかり入れます。
パスタを茹で始める前に、ニンニクをスライス。
皮を剥いて薄くスライスしたニンニクとオリーブオイルをフライパンへ。
パスタを茹で始めるのも同じタイミング。
オリーブオイルにニンニクの香りが乗ってきたらイカを一緒に火に入れていきます。
パスタが茹で上がる前のこのタイミングでカラスミを薄くスライス。
出来上がりに二つ三つ乗せるのでその分を先にはじいて、茹で上がったパスタをフライパンへ入れてすぐにカラスミもその中へ。
フライパンの中でカラスミが溶けていくと全体へ一気に絡まります。
ここで味見。
結構塩味が強いカラスミだと辛くなりますし、薄いと味が欲しくなります。
味が強い時にはゆで汁とバターを入れてすこし薄く延ばすような形にすると丁度いい感じ。薄味の時は塩を少し振っていい塩梅に。バターはコクを出してくれるのであった方がいいでしょう。まぁ、無しでカラスミの味だけで楽しむのもかなりいいので迷いどころではあります。
「できましたよー」
「おぉぉ、いいですねー」
「待っていました」
と、三人分をいつもの調子でつくってそのまま厨房で食べる事に。
「あ、精霊はその大きさだとケーキ用のフォークぐらいの方がいいかな?」
「あー、ですかね?」
「うんうん」
「では、いただきます」
「「いただきます」」
三人で食べ始めたのですが、異変はすぐに起こります。
あ、パスタの出来ですか?勿論最高ですよ。
「すっごく美味しいの……ですが、あれ?」
自分としては三口目を口に運んだ辺りなのですが、精霊の様子が変。
「どうしたの?」
「あの、まだ少ししか食べていないのですが、もう入らない様な気がするのですが?」
「え?」
「ふっふっふっふ」
ちょっといきなり邪悪に見えるような声で笑うのはがーさん。
「当たり前だよ?その大きさなのだから、入る量も少ないに決まっているでしょう?」
「えええええ!?」
「という事は、コレ残っちゃいますね?」
「大丈夫。僕が食べるからね。あ、雅君が食べる?」
「どちらでもいいですよ?」
「じゃあ、お願いして代わりに白ワインでも貰おうかな」
「分かりました」
「うーーーー、目の前にあるのにお腹が一杯。ワインも飲みたいけど、何も入る気がしない!!なんですかコレはぁぁぁぁ!!!」
「胃袋があるから食べられる量は決まっているんだよ。そういう事も分かっていなかったんだね?」
「目の前にあるのに食べられない日が来るとは……」
がっくりと精霊が項垂れる姿はそれはそれは可愛らしいもので。
思わず笑ってしまう夕飯。
がーさんも楽しんでワインを追加で開けるほど。
まだ週が始まったばかりなのに何とも濃い週初めとなりました。
今回も読んでいただきありがとうございます
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誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません
改めてありがとうございます
毎日投稿頑張ります




