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さくら鍋

 昨日の夜はがーさんの突然の来訪もありましたが、三人で静かな夕食だったのであの後に何もなく。

 美味しい料理を食べると無言になるのはカニでよく聞きますが、ユッケ丼でもなるとは思っていなかったので少しだけびっくり。でも、食べれば皆さんも無言になると言えるぐらいには美味しかったので、最終的に明日の昼にも出して欲しいという要望が。

 なので、本日のランチの一品に昨日と一緒のユッケが出ることに。

 作り方は簡単なのでコレはギリギリで作ることになりそうですがまあ想定内。


「さて、今日は仕込みが多いから、色々と準備をしないと」


 曜日がこちらにあるのかは聞いていないので分かりませんが、気分で言う所の月曜日。人によってはちょっとナーバスになるかもしれませんが、自分としてはそれ程の事は無く。と言うのもやりたい事をしているので、そんな暇がないというのが正直なところ。

 コレがあまりやりたくなくて、生きるために仕方なくしていたら嫌になっている可能性は多分にありますが、今のところそんな感じも無く。

 朝ごはんは昨日沢山作ったのもあってフレークですぐに済ませることも出来たので、しっかり色々と作って行きましょう。


「そういえば、今日のランチはどういうモノなのですか?」


 精霊も朝食を終えたようで、聞いてきたので少し悩みながら答えます。


「えーっとね、今日のランチはちょっとしたさくら鍋のコースみたいな感じかな」

「さくら鍋のコース?ですか?」


 メインのさくら鍋があって、刺身とユッケを出してシメの桜雑炊まで。

 一食で大満足の一品に仕上げる予定なのですが、準備は色々とあるので少しだけ大変。

 刺身とユッケはギリギリになってからでいいと思うのですが、鍋用の桜肉の解体もしなければいけませんし、ほかに一応ザクの用意もしておきたいところ。

 焦る必要はありませんが、一応お味噌汁やご飯も準備していきたいと考えてみると、鍋に必須の一品が無い事に気が付きます。


「鍋用のタレも作らなきゃ」


 いわゆるすき焼きのタレと同じようなレシピで大丈夫。

 醤油、みりん、酒、砂糖を混ぜて作ったら、一度軽く火を通して寝かせておきます。

 もちろんこれだけだと本当にすき焼きのタレになっちゃうのでさくら鍋用に少しだけ工夫というか、大事な隠し味を。今日出す予定のお肉に臭みなどは全くありませんが、臭みけしの意味も昔はあったのでしょう。隠し味になるのは味噌。この味も家ごとに違いがあり、奥深い話が更にと続きそうですがそこまで気にせず。


 タレが出来たら、ちょっと早いですがザクの準備。タマネギは一センチ程度の厚さで輪切りにしてそれを半分に。小松菜は根元をしっかりと洗って、茎と葉に分けて。豆腐は水分を飛ばして焼き豆腐にすると更に美味しいのですが、ちょっと今日は時間も無さそうなので木綿豆腐を厚めに切って、あとはお麩。これはタレが染み込んでじゅわぁっといい味になるので忘れずに。同じくタレが染み込んでおいしい白滝。これは食べやすい長さで切ります。

 こんな感じのザクを自分の分も含めて九人分。厨房はかなりあれやこれやと置いて溢れそうな状態に。


「んー、どうしようかな」

「何か問題が?」

「あー、問題という程じゃないけどちょっと量があるから置き場に困ってきてね」

「なるほど。先に準備をしてしまってはいけないのです?」

「問題ないかも。そうしようか」


 鍋ではあるのですが、鍋底が浅く鉄鍋なので場所を取っていたのですが何度か鍋料理をしている時と一緒で先に出しても問題が無いので置いて行く事に。

 いつものテーブルに配膳してみると、結構いい感じ。

 鍋が一人一つ置いてあって、後はこの底浅の鍋にタレや肉を入れるだけ。

 と、メインの肉の準備を済ませていないので次はこの辺りを。


 宝箱から出たお肉は一つの塊なのですが、色々な部位がある程度の間隔で一つの形に纏められています。赤身ばかりの部分やサシの入ったやわらかそうなところまであるのでそれを切って、お皿に並べて。用意をしたらラップをかけて冷蔵庫に保存してすぐに出せ準備をしていくだけ。

