★ダンジョン24
目の前のアントイーターは此方を敵視したまま動かずに構えている感じ。
そんなことが何故わかると言われると、口の先の方で舌をチロチロとまるで武器を研ぐような動きをしているのです。
「後ろを向きたくなないよね」
「ですね。多分あの舌で引き付けられそうです」
「だよね」
吸着力はさっきの木刀で分かっています。
時間でもしかしたら吸着力が弱まる可能性が無いわけではありませんが、不確定な事に命を懸けるつもりもありません。
「とりあえず距離があるうちに魔法かな」
近づいて木刀で殴るのも悪くありませんが、折角距離もあるので魔法でとりあえずやりたい所。
いつもの様に頭で想像して、攻撃をするのですが先程も活躍したアースランスを想像していると、
ヒュゥン!!
凄い速さの舌が木刀ではなく自分の左肩へ当たります。それはかなりの威力で耐えるつもりはあったのですが、そのまま吹き飛ばされるほど。
かなりの痛みを伴って、斜めに吹き飛ばされたので今までは後ろが通路だったのですが、後ろは壁になってしまいます。
「ってぇ。マジか」
今までとは違うかなり強烈な痛みで、ダンジョンがゲームじゃない事を今更ながらに再認識。明らかにこいつは此方の命を狙っているのが分かる一撃でやらなければやられるという恐怖が自分にまとわりつくのが分かります。
幸いにしてこういう恐怖は今までの人生で数回だけ経験があったので、その恐怖に飲まれる事は無く、目には闘志が宿ります。
「強いなぁ。とりあえず隙を作らないとダメかな……」
ブツブツと独り言を言いながら、今やれることを頭で整理。
明らかに速さで負けているので、ココでの選択は一択でしょう。
「身体強化!」
魔力を自分に纏って、これで少しは対抗出来る筈。
すぐに次の敵からの舌の一撃が飛んできましたが、身体強化のおかげかしっかりと見えています。次の狙いは反対の右肩。体をひねる様にして右肩を後ろに下げて避けたつもりでしたが、あちらの速さも衰えているわけではなかったようで少し掠ります。
でも、ダメージとしては殆どなし。
更に敵の舌がしっかりと伸びきっているので、コレはチャンスと木刀を離して仕掛けることに。
ポケットに手を入れて目的のビンを取り出して、このまま投げつけるつもりでしたが、開かない可能性も考えてコルクを開けてから敵に向かってビンを投げつけます。
ポケットに入れておいたのは紫のビン。
どんな効果があるのかは分かりませんが、基本的に毒系だったはず。どうやらしっかりとそれがアントイーターに掛かります。
ヴルゥゥゥゥゥウ
オートバイの起動音の様なちょっと低い鳴き声で両手を使ってふき取るような動作をすると尻尾を起点に両手を広げて立ち上がります。
「で、デカい」
今までもかなりの大きさに見えていましたが、立ち上がられるとかなりの高さ。見上げないといけない程で、今までは地面につけていた両手の爪はかなり怖そうな鉤爪を見せつけてきます。
倒れ込むように爪を突き立てて引っ掻いてきたので後ろへ下がって何とか避けたのですが、後ろは壁に。次の一撃が来た場合はもう避けられそうにはありません。それに罠が何個かこの辺りにもあるので、足場もかなり悪い所。
「追い込まれたか」
もう一度と、同じように威嚇するポーズなのか立ち上がってきます。
「尻尾が来ますっ」
「分かった」
精霊の声に反応して、倒れ込んでくると思っていたのですが少し無茶をして罠を飛び越えながら横へ避けると尻尾を自在に動かせるようでこちらを捕まえるような動き。
あのまま動かなかったら尻尾に捕まっていたので危なかったでしょうが、上手い事避けることが出来て、さらに後ろが取れたので相手が一テンポ遅れて行動になりそう。
すぐに身体強化を解いて、さっき中断させられたアースランスを想像して、すぐに確定させる言葉を。
「アースランスッ!!」
範囲はアントイーターを丸々で。地面から八本の土で出来た槍が天に向かってアントイーター目掛けて出てきます。
ヴルゥゥゥゥゥウ
またも鳴き声で、やったかと思ったのですがよく見れば、しっかりと刺さったのは一本だけで他はアントイーターを貫けていません。
ヴルゥゥゥゥゥウ
二度の大きな鳴き声に怯んでいるわけにもいかず。魔力を解いてもう一発。
しっかりと刺さらないのであれば、刺さりやすい様にすればいい。
即興で作るのは失敗もありそうですが、そんな事を言っている暇はありません。
アースランスが刺さるのは分かったので、形はアレで大丈夫。ただもっと貫きやすくすればいい。頭で想像するのは貫きやすい属性で。
「ファイヤーランスッ!!」
アースランスと違ってこちらは自分の目の前から相手に向かって。アントイーターは中途半端に一本刺さったアースランスと周りの土塊で動くことが出来ずにいたのでこちらとしても好都合。出来た魔法はそのまま武器としても使える様に見えますがあの鉤爪に引っ掻かれたらひとたまりも無さそうなのでこのまま遠距離で。
「イケっ」
放つように確定してしまえば、後は魔法を見ている事しか出来ません。
ファイヤーランスはそのままアントイーターへと向かうと、その熱さを感じてかアントイーターは大きな鳴き声とジタバタと暴れます。ただ、そこまで。
暴れはじめた時は少し怖かったのですが、正面からファイヤーランスが刺さるとアントイーターの動きもどんどん鈍っていき、最終的に煙が。
「倒せましたね。おめでとうございます」
「うん、ありがとう。なんというか、滅茶苦茶強かったね」
コロンと出て来た魔石は……小。マジか!?アレだけ強かったのにレッドスライムよりも弱いって事?ちょっと信じられないと思いながらもそれを拾います。
「少し大きめの個体でしたね。という事でこの階層は今の二匹です」
「アントとアントイーターが居るって事ね」
「魔石は結構回収できそうですね?というか、いつの間に他の魔法を創造していたのです?」
「いや、あれは思い付きだよ。アースランスでいけると思ったんだけど、ダメだったからの刺さりやすい様に属性を変えての即興」
「アレで即興ですか。そう聞くと凄いですね」
「そう?とりあえず休憩もしたいから、早く次の階段探そう?」
「ですね。お腹も減りました」
いやいや、お腹が減ったというか大変な思いをしたのは僕なんだけど、精霊が何でお腹減るのかな?と、言いたい所はありますが、とりあえずの強敵を倒せて一安心。
部屋のアイテム回収も勿論忘れずに。弓は風呂敷リュックに入れる様な大きさではないので木刀に引っ掻けるような感じにして、一度落とした木刀も拾いなおして緑のビンは当たりだと嬉しいなと期待を込めてそのまま飲んでみることに。
どうやら当たりだったようで、回復薬。美味しいジュースを飲んだ感じで自分にはキラキラといつもエフェクト。少し肩の痛みも引いた感じで、先へ進むとしましょうか。
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改めてありがとうございます
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