★ダンジョン9
七階に降りて最初の音は懐かしく思える、最初に倒したアイツの音。
カタカタカタカタ
階段を下りた部屋の反対側に居る様で見えないのですが、居るのが分かります。
すっと腰から木刀を一本取ったのは、重たい木の木刀。
唯一色が違うので分かりやすいのもありますが、実際持つだけでも重さが違うというのもあり見分けはつきます。
相手に見つかる前にこちらか先制攻撃。
丁度後ろを向いていたので、そのまま木刀を振り下ろすと、簡単に倒せました。
「やはり、違いますか?」
「いや、正直はわからないかな。重さのおかげで威力が出ているかもしれないけど、前も変わらずの一撃だったし」
「前にチラリと聞いたゲームだとどうやってわかるのです?」
「あー、ゲームだったら数字が出るから。それでダメージが分かるかな」
「なるほど。数値化して表現するのですか。まあ、現実的には難しそうですね」
「だね」
そんな感じで会話をしながら、腰に木刀を戻してもう一本の硬い木で作った木刀を持ってみます。
重さは最初の柔らかい木と変わりないのですが、若干こっちの方が重たい気がする程度。微妙な差が分かるかと言われると困るほど。
一応、この前の時に間違えないように柄頭の部分に軽く丸いマークをつけておいたので、実は腰から抜くときにそこを触って三本の区別をつけていたりします。
「この階はいろいろ出るみたいですね、通路の先から来そうです」
「わかった」
部屋を出て通路を通り、次の部屋に入る手前で精霊からの一言。とりあえず硬い木を手に持って、進むと通路終わりで部屋に。
部屋にはうれしくない事にモンスターが三体も。ラットが二匹にバットが一匹。
「一度下がる?」
「もしくは魔法で一網打尽ですかね?」
「んー、魔法も悪くないけど先に木刀を試してからの方がいいから、下がろうかな」
「後ろは大丈夫そうです。一応見ておきますね」
「頼むね」
一度部屋に出たのですが、そのまま通路に逆戻り。ただラットやバットもこちらを認識していたので追いかけてきます。
正面から最初に来たのはバット。
軽くで木刀を振り回しますが、そう簡単に当たってくれることも無く。
距離をどんどん詰めてくる前に、魔法を撃つことに。
「風っ」
ちょっと格好をつけて今までは右手から出していたのですが、木刀の先から出してみると、意外と出来るものでそれはちょっとした魔法剣のような感じ。
木刀を横薙ぎにしていたので、風も横薙ぎの風。バットは真っ二つに切れて煙を出しますが、まだラットが二匹迫ってきています。
バットを倒す為に一歩前に出た分、また通路から部屋に戻ってしまっていたようで、目の前からかじりつくような形で一匹と素早く移動して来ていたもう一匹が自分の右側に来てテイルアタックをしてきています。
「まずは正面からっ!」
齧りつかれるのは嫌なので、木刀を縦に振りおろし。
かじりつきは体当たり同様目の前から真っすぐ来ているので、リーチの差でこちらの方が一歩先に当ります。なので、目の前の一匹はそのまま倒せたのですが、ヨコに居たもう一匹のテイルアタックが右側から襲ってきます。
ビィーン
聞きなれない音にビックリしますが、今は驚いている場合ではありません。そのまま右を向いて、同じように木刀を縦に振り下ろしてもう一匹のラットも倒します。
「よし、とりあえず奥にトラップはありそうだけど一回安全かな?」
「ですね。それにしてもそのローブ素晴らしいですね」
「あー、さっきの音はローブだったのかな?」
「そうです。ラットのテイルアタックをそのまま弾いていましたよ」
「弾いていたんだ。楽器みたいな音でびっくりしちゃったよ」
「前回は服が切れていたので、そのローブがいい物だというのがよくわかりますね」
「そう言われてみればそうだね。貫通もしなかったし、弾いているし、やっぱり凄くいい物だったんだね」
「ですねぇ」
多少囲まれての一撃でそこまでのダメージは無いだろうという思いもありましたが、全くのゼロダメージになるというのは想定になかったので嬉しい限り。
