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竜田揚げ

 ぼーっとしていても時間は過ぎてしまうもので、お昼までの時間はどんどん減っていくので少しだけ焦りを覚えながらもいつもの様に何を作るか考えます。


「昨日はご飯だっけ?麺かパンがいいんだけどうーん……なにかいいお昼になりそうなものは無いかなぁ?」


 ひとりごちながら今朝のランニングに何かヒントになりそうなものは無かったかなと少しだけ思い浮かべてみると、意外といい案が出て来ることも。

 饅頭を買ったお店の近く、何か作業をしていたのを見てそのまま通り過ぎたのを思い出したのですが、確かあそこのお店は……。


「ご飯にもパンにもできるかな?アレなら」

「雅、お昼が浮かんだのです?」

「うん。この飲み物のスッキリ感も一役買ったよ。決まったら早く作業を始めないと」

「楽しみですが、何を思いついたのです?」

「唐揚げ、いや竜田揚げかな」

「その二つは違いがあるのです?」

「所謂諸説あります的な感じかなぁ」

「そうなのですか。まあ、食べられれば私は十分なので」


 それだけ言うと精霊は消えてしまいます。

 とりあえずお肉を漬けたいので、考えながら手を動かすとしましょう。


 使うお肉は勿論鶏肉なのですが、部位はムネやモモに肩肉など人によって好きな部位が違うので色々な部位をごちゃまぜで。一口より少し大きいぐらいに切りそろえます。お肉の準備が済んだら、肉に下味を醤油、お酒、みりん、お酢、そして生姜のしぼり汁。

 コレに漬けてあとはお客さんが来た時に衣をつけて揚げるだけ。

 下準備がこれだけで済むのは助かるのですが、さてメインをどうしましょう。


「精霊いるー?」

「はい、ここに」

「竜田揚げがお昼でるんだけど、なにと合わせたい?ご飯、パン?ちょっと作りづらいけど一応麺もありかもしれないけど」

「これを揚げるのですよね?でしたらご飯がいいです。ただパンも気になります」

「ん、わかった。じゃあご飯を炊こうか」


 うちの食いしん坊が食べたいというメインが多分お客さんも嬉しいだろうという事で、ご飯をとりあえず炊くことに。

 流石にコレだけとはいかないので、お味噌汁はシンプルに豆腐と油揚げ。


「もう少し何かあった方がいいか」


 添えるとなると、最初に思い付くのはサラダ。

 でも、ポテトサラダ程重たいとちょっと大変そうなので、麺を外した分をここで補填するとしましょう。


 マカロニを軽く塩を入れて茹でている間に、色合いにもなるのでプチトマトを四等分。ついでにハムもプチトマトやマカロニにそろえて細かく切ります。

 後は茹で上がったマカロニにくっ付かないようにオリーブオイルをまぶしてから三つ合わせてマヨネーズ、レモン汁、黒コショウで味付け。足りない様であれば少量ここで塩も足せば出来上がり。

 竜田揚げが茶色で、横に赤と黄色のこのサラダ。緑のレタスを添えてと頭の中で想像するとなかなかいい色合い。


「あとはお肉の漬かり具合か」

「雅、さっきの少し疑問に思ったので教えてもらってもいいですか?」


 独り言に反応するように精霊が聞いてきます。


「さっきの?」

「ええ。唐揚げと竜田揚げの違いです」

「あぁ。単純に言うと味付けの違いかな?」

「味付けですか?」


 唐揚げと言うのは下味をつけずに又は下味をつけて揚げたモノ。

 竜田揚げと言うのはしっかりとした下味をつけて揚げたモノ。

 二つだけを聞くと、ん?となるかもしれませんが唐揚げの中の種類として竜田揚げがあると思えば一番分かりやすいでしょうか?

 広義的にいえば衣をつけて揚げれば唐揚げなのですが、そこに下味が付いていないのに竜田揚げというのはちょっと違うという風な感じ。


「何となく分かった?」

「という事は、今日は竜田揚げと雅は言っていましたが唐揚げといってもいいという事でしょうか?」

「まぁ、そうね。ちょっとした拘りみたいなものだよ」

「拘りというのはいいというか厄介と言うか」

「食べる分にはそう変わりないからいいんじゃない?魚でも両方あるけど、唐揚げは味を付けないって事で言うとそれだけ臭みも無いってことだからね」

「どういう事です?」

「色々な説があるからキッパリとこうだっ!とはならないけど、下味をつけるっていうのはお肉が新鮮ではなくなって臭みを感じるからそれを誤魔化すためにも下味をつけたわけだし、その流れでレモンが添えられているっていう説もあるの」

「なるほど。でも今日のお肉は臭くはないですよね?」

「勿論だよ。でもそういう時代の流れが今までに続いてきているわけだから、そういうモノも大事にしたいなって思って、下味をしっかりつけているから今日は竜田揚げね」


 この話はおしまいとばかりに、ちょっと強めに話を切ります。

 お味噌汁は具材を決めていますが、他の準備を先にしていたのでまだ出汁がとれていないのでお味噌汁の準備もしないといけません。

 どうやらこちらが忙しいのを精霊も理解したようで、頷くような動きをしたまま消えます。


 それから忙しく、ご飯が炊けるのを待って、お味噌汁を作って、お皿にサラダなどを盛って準備を済ませるとそろそろいい時間。


「ふぅ、何とか間に合ったかな」

「雅、今日は味見をしないのです?」

「止まらないから。竜田揚げや唐揚げのときはしないの」

「それほど美味しいのですかっ!?」


 ちょっと煽り過ぎたかなと思いながらも、そのぐらい美味しいのでちょっと危険なのはその通り。


「皆さんの前に食べたいと思ったのですが、我慢が出来なくなりそうですね……うぅぅ」

「もうすぐお客さん達が来る時間だから、先に食べる?」

「隠し玉は無いですよね?」


 手札がすべて出そろっているのに、どうやって隠せというのでしょう?


「ないよ。ってことで、食べる?」

「お願いします」


 という事で先に精霊の分を作りましょう。

 油は温めておいたので、あとは竜田揚げを揚げるだけ。

 今は精霊の分だけなので漬けているボウルから精霊の分だけ取り出して片栗粉を掛けます。人によっては余分な粉を落としますが、ボリュームにもなるのでわざとボロッと大きくなってもオッケーとばかりにちょっと多めに。しっかりとお肉に衣がまぶされたら油の中に。


 ジュワアァアア


 いい音が作っている僕の食欲も刺激してきます。

 お肉はいい音で揚がっていきます。途中で一度ひっくり返して時間にすると七分前後。

 今日はずっと常温で漬けていたのでお肉も常温なのでそのぐらいですが、一晩冷蔵庫などで漬けている場合は一度常温に戻さないと揚げる時間が伸びて衣が焦げ色になってしまうのでそれだけは注意ですね。


「よし、いいかな。精霊、出来上がったよ」

「おおぉぉ。いい香りで、美味しそうです」

「どうぞ、おあがり」

「いただきます」


 久しぶりに精霊が食べるのをじっと見られたのですが、サクッといい音。

 揚がり具合も丁度よかった様子。自分も食べたくなりますが、多分そろそろ皆さんが来る頃。この空腹感で作るお昼は美味しいものが出来そうな気がします。






今回も読んでいただきありがとうございます

目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです

誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません

改めてありがとうございます

毎日投稿頑張ります

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― 新着の感想 ―
[一言] 唐揚げ定食は永遠に不滅です。
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