明太マヨの芋グラタン
知り合いは食後に少し話をしようとコーヒーを注文したので他のお客さんにも確認をとると、皆さん欲しいという事でコーヒーを出すことに。
全員に行き渡って、一段落がつくころに声を掛けてきます。
「今日で丁度五日目。このまま来週もやれそうかい?」
「ええ。まさかこんな世界に来られるとは思っていませんでしたけどね。やっていけそうな気はします」
それは素直な感想で。いつか持ってみたかった自分の店を高校卒業と同時に持てるとは思っていなかったので、それはとても嬉しい限り。
内装もバイトをしていた場所と変わらないので勝手も分かるので渡りに船。
「それは良かった。そういえば、魔法は順調?」
「精霊も的確なアドバイスをくれるので、かなり楽しめていますね」
本で読んだことのある様な世界にまさか自分が渡る事があるなんて。
頭で色々と思い浮かぶ魔法もあるけど、まだ魔力が足りない気がするので試せていないものも結構あったりします。
「そっかそっか」
笑いながら知り合いがコーヒーを一啜り。
「一応、魔法の都合もあるからどうしてもの場合以外はアッチの世界には渡れないけど、大丈夫?」
「大丈夫ですよ。小さい頃から結構旅とか出ていましたから。最初の約束通りだと二十歳の時には魔力的に行けるんでしたっけ?」
「そそ。星の並びによる魔力上昇は二年後だね。手紙などは僕に渡してくれればどうにかするから。あ、預かった場合も渡すからね。どうする?」
それはすぐに手紙を出すかと聞いてくるように右手を出して聞いてきます。
「まだ、大丈夫ですね」
親元を離れて一週間。
懐かしむ気持ちがゼロだとは言えませんが、まだそれほどでもありません。
「ご両親に怒られない?」
「便りが無いのが良い便りって言うような父ですし、母は父の言う事をよく聞く感じなので多分大丈夫です」
うちの家庭はちょっと変なのでその辺りは問題なさそう。
「まぁ、本人がイイなら構わないかな。とりあえず五日目の確認が出来たし、いつでも相談には乗るけど、次は半年後辺りかな?」
知り合いが言います。
「今はまだ慣れてないですからね」
色々と分かって来るとその度に聞く事が出てくるかもしれません。
でも今すぐはまだないかな。
「魔法についてだったら僕よりも彼等の方が詳しいかもしれないからね。質問があったら声かけてよ」
そう言えば、二日目から来ている四人に昨日からの二人の六人は誰なのでしょう?
「聞いても大丈夫なのですか?」
僕の問いかけに、
「何でも聞いて。まあ各自得意不得意はあるけどね」
「教えるのは初めて。大丈夫だと思うよ?」
「っすねー。実技になるとあんまりっすけど」
「……がんばる」
四人が笑顔で言うと、
「料理はおいしくても、まだ私は教えられないかな」
「そうねー。私達はもう少し経ってからになるかもしれないわね」
後の二人は少しだけまだ僕には早い様子で、でもその時になれば教えてくれる空気はあります。
「まぁ、まだ四属性をかじった程度ですから。色々と理解して、ヒントが必要になった時に教えてもらえると助かります」
そんな感じで話がまとまろうとしたのですが、
「ダメでーす。ダメダメでーす」
ポンッという音と一緒に出てきたのは精霊。
スーパーボールの様なその体を必死に素早く動かして作っているのは大きな✖マーク。
「雅は私と一緒に育つので邪魔でーす」
いきなりの出現に驚いたのか、ピタリと時間が止まったように無音に。
「あれ?聞いている?って、あー、がーちゃん見える様にしてー?」
知り合いに言うと知り合いは一呼吸おいて、頷きます。
「ほほぅ。なるほど?」
「これは、しっかりとお話が必要そうですね?」
「なるほどねー」
「……(何度も頷きます)」
「おやおや」
「これは……なるほど」
六人が六人共に訳知り顔。
「これはちょっと日が悪いかもしれないね?またゆっくり話そうかな。じゃ、ご馳走様」
それだけ言うと、知り合いはさっと逃げる様にお店を出ます。
他の六人は慌てることなく、追いかけることも無く。
「あ、別に急がなくてもゆっくりコーヒーを飲んでからでいいですからね」
一応その一言だけ告げると、
「うん。ありがとう。ちょっとみんなで話をしてから出るよ」
一人がそう言って、コーヒーを飲みながらちょっと会議みたいな空気。
邪魔をしては悪いので、厨房に戻ってみると精霊が姿を現したまま浮いています。
「私がいるんだから、大丈夫だからね?」
「うん。ありがとね」
「御礼はいいから、オムレツ食べたい。おなかへった」
もう少しお客さんはいそうなので、精霊の分だけ作りますか。
「あ、そう言えばあのフレークを作るのですが、ヒントを」
精霊がいきなり言いました。
「なに?」
「形をそろえるといいかもしれません」
形をそろえる?フレークはシートに伸ばしてそれを焼いています。
クッキーの様に丸くそろえるという事?