そのままいつもの様に階層をぐるりと回って、上の階で初めて戦ったリバーシュリンプやハーミットクラブもところどころに居るのを倒して、先に進んでいたのですが、まさかのモノを見つけます。
「ねぇ、精霊あれって……」
「宝箱に見えますが、あり得ないですね」
「でも、宝箱に見えるよね?」
「見えますね」
そう、地面に宝箱がポツンと置いてあります。
すっごく怪しいのですが、あるのです。
「なにかダンジョンの話でそういうのって知らない?」
「うーん、私の調べた範囲ではないですね。ただ、モンスターからのドロップでしか宝箱は出ないので、コレはあり得ません」
「あり得ない?」
「ええ。だってここはソロダンジョンですから。先に別の人が居て倒したとしてもスライムが吸収して消化するはずです。そう考えれば、コレはやっぱりオカシイという風に思うべきだと思いますよ」
言われてみればその通り。
ビン入りのアイテムは何度か見ていますが、宝箱が落ちていることはありません。そう言う話も聞かなかったことから考えると、精霊の言う通り。
ただ、罠かと思って宝箱を見ても赤い色になっていないので罠ではないように見えます。
「とりあえず、持って帰る?」
「ですかね。あと、ギルドに報告をするべきだとも思いますね」
「だよね」
そんな感じに話をしながら近づいていくと、一瞬宝箱が動いたように見えます。
「あっ!!」
そこで思い出すのはゲームでの宝箱。
やったことがある人はアレねと分かったハズ。やったことが無い人様に説明をさせてもらうと、コレはやっぱりトラップの可能性が高いのです。
「いきなりどうしたのです?」
「いや、思い出してね、ゲームを」
「ほほぅ?」
「こいつはもしかしたらモンスターかもしれない」
「この宝箱がですか?」
「うん。だから、ちょっと木刀でけん制するよ」
腰から木刀を一本抜いて、出来る限り長く持って宝箱をツンツンと押してみます。
「んー、反応無いか」
「因みにどういうモンスターなのですか?」
「えーと、宝箱を開けようとすると襲ってくる」
「という事は、ツンツンしても意味がないのでは?」
「あー、そうかもね。でも噛みついてくるイメージでかなり痛そうなんだよね」
「それは怖いですね。あ、雅良い事を思いつきましたよ」
精霊が思い付いたのは中々面白い事。そしてそれはゲームでやったのを見たこと無い事でもあったので、早速やってみることに。
「よし、やってみよう」
精霊の言葉に従って、もう一本木刀を持って木刀二本をつかって宝箱を開けてみます。
それは行儀の悪い箸の使い方に近いような感じですが、木刀を箸の様に使う事を想定しているわけではないので仕方のない事。
宝箱は結構硬く、上下に開けようとすると頑なに閉じるので結構な根競べになってきたのですが、こっちにはまだ力を上げる技が。
「身体強化っ!!」
魔力を纏って、ぐいぃぃと力を入れると頑なに開かない貝を開けていく感じで少しずつ開いてきます。そこへすかさず三本目の木刀をねじり込むとさっきと一緒で一歩先に体も出たようで、宝箱が大口を開けてこちらへ噛みついてきます。
宝箱の形をしているだけだったようで、噛みつこうとして来る姿は人の口と一緒の形。フチの部分は両方とも鋭い刃で腕を入れたら簡単に噛み千切る様な切れ味の鋭そうな歯。宝石のような色をしていた部分は目だったようで、両方色が違う目は血走っていて得物を見る目で木刀をガブリと中に入れた三本目を噛み砕きます。
「うっはー、あっぶなかったぁ」
「かなり鋭い一撃ですね。木刀もそれほど柔らかいものではないはずですが」
「だね。一応あれは柔らかい木の奴だったけど、あそこまで簡単にボリボリとやられるとちょっと怖いね」
木刀を犠牲に一歩下がると、宝箱にまた擬態しなおしているのでこれでは簡単に倒せそうにありません。
「さて、どうしたモノか……」
「どうしましょうかねぇ」
倒し方を考えるか、放置するか。
どうしたモノでしょう。
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