 いつもの作業ではないので九人前を作り終えると結構な時間。

 ユッケのタレを作ってから馬刺しとユッケ用のお肉を作って、昨日と一緒でタマネギを水にさらして、キュウリの千切りも忘れずに。

 そろそろお客さん達が来る時間なので最後にやるのはニンニクとショウガのすりおろし。

 何とか殆どの作業が終ると、玄関の開く音が。


「今日のお昼は何だろう?」

「二日のお休み開けだから楽しみです」

「今日はちょっと甘い香りがするかな?」

「……(無言でニコニコ)」


 がーさんを先頭に四人が先に来て、


「今日も楽しみだな」

「あら、今日はちょっといつもと違う?」


 後に二人も到着。


「お席にどうぞ。今日はさくら鍋のコースを楽しんでもらおうと思いまして」

「さくら鍋?」


 こんな感じでお昼がスタート。

 先に出すのはユッケと馬刺し。お醤油をつけてお好みでしょうがとニンニクのすりおろしをいっしょに食べてもらう馬刺しと、隣のユッケはそのままどうぞと勿論卵の黄身もしっかり乗っています。

 一口食べると、皆さん目を開いて喜んでいる感じ。

 饒舌なお客さん達もグッと静かに、食事を楽しみ始めます。


 次になべに割り下を入れて火にかけて、最初はお肉だけを楽しんでもらう予定なので溶き卵の準備。全員に卵が回ったら食べ方を伝えるとしましょう。


「隣のお肉は先程刺身で食べていただいたものと一緒で生でも食べられるお肉です。少しだけ色が変わって来るぐらいが一番おいしいと思いますので、ご自分の采配でゆっくりお楽しみください」

「このお肉の所の味噌?みたいなものは?」

「それを溶くと、さらに味が良くなるのでお肉と一緒に楽しんでみて下さい」


 僕の言葉を聞いて、皆さん軽く頷くとさくら鍋がスタート。

 お肉を割り下で色づけて、卵に落としてそのまま口へパクリ。


「おぉぉ、柔らかい!生でも十分ビックリだったのに、火が通るとこんな感じになるのか」


 一人だけ食レポをしてくれているので嬉しい所ですが、他の人達はもっと無言になって箸と鍋の往復。

 黙々とお肉がなくなっていき、お皿がすぐに空っぽになる人も。


「お肉の追加ある?」

「ええ。ただ、一度先にザクも楽しんでみて下さい」

「ザク?」

「野菜やお麩や白滝です。今の肉の旨味の出たその汁を吸ってくれるので凄くいい味なんです」


 ザクを食べてもらっている間に追加のお肉を準備しようと厨房に戻ると、


「雅、私もお肉のおかわりを」

「ザクを食べてからね?」

「ザクはもう食べたのでお肉です」


 え?と、思って見てみると言葉通りで精霊はザクを食べきっていた様子。

 食事に関しては凄い反応ですがいつもの事。

 お肉の準備を続けて、精霊とお客さんにお肉を出します。


「あー、このお肉の白い脂はべつにいいよ?」


 火の精霊付きの人がいうので、一応確認。


「馬は脂身に火を通すと甘くてトロリとしてかなり美味しい部分ですが、要らないので?」

「なに!?そうなのか?この脂身が?最初の時の分がまだ端っこに残っているが……」


 そう言いながら、卵に付けて口へパクリ。


「んんんまぃっ!!」


 その一言に周りの皆さんも脂身を口へ。

 皆さんの顔を見る感じ、大喜びの様なのでニヤリと笑ってシメの準備。


 皆さんの分のご飯をよそって、お味噌汁も器に。精霊の分を厨房で渡してから先に精霊の鍋で確認を。


「お肉のお代わりできなくなるけど、作るよ?」

「ええ、お願いします」


 お肉の旨味たっぷりの鍋の所へ今まで使っていた付ける卵をそのまま入れて足りない分でもう一つ卵を追加。火を弱めてレンゲで軽く混ぜたらシメの一品、あとご飯の完成。

 この卵をご飯の上に乗せて後はゆっくり楽しんでもらうだけ。


「最っ高です!」


 精霊が喜んでいるうちに、お客さんの方もどんどん確認してシメに入ってもらいます。

 お客さん達もどうやらおかわりのお肉もそろそろ終わりであとご飯の時間。

 とりあえず今日のランチも何とか乗り切って、いいスタートの週初めが切れたようです。







今回も読んでいただきありがとうございます

目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです

誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません

改めてありがとうございます

毎日投稿頑張ります

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― 新着の感想 ―
[一言] おお! 最後のご飯がまぶしい!
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