いや、どういう事だ?
思わず考え始めると手は止まってしまうのですが、この後自分の分も作りたいので明太マヨネーズを少し多めに作って、さっき同様にオムレツを作って。
「はい。お待たせ」
精霊に出してあげると、精霊は今日も美味しそうに食べてくれます。まあ、見えているのはスーパーボールなのですが、そんな気はするってところです。
そんな精霊が、食べるのを見ながら形をそろえる事を考えてみます。
「形をそろえるか」
「おーい」
客席から声がかかったのでそちらへ行くと、六人共コーヒーもいい感じに減って話が終ったのでしょう。
「少しゆっくりしすぎてすまないね。今日も美味しかったです」
「いえいえ。いつも食べて下さってありがとうございます」
僕がお礼を言うと、
「あの人の思い付きにしては凄く良い事だからビックリだよ。休日はゆっくりして、また来週から頼むね。ご馳走様」
ご馳走様と言われながら他の六人もぞろぞろと出て行きます。
お見送りをしたら、お昼過ぎなのですが時間も経ってそんなにお腹の減りは無く。
でも夜までは持たないという微妙な具合。
食器を片付けて、ある程度洗いものも済ませたらゆっくりとした自分の時間。
思い浮かぶ料理は簡単で夜までもたせるには十分。
パパッと作ることに。
「おや、何か作るのですか?」
「まだ少し食べられる?」
「勿論」
という事で精霊の分も。
使うのはジャガイモ。そしてさっき作った明太マヨネーズ。
ジャガイモは皮を剥いて、芽を取って少し薄めにスライスをして水をサッとかけて耐熱容器に乗せたらふわっとラップをして七分程度温めます。
その間にグラタン皿を準備。
バターを軽く内側に塗って、準備をしておきます。
ジャガイモがレンジで温まったらフォークの背で軽く潰してグラタン皿にジャガイモを敷きます。その上に明太マヨネーズを乗せて隠す様にもう一度ジャガイモを乗せてとミルフィーユ状に層を重ねたらあとはオーブンで焼き色を付けるだけ。
「形をそろえるって、あ。あああ」
そういう事か。なるほど。
「精霊、意味わかったかも」
「そうですか。この後やってみてはいかがでしょうか?」
「うん。そうするよ。まあその前に腹ごしらえだね」
「いい香りがしています。そろそろですか?」
「うん。そろそろだね」
出来上がったのはジャガイモと明太マヨネーズのお手軽グラタン。
「熱いから気を付けてね?」
僕の言葉よりも先に精霊は食べ始めていましたが熱さは大丈夫な模様。
「これはホクホクと、プチプチと、トロトロと。美味しいです。オムレツのトロトロの方が私的には上ですけどね」
精霊の食レポは中々独創的で面白く聞いていて飽きません。
そんな昼下がり。
今日も何とか乗り切れました。
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