★ダンジョン39
ウォーキングパームの花が咲いて、周りは甘い匂いから甘ったるいちょっと不快なほどの匂いに変わってきているのですが、寄ってくるモンスターはアントばかり。
幸いなことに距離をウォーキングパームと離しているので、通路に匂いに釣られてくるモンスターを倒すだけで済んでいるのですがお目当てのレイディビートルが見つかりません。
「いけるとおもったんだけど、来ないねぇ」
「ですねぇ。私も聞いた瞬間にイケると思ったのですけどね」
花をつけて十分程度。
アント以外にもアントイーターまで釣られ始めているのですが、アントイーターもアントを食べながら匂いに釣られてと気もそぞろの状態なので倒すのはそれほど大変でもなく簡単に倒せているのでいいのですが、コレは困った。
「ダメだね。居ない」
「ですねぇ。他に何か気が付いた事とかはありませんか?私も少し予想を立てようと思うのですが」
「んー、気が付いた事になるのかは分からないけど、ちょっとこの階はおかしい気がするかも」
「オカシイですか?」
「うん。明らかにモンスターが少ない気がする」
前回のアントが居た階を思い出すとその差は顕著でもっと一杯アントが居ました。それがこの階にいるモンスターは他の階に比べてぐっと少なく感じるほど。アントを倒してリポップするのを待っていても結構時間がかかったのはこの辺りのせいかなと思う程。
「言われてみれば少ないかもしれませんね」
「うん。だから、居る可能性は高いと思うんだよね」
「なるほど。でも、見つからないのですよねぇ」
「だねっと、またアントが来ただけか」
そう言った瞬間、違和感が。
それは先程の身体強化を切るときに感じたモノと似た感じ。
「今一瞬、気配があったかも」
「レイディビートルですか?」
「いや、分からないけどでも周りにはいないよね?」
「ですね。まあちょっと裏ワザを使えばそういう事も分かるかもしれませんけど」
「裏ワザ?」
「そうです。マップという方法です」
「マップ?」
言われて思いつくものは言葉通りの地図。でもそれが裏ワザかと言われるとそれほどの効果には至りませんが、視点をゲームで考えてみるとすぐに納得。
「ただ、つまらなくなってしまう可能性が高いので……」
「うん、言いたい事は分かるかも。とりあえずかなりヤバい状況や命の危機以外で使っちゃうとつまらなくなりそうだね」
「そうなのです。という事で意味は分かった感じですか?」
「まぁ、ね。一から考えるとするとちょっと敵が何処から湧くか分からないし困りそうだから、精霊にお願いしてもいい?」
「ええ。今回限りという事でとりあえず私が使いましょう」
二人で頷くと、精霊が魔法を唱えてくれます。
「マップ」
すると精霊の目の前に一枚の地図が出来ます。
横から見せてもらうように確認すると、地図の形は歩いていた時と一緒で六つの部屋が七本の通路でつながれている思っていた通りの図形。
「形はやっぱり合っていたみたいだね」
「ですね。さて、あとはもう一度魔法を唱えるだけですが、いいですか?」
「勿論」
ということで精霊に確定を促すと、
「敵の位置」
その言葉と共にマップに表示されるのは赤い点。それがマップにぽつぽつと出ます。
各部屋に小さな赤い点が数個とやはりこの部屋には大量の赤い点。
「あれ?雅は驚かないのですね」
「まぁ、予想していたからね。因みにだけどレイディビートルって魔法は?」
「効きません。その代わりヒットポイントも低い様ですが、色々と厄介なようです」
「厄介?」
「死んだふりをしたり、強烈な匂いの酸をとばしたり、素早い回復行動をしたり」
「それはかなり面倒だね」
ボーナスモンスターの感じはしますが、簡単に倒させてくれないのもゲームと一緒。
魔法が効かないとなれば木刀で倒すしか方法がないようですが、さて倒せるかどうか……。
いる場所が分かっているので先に倒すべきは花付きのウォーキングパームなのですが、レイディビートルに逃げられることを想定するとこのまま倒した方が確実な気もします。
少し悩んで、結局出した結論はこのままレイディビートルを一匹狩ってみる方向で。
