本わさび丼
ランチの準備は完了して、後は待つだけな感じになってから今日のランチに一つだけ足りなかったモノがある事に気が付きます。
「いや、でも。この冷蔵庫なら」
季節も欲しい物にも旬の季節というのがあって、ギリギリ時期には間に合っていますが多少微妙なところ。
そんな思いもありながら、冷蔵庫を開けてみると……それはあります。
「ん?それは何でしょう?」
「あー、見せた事は無かったっけ?」
「という事は、私も食べたことがあるのです?」
「勿論。というかお刺身の時に使っているはずだよ」
願いかなって取り出したものはワサビ。
今日の漬け丼、更に美味しく食べるためにも欲しい一品。
「コレを食べるのです?」
「あー、そのままじゃないよ?勿論」
わさびは多少の土汚れが付いているので優しく手で洗って少し黒い部分を包丁などで落として形を整えて葉っぱの部分は落とします。この葉っぱの部分も醤油などに漬けると、わさびの葉のしょうゆ漬けになるので、捨てずに後で処理するのもあり。
後は擦るだけの状態にして、こちらの準備も完了。
「こんにちは、お昼を食べに来たよー」
「こんにちは、いらっしゃい」
お客さんが丁度来たところなので、いつも通りに席に案内。お水とおしぼりを渡したら、人数分をパパッと作りましょう。
ご飯をよそって、漬けを二種類乗せましてアラ汁もよそって出来上がり。
パッと見るとかなりシンプルですが、このまま食べてもよし。一緒にこの後出す冷たい出汁や温かい出汁で冷やし茶漬け風やちょっとだけ漬けに火が通る温かい出汁による茶漬けもいい感じ。
そして、どの食べ方でもあるだけでかなりのアクセントになるのはさっき用意したばかりのわさび。
「どうぞ、お待たせしました。人数分とは出来ませんでしたが三つ用意しましたから、お好みでわさびを擦ってお使い下さい。先っぽの方だと少し辛味がつよいので、お気を付けください。ただ、本わさびなので鼻を抜ける香りはかなりいいモノとなりますから、楽しんでみて下さい」
お客さんに提供が終ったら厨房に戻りますが、今日のお昼を精霊は食べていません。
「私の分もお願いします」
「いいけど、わさび出せないよ?お客さん達に全て出しちゃったから」
「え!?」
本わさびが手に入っただけでもありがたいのに、更にこっちにストックがあるわけないでしょう?と思いますが、精霊としてはそこまで気が回らなかった様子。
「うぅ、いつもそれほどわさびは使っていないので無しでいいです」
「ん。わかった」
という事で、わさびなしのただの漬け丼を精霊には出したのですが、
「雅?これでも十分美味しいのですが?」
「そりゃぁ、ちゃんと作ったから美味しいにきまっているでしょ?」
「わさびが無くても十分です」
そこまで喜んでもらえるとは思っていなかったので、こちらとしては嬉しい限りなのですが、お客さん達もソロソロおかわりの様で客席から呼ばれます。
「はーい」
お客さん達は漬け丼のおかわりをするのですが、一人だけ違う注文をしたのはがーさん。
「僕はご飯だけ少な目でお代わりを。あと漬けの醤油とおかかを」
「わかりました」
周りの皆さんは漬けはいらないの?と言う顔ですが、がーさんだけがしたり顔。
それを見て、女性陣はピンときたのか厨房に戻ろうとする僕に声を掛けて同じ注文を。
厨房からおかわりを持っていくと、女性陣はどうすればいいのかわからない様子でがーさんの方を見ています。
するとがーさんはワサビを手元に持ってきてすりすりとすりおろし。白いご飯の上にすりおろしたばかりのわさびを乗せて、おかかをたっぷりと掛けてさいごに漬けのしょうゆをかけてそれを箸で少しだけ混ぜ合わせながらパクリと。
それをまねる様に女性陣も同じことをした様子。
男性陣は漬けを二杯目なのでお茶漬けで楽しんでいるのですが、それでも視線はがーさんに。
「なぁ、がーさんそれはワサビだけだろう?そんなものが美味しいのか?」
「ああ。コレは凄く美味しい。というか、こういう良いわさびが無いと出来ない特別な一品だよ」
「まさか?わさびでツーンと来るだけだろう?」
「まぁ、好みもあるだろうから強く勧めるほどのモノじゃあないから」
そう。こればかりは好みの話なので好き嫌いがあると言われてしまえばそれ以上の話にはならないのですが、あまりにもおいしそうにがーさんが食べているのを見て流石に我慢が出来なくなった様子。
「済まないが、ご飯だけおかわりを」
「わかりました」
女性陣に続いて男性陣もおかわりを。
用意している間に女性陣も同じ食べ方をした様で、かなり鼻にツーンとくるのは体験したようですが、それでも美味しさを分かったいただけた様子。
いぶかしげる様に男性陣はまだ見ていますが、女性陣はかなり楽しめた様子。
男性陣のおかわりを持って来た時に、ちょっとだけアドバイスと言う形で、
「もし、きつすぎたら出汁を入れてお茶漬けの形に戻せばするすると入りますから」
時間が経てばわさびの辛味は飛ぶのですが、それと同じで出汁などが入っても食べやすくはなります。
この後男性陣もツーンと鼻に効くわさび丼を楽しんだようですが、うちにはもう一人の食いしん坊が。
「雅、私も皆さんと一緒のわさび丼が食べたいのですが?」
「お客さん達が終ってからね?」
「作ってくださいね」
「はいはい」
精霊の分は自分が作らないといけないようですが、自分のお昼もまだなのでちょっと今日のお昼はゆっくりしたくなるような、そんなランチを過ごしました。
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