★ダンジョン59
階段を降りると、いつも通りのダンジョンの中。
さっきまでいた二十五階が特殊だったのがよくわかります。
「戻ったって感じだね」
「ええ」
少し暗くて、それなりの広さの部屋に降りたのですが敵は居ない様子。
部屋をぐるりと見まわして安全確認。大丈夫そうなので一歩目を踏み出します。
「あれ、リンゴ?」
部屋から伸びている通路は数本あったのですが、そのうちの一本の通路の隣の辺りにリンゴの様な実を付けている木を発見。
「リンゴに見えますね?なんでしょう?」
少し近づいてみるとやはりそれはリンゴの様で、色は真っ赤でかなり美味しそうに見えます。
ですがここに来る前に精霊に聞いていた言葉を思い出します。
「ゴーストアップル?ってモンスターも居るんだよね?」
「あっ」
精霊も思い出したようで、手を伸ばそうとしていた自分の手も止まります。
「触らぬ神に祟りなしかな」
「ですかね。でも、結構美味しそうですよね?」
「まあね。でも安全の方が優先かな」
「そう言われてしまうと何も言えませんね」
手を引っ込めて、そのままにすることに。
そしてここまで移動してしまったのもあって目の前の通路へ進むことに。
「とりあえずここまで来たしこの道へ進もうか」
精霊は頷くように動いたので、そのまま先に進みます。
通路は今までと同じ広さで木刀もある程度振り回すことが出来そうな感じ。
そして長さも今までに戻った様子で、長すぎる事は無くすぐ先に部屋が見つかります。
「居ますね、モンスターが」
「分かった」
腰から木刀を用意して、右手で構えてゆっくり部屋を伺うように進みます。
中にいたのはスタッグビートル。
「コレは、中々怖いというか迫力があるね」
「そうなんですか?」
「うん……」
今まで戦ったモンスター達も全て自分の知っている大きさとは違ったのですが、三歳児ぐらいの大きさで体の半分程もある二本のハサミを持っているクワガタが目の前にいざ表れてみると結構な恐怖を感じます。
ただ、少し見惚れてしまうような黒光りする光沢のある全身は自分の知っているクワガタと一緒で格好良くも見えるもので、その相反する二つの気持ちがなんとも言い難い所。
「やる気満々のようですね」
「やっぱりそう見える?」
精霊の言葉に確認する様に聞いたのですが、
「ええ、来ますよっ!!」
スタッグビートルは既に臨戦態勢になっていたようで、出していた羽をバサバサと動かしたかと思うと一気にこちらへ高速移動で迫ってきます。
結構大きなクワガタが正面切ってこちらへ向かって来る姿はバイクが結構なスピードでこちらへ来る感じに似ているでしょうか?
十メートル以上離れていた気がするのに目の前に大きなハサミを鈍く光らせながら迫ってくるのは恐怖を十分に感じます。
その攻撃を正面から受けるわけにもいかないので避けたいのですが、かなり低空で素早い一撃。ミスした場合はただでは済まないでしょう。
少しだけ右足に力を貯めてグッと右足を強く蹴って左へ二歩分ぐらい強く避けてみます。
するとキャタピラー同様にある程度スタッグビートルも追尾性があるようで多少こちらへ曲がって来たのですが、何とかその一撃を避けられます。
「危ないね」
「今がチャンスです」
「分かった!」
パッと見て分かるほどのやわらかそうな背中としまえていない羽は外骨格と違って柔らかそうに見えます。
精霊の声にすぐに反応して少しだけ追撃を狙ってみたのですが、スタッグビートルは地面へ降りるとすぐに羽をしまっているのでチャンス。
追撃を狙っていたので硬そうには見えたのですが、木刀を強く振り下ろします。
ガンッ
鈍い音があった後に自分の手にその衝撃が戻ってきます。
「硬ったいなー!」
大きな石を切るつもりで叩いた感じ。
ダメージが入ったとは思えない程の硬さの様で、叩き切るつもりだった自分の手の方がやられます。
「また来ますよっ!」
後ろ向きだったのをノロノロとゆっくり直ると、今度はその二本のハサミでこちらを捕まえようとしてきます。
ただ、今の行動と一緒で地面の上ではそれほどの速さは無い様子。
こちらに照準をつけて挟みこもうと来ますが、バックステップ一回で意外と簡単に避けられます。
「強さがチグハグだね」
「ですか?」
「うん、魔法は効くんだっけ?」
「ええ、折角なので魔法剣を見たいのですけど?」
「じゃあ、やってみようか」
いつまでもゆっくりと戦っているわけにもいかないので、木刀を正中に構えて魔法を想像します。
それはいつもお世話になっている風纏いの剣。
剣を振るっても風が刃として飛ばず剣に纏って鋭さを増す様に想像をします。
「風っ!」
声の確定と共に木刀にびゅぅと強い風が纏います。
それを見て警戒をしたのかスタッグビートルは数歩下がると羽を出してまた高速で攻撃をしようとしてきます。
そのままもしかしたら真っ二つに切れるかもしれないとは思ったのですが、もし切れなかったらと思うと突っ立って構えることは出来ず。
距離が近い状態だったのでさっきよりもスピードは乗っておらず。
先程と反対の右に避けてから今度はすぐにスタッグビートルを追いかけます。
グッと力を入れた分駆ける速さも少し上がって、相手が地面に降りる時にはその背中へ到着。
羽が出ている状態の背中を魔法剣で切り降ろすとそのまま綺麗に真っ二つにスタッグビートルが切れます。
そして煙になって魔石を落としたので、すぐにそれを拾います。
「魔法剣だったから一撃だったのかな?」
「どうでしょう?判断の難しい所ですね」
精霊も判断に迷う二十六階の初戦闘は無事勝てました。
今回も読んでいただきありがとうございます
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誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません
改めてありがとうございます
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