「さてと、見えていないけど花の周りに居るはずだよね」
「ですね。……あ、見つけました」
「え?どこどこ?」
「あの花のちょっと下の模様の境目の……」
え?どれどれと、言われるままにウォーキングパームの花を見て、視線を下げて模様の境目?当たりを見ると、同じく発見。
「こんなに小さいの?僕の知っているてんとう虫より小さい気がするけど」
今まで見てきた敵はどれもこれもかなり大きく育っている事が多かったので、大きくなる事は想像していましたが、逆に小さく進化をしている感じ。
指の先程度の大きさを想像していたのですが、大きさで言うと僕の知っているてんとう虫の半分以下。
よくそんなものが見えると思うかもしれませんが、それもそのはず。身体強化をしていてやっと見える感じ。これは裸眼では見つけることはかなり難しそう。
「幸運の敵として有名ですし、倒すとスキルを獲得できるという噂もあります」
「なるほど。とりあえず一回戦ってみるつもりだけど……どうだろう」
捕まえるのは何とか頑張れば出来そうですが、倒せるかと言われると難しそう。
何匹かいるはずですが見つかった一匹をとりあえずウォーキングパームからこっちに向けてみることに。魔法も効かないらしいので、木刀でウォーキングパームごと突きの一撃を仕掛けてみることに。
身体強化状態でグッといつもよりもタメを強く、突きを繰り出すとしっかりと攻撃はウォーキングパームにヒット。こちらを認識したようでウォーキングパームもやる気満々でこっちに蔦を伸ばしてきます。
それを軽いステップで避けながら地面を見ると間に挟まってダメージを与えられたのか、星が一つのてんとう虫がひっくり返っています。
ウォーキングパームを無視しながら戦えるほど強くなったわけでもないので、木刀を持つ手と反対の手で落ちたてんとう虫を掴んで一気に戦線離脱。
手の中には一匹のてんとう虫の感触が残ったままですぐに通路に飛び込みます。
「つっう」
いきなりの激痛が左手に走り、思わず手を開いてしまうと左の掌は真っ赤。
これでは両手で木刀が握れない程のかなりの痛さです。
「雅っ、大丈夫ですか!」
「すっごく痛いけど、多分大丈夫。とりあえずレイディビートルと戦う」
手を開いてしまうとそのまま落としてしまったレイディビートルですが、死んだふりをしているのか黄色い酸をまき散らしていて、逆に視認はしやすい程。
「叩くっ!」
片手だけでの一撃なのでそれほどの威力にならない気もしますが、それでも身体強化中。弱い一撃にはならずダメージを与えられると思っていたのですが、帰ってくるのは地面を叩いた時と同じような反動。
「マジかっ、すっごく硬い」
「そう言うモンスターですから。無理をし過ぎないでくださいね」
「うん、分かっているけど……これは倒せないかもしれない」
どう表現したら分かりやすいのかわかりませんが、スライムでもボールを叩いたような感じで一応叩けている感触があったのですが、今回はそう言う感じは微塵も無く。ただ地面を叩く感じの気分。ついでにいえば左手も変わらずでじゅくじゅくと痛みます。
「無理をしても仕方ないので、この辺りにしますか?」
「悔しいけど、そうだね。レイディビートルが見られただけよかったって事で」
「ですね。それでしたらもう少し下がってまずは回復薬を飲んでください」
「わかった」
こちらの敵意を見透かされているのか、追撃は無くそのままリュックを降ろしてラベルのある回復薬を一つすぐに飲み干します。するとエフェクトが左手に。
焼けただれていた左手は綺麗な皮膚に戻って、痛みもすぐにひいていきます。
二十階にして全く歯の立たない敵に出会うとは。
思っても無い強敵が出て来る結果となりました。
今回も読んでいただきありがとうございます
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誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません
改めてありがとうございます
毎日投稿頑張ります




