炊き込みご飯
漬け丼よりもわさび丼の方が盛況になっていた気もしますが、まあどちらにせよお客さんが喜んでくれたのであれば、良かったという事で何とかお昼も終わって後片付け。
残ったわさびを全てすりおろしてかなり贅沢なわさび丼を自分用と食べ終わったハズの精霊の分として作って、それを食べたながら残りの漬けも終わらせようとしたのですが、思った以上に残ってしまった感じ。
「お夕飯でも漬け丼が食べられるのは嬉しいですが、どうしたのですか?そんな悩ましい顔をして?」
「このまま食べるのもいいけど、何か別のモノにもできないかなーって」
「別のモノと言うのはいつもの様なアレンジの何かですか」
「そそ。この漬けに使ったタレは煮魚の煮汁にしてもいいぐらいいい味にはなっているはずなんだ。でも刺身を入れているから火を入れたいなと思うと、どうしたらいいかなーって」
マグロなどを食べきって煮魚にするのも悪くありませんが、なんというか方向性が一緒な感じがちょっと負けたような気分。
しっかりとアレンジしきった感じがいいなぁと悩みながら食べていると、
ツーン
凄い当たりを引いたのか、鼻に一気にわさびが香ります。それはもうえらく強烈な、一瞬で目元に涙が浮かぶほどの凄いヤツです。
「水っ、お茶、なにか飲み物っ」
言葉を発しても、精霊が何かをしてくれるわけではないのですが思わずそんな言葉が出ます。
十秒が経って、ツーンが少しずつ抜けて、三十秒が経つとある程度大丈夫になって、一分後には大きく息を出来るほど。まあ、目元にはシッカリと涙がうかんでいるのですが、
「いやぁ、効いたなぁ。でも、たっぷりのわさびって感じが最高」
「その良さがまだ私にはわからないのですが、まあわさび特有の美味しさというか香りと言うのはよくわかったのですがね」
「そこは僕もまだ十八年だけど、年月が経つと分かってくるんじゃない?」
「年月ですか?」
「うん。小さい頃は好きじゃなかったモノが大人になると好ましくなる話はよくあるし、逆に小さいときから好きなものはずっと好きかと言うと、食べ飽きる人も居るみたいだから」
「食の奥は深いのですね」
「だね」
そんな会話をしながらの、ランチ終わりの厨房での話をしていると、わさびの辛味で一つ思いつくものが。
「いい一品浮かんできたかも」
「言っていた、漬けのタレのアレンジですか?」
「そそ。まあ急いで作る予定も無いから一回片付けを済ませて、他の事をしてからだけどね」
「気になりますが、仕方ないですね」
食事を終えたら片付けを。
お昼の片付けはいつも通りに洗って拭いて、元の場所に戻すの繰り返し。
いつもの作業なのでそれほど時間もかからずに終わります。
「さて、今日はなにするかな」
家から見える外の様子は結構な雨模様。
何となく外に出る気も起きないので、家で出来ることを考えることに。
とりあえず考え事をするという事で、コーヒーを淹れてゆっくりお茶をしようとすると、
「私の分もお願いします」
「はいはい」
一人分も二人分も大して変わらないので精霊の分もコーヒーを淹れます。
「いざ暇になると、やることが見つからないものだね」
「でしたら、魔法の練習がイイのでは?」
「いつもやっているけど、同じモノ?」
「ですです。特に六属性の玉の練習をお勧めします」
「因みにそれはなんで?」
「ダンジョンで色々な魔法を使うようになったようなので、六属性のバランスが偏り始めている可能性があるので、それを平均的に戻す為にもという所でしょうか?」
バランスが偏り始めている可能性?
まぁ、ダンジョンだと土の魔法が多くて、木刀作りは風と土。家の中では火と水が多くて、闇と光はまだちょっと考えていないところもあって言われてみるとバランスが悪いかもしれません。
「それって、魔法を使えばすぐにわかるの?」
「バランスが悪くなっていればすぐにわかると思いますよ?」
「ん、じゃあすぐにやってみようか」
コーヒーを置いて木刀などを置いている少し広いスペースのある一階の部屋へ。
そこで六属性の玉を作ってみます。
「六属性の玉っ!」
言葉で確定をしてみると、六つの同じ大きさの玉がゆっくりと自分の周りを回ります。
「どお?バランス悪い?」
「大丈夫そうですね。というか、かなり動かしやすくなったのですか?」
「まぁね。お湯の操作もそうだけど、木刀ややすりで魔力の使い方が少しは上手くなってきているのかも」
「確実に成長していますねぇ」
精霊も見ている六属性の玉は僕の周りをかなりの速さでクルクルと回っています。ついでに言えば、前に作った時よりも玉の一つ一つは大きくなっているのですが、その辺りについては精霊も何も言ってくれないのでどうなのかなーと思う所。
「じゃあ、もう少し動かす訓練をしましょう」
「わかった」
精霊に教えてお貰うままに、一時間程度魔法の練習を。
魔法の練習も思っている以上に精神力を使う様で、終ってみると結構へとへと。
「さ、雅。そろそろ夕飯の支度を」
「え、あー。ってまだ一時間しか経ってないから夕飯には早くない?」
「私のお腹は夕飯が近い事を知らせているのです」
「君のお腹だけだろうけどね?」
笑いながら、ちょっと休憩とばかりに冷めてしまっているコーヒーに牛乳を入れて飲みなおしてから、夕飯の支度を。
使う材料はお昼の残りの漬けのタレ。勿論それだけだと足りないので、他の具材を使います。メインはお米で先に洗って水に浸しておきます。
次はマイタケ。手でちぎってちょっと大きいぐらいで揃えるだけ。
包丁とまな板を出して、ニンジンの皮を剥いて短冊切りから千切りに。他にもいろいろと具材をいれてみてもいいのですがあえて今日はこの三つのシンプルな感じに。
「結局何を作るつもりなのでしょう?」
「あー、炊き込みご飯だよ」
「なるほど?」
「まぁ、見て居れば分かるよ」
作り方はシンプルで、浸水したご飯に他の具材も一緒に入れるだけ。最後の味の決め手を漬けタレに任せるのですが、更に美味しくなる様に願いも込めて一緒にいれるのは漬けた鯛。マグロも入れてもいいかと思ったのですが、あえて入れずに。
入れない代わりにマグロの漬けタレも一緒にご飯を炊くところに使うので、手元に残るのは漬かったマグロだけ。
「そのマグロは?」
「炊き込みご飯に乗せようかとおもって」
「おぉぉぉ。楽しそうですね」
こんな感じで炊き込みご飯を作って、出来立てにマグロを乗せたのを夕飯にだすことに。
いつもの夕飯よりはかなり早い時間でしたが、今日も楽しい夕食が過ごせました。
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