温野菜&しゃぶしゃぶ(酢味噌掛け)
時刻は十一時を回ってそろそろいい時間。
厨房にはお皿がどんどん並びます。
「よし、あとは刺身を切って、あ、油もある程度温めておくかな」
ご飯、お味噌汁は準備が終っているので大丈夫。
刺身は切り立て、一呼吸置いてかき揚げを出せばいいでしょう。
そこで目に入ったのは、今日のエビの殻。
かき揚げの分程度なのでそこまでの量はありません。
「夕飯用に少し使うか」
エビは頭、殻、尻尾と全てひとまとめにしてあるのでそれをそのまま雪平鍋に。
火は中火より少し弱い位で軽く焼けるいい香りが。
焦げる前にまずはお酒を掛けて酒精を飛ばしてお水も加えればエビ出汁はこれで出来上がり。夕飯はコレを使って何かにしますか。
時計をみればそろそろ半。遅くても十二時ぐらいまでには来るので刺身を切って準備を開始します。
「こんにちはー。今日も来たよー」
十五分程経って刺身が丁度切り終った辺りで知り合いが来たようです。
「ほぅ、ここか」
「いい場所ですねぇ」
新しく来た二人は男性と女性。知り合いが男性で一人男性が多い感じは今までと一緒。
「こんにちは、いらっしゃい。お席にご案内しますね」
いつもの大テーブルに案内をしておしぼりとお水を。
「ランチを七つお願いね」
「畏まりました」
少しだけここからはお急ぎタイム。
丁度切り終えていたのでお刺身も準備が出来ているので、ご飯、お味噌汁をよそってウドの小鉢を冷蔵庫から出してお盆に乗せて酢味噌を掛けて。
「順番に出しますが、本日は刺身定食です」
先に出すものを伝えておきます。
「このあとかき揚げがでるので、先にどうぞ食べてお待ちください」
七人分のご飯とお味噌汁に刺身をだしたら、厨房にもどって火をかけて。
かき揚げを揚げていきます。
事前にこっちも準備をしているので、粉を振ったエビとレンコンに粉液を入れてさっくりと混ぜたら揚げるだけ。
揚がり立てをお皿に乗せて、最初は三人分、次に二人分、最後も二人分。
すべてを出し終えたら、一段落。
ある程度は覚悟していましたが、思っていた以上に七人前は大変。
「おかわりいいー?」
客席の方から声がかかったので厨房を出て客席へ。
「はーい」
ご飯のおかわりを全員分。少し時間差はありましたが皆さん一度はお代わりをしてくれます。
「これは美味いなぁ」
「うんうん。酢味噌があまりに美味しくて、刺身もこれで食べちゃったよ」
「酢味噌なら、そうだ」
食べながらも皆さん今日は喋る余裕がある様子。
そして、知り合いが僕を呼びます。
「追加を頼んでもいいかい?」
「出来る物でしたら」
「どうやら私も含めて今日は酢味噌が美味しくてね。お刺身もたべたのだが、お肉を頼めるかい?」
お肉となれば、豚か、牛か。
「分かりました。じゃあ、しゃぶしゃぶ用のお肉にかけてみるのはどうです?」
ぱっと浮かんだのはしゃぶしゃぶ。あれなら酢味噌も合うはずです。
「それは最高だね。是非」
「あ、私はできるなら少し温野菜も敷いてほしいかも」
「なんと、そんなことが?」
初めてきて、周りの人達も色々言うのにびっくりしているのか新しく来た二人もキョトンとしています。
「いや、ここは統一して温野菜の上にしゃぶしゃぶを乗せて酢味噌掛けにしてもらっては?」
知り合いが意見を纏めてくれます。
「じゃあ、温野菜のしゃぶしゃぶ乗せ酢味噌掛けでいいですかね?」
「頼みます」
頼まれた、すぐ行動。
野菜はキャベツ、もやし。キャベツは手で適当な大きさにちぎって鍋に。同じくもやしもお湯を一度しっかり通します。
お肉は結構迷いましたが、豚に。
薄いお肉ではありますが脂身が少な目のロースの部位。
野菜とは別のお湯を沸かして、ほんの少しだけ臭みを飛ばす意味合いも含めてお湯が沸いてしゃぶしゃぶをする前にお酒を入れます。
そのお湯でお肉を色づけます。
色が変わったらザルで水気を切りながら冷まします。
後は一気に完成させるだけ。
茹でた野菜の水気をぎゅっと切って、お皿に乗せたらお肉を乗せて。
酢味噌をかけて出来上がり。
「おまたせしました。しゃぶしゃぶの酢味噌掛けです」
提供する頃には皆さんのご飯、お刺身、かき揚げはしっかりと食べ終えていました。
「おお。美味しそう」
「よし、いただこう」
食べ始めるとみなさんまた無言に。もっと和気あいあいと喋っていてもらってもいいと思うのですが、食べることに集中しているとも思えるので何も言えないところ。
結局最後まで無言のままお客さん達も食べ終えたようで、
「美味かった。これはここ数日の自分が悔やまれる」
「本当ね。何を食べていたの?」
今日から来た二人にもどうやら声はかかっていたようで、他の四人と喋っています。
「いやぁ、今日も美味しかった。ご馳走様」
「刺身で何とか切り抜けようと思っていましたが、やってみるとなかなか思う通りにはいかないものですね。マスターのすごさがよくわかりましたよ」
「本当にね、あの人は凄いよね。でも君も中々。今日は素晴らしかったよ?ね?」
知り合いが他の六人に目を向けると、
「うんうん。今日も美味しかった」
「刺身もいいけど、かき揚げ?あれもサクサクでいいな」
「生の魚と思っていましたが、これほどに美味しいとは」
「…………(ひたすら無言で頭を縦にふる)」
四人が絶賛してくれて、
「くそぉ、油淋鶏?って何だ?それにサンドウィッチぃぃぃ」
「土日は、やらないのよね?」
食べられなかった事をすごく悔やんでいる人と、休日にこっそり何かを企むような一言が聞こえてきます。
「満足いただけたならよかったです」
僕がそういうと、一気に顔つきは皆さん戻って、
「「「「「「ご馳走様でした」」」」」」
嬉しい一言です。
そのままお見送りをして、やっと一段落となる予定……だったのですが……。
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