エビの御味噌汁
お客さんも帰って、厨房に戻るといつもは声を掛けないと出てこない精霊が。
「私の分のお昼ぅ」
今日は待てなかったようで、精霊がグルグルと僕の周りを回ります。
「どうしたのさ?」
「こんなに美味しそうな隠し玉が出て来るとは思っていなかったので、油断していました。本当に策士ですね」
策士でも何でもなく、ただ後から注文が入っただけなのですが精霊にとっては違った様子。早く、早くと急かすように凄い速さで回るので動きづらいので、
「それだと作れないんだけど?」
ピタリ、と回るのが終ります。
「待ちますので、お願いします」
一段落した空気に思わず自分のお腹の減りを実感します。
「すぐ作るね」
といっても、野菜はさっきゆでたものが残っているのでそのままお皿に。
お肉だけしゃぶしゃぶをすればいいのですぐです。
チラッと、精霊を見ると大人しく待ってくれているのでお肉も二種類。
先に豚からで牛もしゃぶしゃぶを始めると、
「牛も!?」
多分、喜んでいると思うので精霊はスルーして茹で終わったら水気を切って野菜の上に乗せて出来上がり。
お味噌汁とご飯をよそって、かき揚げは揚げればいい状態が残っていますがとりあえずお腹も減っているので刺身で食べますか。
「お待たせ。少し食べて落ち着いたら、かき揚げは揚げるよ」
「わかりました。ささ、食べましょう?いただきます」
食べ始めるとやっぱり無言になってしまいます。
牛や豚の酢味噌掛けはなかなかおいしいのでこれはアタリ。
ただ、個人的に牛はやっぱり普通にポン酢やゴマダレのしゃぶしゃぶで食べる時の味もいい気がしますが、サラダと思えばこれはこれでなかなかおいしいものです。
お刺身も種類があるので飽きることなく。ただ、少しだけ食べていくと油がきつく感じる刺身があったので、次の時は炙って油を落とした方がいいかもしれないなど無言で考えて食べていると箸の手も止まります。
「美味しいのに、どうかしましたか?」
「いや、刺身の脂身がきついかなと思って」
「十分美味しいですよ?」
精霊には十分美味しく感じて貰えているようなので問題はなさそう。
「しゃぶしゃぶはどうだった?」
「最高ですね。酢味噌がこれほど美味しいとは。出来るだけ作っておいてほしいです」
「あまり日持ちするものじゃないからねぇ。まあ簡単に作れるからその度に作ればいいよ」
ご飯と刺身にサラダ代わりのしゃぶしゃぶを食べて結構お腹は一杯。
ちらっと横を見るといつの間にか食べ終えた精霊は催促する様にこちらを窺っています。
「かき揚げ…『お願いします』」
どうするかを聞こうと思ったのですが、言い終える前に言われてしまっては仕方ありません。
いざ揚げたてを目の前にしてみると、いい感じ。
試食の時に小さいものを一つ食べましたが、出来立てを一つ齧り付くといい音、そしていい食感と旨味。
プリッとしたエビ、シャクシャクっとしたレンコン。それをサクサクの衣が纏っていて少しだけつけた塩の味が何とも言えない旨味を引き出します。
「美味しいですぅ」
精霊はコレを待っていたと言わんばかりに美味しそうに食べてくれます。
そんなこんながあって、予定よりは一時間程度遅れて今日のランチが終ります。
いつも通りに魔法の練習を。
今日は歩きたい気分なので南の扉を潜って外へ。
魔力で形を作ればその形が残るというのが分かったので、今日は土と風で。
「土の玉」
綺麗な泥団子が出来ます。
魔力をぷちっと切るとストンとそれは落ちて下で砕けます。
「風の玉」
見えないけれど、確かにここに風でできた先程の泥団子と同じ大きさの玉が分かります。
同じく魔力を切ると、ふわりと羽が落ちる様に下へ下へ。
最後に地面を少しだけ丸く削って消えました。
「なるほどねぇ」
そして、疲れも少し多くなるのは昨日と一緒。
ついでに分かった事は、魔法だけよりも形を作る方が魔力の消費が大きい事。
人気も無い所まで歩いたので、その辺りを聞いてみようと精霊に声を掛けてみます。
「ねぇ、精霊?魔力で形を作る方が魔法だけよりも魔力消費多いよね?」
「そんなことはありませんよ?もしそうだとするなら、無駄があるのかと」
「無駄か」
「形に対しての魔力消費を1とするなら、魔法に対しても1で出来るはずです」
今の自分の感覚では形が3か4で魔法が1か2。どう考えても倍近く形に魔力がとられている気がします。
「ただ、魔力消費による魔力上昇はどちらを使っても消費に含まれるので、日々の努力に対して、問題はないと回答しておきます」
一瞬よぎった不安はすぐに精霊が撤回してくれたので助かりました。
「ありがとう」
「いえいえ。さ、そろそろお夕飯を作る為にも帰りましょう?」
ありがとうと言ったそばから夕飯をせがまれましたが、残りの魔力はいつもの様にお風呂で使いたいので精霊に頷いて、帰路へ。
「今日のお夕飯、お昼のアレを使うのですよね?」
お昼のアレはエビでとった出汁。
「使うけど、大したものにはならないよ?」
「そうなのですか?」
「うん。まあ、味は悪くないと思うけど」
「うん?」
ぐるぐるとはてなマークを作るような感じで精霊が動きます。
「ま、いいや。手を洗って、待ってて」
子供をあやす様にそれだけ言って、いざ準備を。
やることはいたってシンプル。
お昼の残りのかき揚げをもう一度揚げます。お昼と違うのはここに三つ葉が一緒に入っている事ぐらい。
一緒に用意するのは出汁。
それを添えて、これでメインは出来あがり。
あとはお昼のエビの出汁。もう少し量もあればラーメンスープや他のなにかにもできるのですが、この量だと想像通りのシンプルな味噌汁に。
エビの出汁がたっぷり出ている鍋を冷蔵庫から取り出して一度温めなおしたら、お味噌を溶いて出来上がり。
具無しのエビの味がしっかり感じられるシンプルなお味噌汁です。
「出来たよー」
厨房の片隅に二人分のご飯が並んで、声を掛けると精霊が来ます。
「これは、お昼と一緒ですか?」
「いや、こんな感じで」
ご飯は丼のような器に盛っているので、その上にかき揚げを乗せて、
「出汁もかけちゃっていい?」
「是非」
たっぷりとかけてあげれば、出来上がり。
エビとレンコンのかき揚げ乗せ茶漬けとエビの旨味たっぷりのお味噌汁。
「具が無い!でもエビが!それにこのお茶漬け、スルスル入ってスルスル……あれ?もう結構減っている?」
精霊が一人芝居なのか、食べているのだから減るのは当たり前。
ただ、お味噌汁を褒められると少しだけ嬉しい気がします。
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