明石焼き
美味しい出汁があるという幸せ。
味をみてもかなり今日の出来はいい方。お味噌汁もいいけど、コレに浸ったフキノトウの煮びたしなども浮かびます。
「この美味しい出汁ごとの料理はないのですか?」
「出汁を出汁のままって事?」
頷くように精霊が動きました。
出汁を出汁のまま。
出汁の美味しさをそのままに出汁巻卵でも作ろうかと思っていたのですが、出汁をそのまま楽しむとなれば、明石焼きの方が美味しそう。
「明石焼きは作ったことないけど、精霊、検索できる?」
「明石焼きですね?」
精霊はマウスポインターのようなよくわからない動きをして検索を掛けているようで、少しの間は静かに無反応。
「検索できました。……案内できそうです」
タコ焼きであれば何度か作ったことがあったので、検索するほどではなかったのですが、明石焼きは一応調べてみないと何とも。
「なにやらよくわからない道具や、武器の様なものを使うようですが、これであっているのでしょうか?」
精霊が悩んでいるようですが、多分それで大丈夫。
「材料は何が必要そう?」
「材料は、薄力粉、卵、水、出汁、タコ。そして、付けダレ?で出汁と醤油となっているみたいです。それと薬味?で三つ葉、紅ショウガ、ネギもあるといいそうです」
「なるほど。ありがとう」
言われた食材を冷蔵庫から出して、パパッと準備をしましょうか。
先に忘れると悲しいので薬味から。
三つ葉とネギは小さく切りそろえて、紅ショウガは薄口のパックが何処かにあったハズ。
「あった」
薬味の準備が終ったら、タコ焼き器を。
えーっと、ここの奥辺りに……。こっちもすぐに見つかります。
「大体準備はオッケーかな」
いや、まだですね。出汁を分けて、付ける汁を先に完成させておかないと。
出汁を別の鍋に移して、薄口の醤油で塩味を足して味見。
「ん、少し濃いかな?」
水を足して濃さの調節をして、ちょっとだけ格好をつけるためにも徳利に。
七割程度入れたら、さらに鍋の準備。お湯を沸かしておきます。
これで殆どの準備は完了。
違った、忘れちゃいけない、茹でタコ。
これも食べやすい一口大に切りそろえておかないと。
今度こそ多分準備完了、かな?
「精霊、作るよー?」
「なにやら実験を始めるような感じに見えるのですが、調理が始まるのですよね?」
「そそ。楽しんで」
粉の分量などは今までの勘で。どうしても失敗が続くときは精霊に聞けばいいでしょう。
薄力粉をふるいにかけて準備をしたら、ボウルに卵を割ってしっかりとホイッパーなどで白身を切っておきます。
卵を溶いたボウルに水、ふるいにかけた薄力粉、出汁を入れて少し生地を休ませます。
生地を休ませている間に、タコ焼き器の準備。
タコ焼き器を火にかけて、キッチンペーパーなどを使って丸い中にしっかりと油を馴染ませます。
しっかりとタコ焼き器を温めて、油がなじんだらいざ調理開始。
少し休ませた生地を七割程度全体に入れていって、タコを入れるとちょうど一杯になる様に。
表面が少しだけ膨らんで、フチの部分が固まってきたらひっくり返すような感じでくるりと回します。
「おお、くるんってなりました」
「上手くいってよかったよ」
普通のガスコンロの上に置いているタコ焼き器なので、穴は12個。
生地が自分の想定よりも少し重たい感じがしますが、逆にそれがひっくり返しやすくて助かります。
全体が一度ひっくり返せたら、徳利を沸かしたお湯に入れて一気にラストスパート。
裏側もしっかりと焼き色が付いたら出来上がり。
火を落として、お皿に乗せて、徳利の出汁がしっかり温まったら後は食べるだけ。
「これが、明石焼き?」
「そう。それで、食べ方はこの出汁に付けて食べるの」
「なんと、この出汁に付けて食べる?」
徳利はカンカンに熱いので、上の熱くない部分をひょいともって、少し深さのある皿に出汁を入れます。
最初は薬味無しで。
熱々の出汁にこちらも出来立てで熱々な明石焼きを入れて、フーフーと冷ましながら口へ。
「あふぅっつ」
分かってはいても、それでも熱い。
少しだけ熱さが和らぐと、明石焼きはホロホロとほぐれて口の中へ消えていきます。
「んー。さいっこー!!」
ズズっと出汁を啜り、今度は三つ葉を加えてもう一つ。
薬味が無くても美味しいものに薬味が入ると更に美味しい。
生地に入れている出汁と付ける出汁の元が一緒だからか、相乗効果でも生まれているのか、とっても美味しくて、スルスルと明石焼きが口の中へ。
自分ばかりが楽しむようにパクパクと食べているので横を確認してみると、精霊も中々器用に楽しんでいます。
精霊は出来たお皿のモノを食べる事しか出来ないので、出汁に浸けた状態で出すのですが、減る速さもかなりのモノ。
「次をお願いします。あ、出汁もタップリと。紅ショウガは味が結構変わりそうですが、ええ、たっぷりと入れてみてください」
自分の分を食べながら、精霊のお世話もするような感じで。
気がつけば一人六個ずつの十二個はすぐに終わってしまいます。
「追加をお願いします」
「お願いされなくても作るよ」
美味しい出汁があるからこその料理、今日はアタリですね。
同じ事を後五回程繰り返すことに。
「美味しかったですね」
「うん。美味しかったね」
少し早めの休日の夕食が終って、片付け。
色々と今日は出したのでしまうモノも結構あります。
「少し遡りますが……」
精霊がなにか疑問に思ったのか聞いてきます。
「シャワーとはなんなのでしょう?」
「ん?シャワー?」
今日は少し走ったので、帰ってきてすぐにシャワーに浴びたかったとこぼしたことを思い出します。
「えーっと、水が粒になってバシャバシャでる、風呂場で使う奴なのだけど……」
言われてみると説明が結構難しいもので、しどろもどろになりながら何とか伝えてみます。
「検索を独自に掛けてみたのですが、シャワーヘッドというアイテムから水が出ている画像と雅が言っているのは酷似していますが、それでいいのでしょうか?」
今は手元にスマホがあるわけではないので、確定は出来ませんが多分ソレで間違いはなさそう。
「多分一緒だと思うよ?」
「なるほど。ちょっと調べ物をしてきます」
それだけ言うと精霊はふわりと消えてしまいます。
美味しいものを食べるとヒントをくれたこともあったので、少し気に掛けてくれているのかな?程度に思って、いつも通りにお風呂場へ。
水を張って、火を入れて、お湯を作って。
何やかんやと言っても、お風呂にゆっくり浸かるとしっかり疲れがとれるもので。
いい休日を過ごせました。
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